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【The Dogs Story vol.4~愛すべき婆ちゃんハル】

わしゃぁ、ハルじゃぁ。
みんなは、ばあさんじゃけぇハルばぁと呼んどるのぅ。これでもわしゃ若ぇ頃は、猟師と山へへぇっては猪や鹿やウサギを追うとったけんね。今でも若ぇもんには走るんは負けんよぅ。特に逃げ足だけは、今でも誰にも負けんけんね。
 ある日、わしゃいつものように猟師のじい様と一緒に、山へ入っとった。じゃが、わしゃぁが猪の匂いを追うとるうちに、じい様とはぐれたんじゃ。じい様の姿をえっと探したけんど、見つからん。家へいぬるにもここがどこぞの山かもわからんけぇ、ずいぶん困ったんじゃ。
 何日も何日も歩いとったら腹も空いたけぇ、食べるもんをちーと探しとったらなぁ、ええ匂いのする店があったんじゃぁ。じい様がいつもくれちょった美味しい魚の匂いが、ゴミ箱からしよたんじゃぁ。まぁ今まで食べたことのなぁ旨い魚のアラ炊きじゃった。ありゃあ鯛じゃぁ!旨かったぁ。夢中で食べよったら、店の兄ちゃんが出てきよった。「コラコラおまえ、なんしょんなぁ?」って兄ちゃんが追いかけてきたけぇ、わしゃぁ自慢の早足で逃げてやったけんね。
 数日後、またあの店に行ったんじゃ。そがぁなら野良猫が「あの中に美味しいもんがあるだにゃぁ。」とわしゃに教えてくれたけぇ入ってみたら「ガシャーン!」戸が閉まったんじゃ。野良猫は「ばぁちゃん食いしん坊ね。」って笑って行ってしもうた。あの猫も、何べんも入ってしもうたらしい。しばらくして店の兄ちゃん達がやってきて、それから何やら若ぇ犬達がぎょうさんおるところへ連れてこられた。
 ここはえぇー。あったかい部屋で寝かしてくれるし、猪や鹿を追わんでも旨いもんをくれるし昼寝もし放題じゃぁ。広―い芝生の上でわしゃぁずーっと寝とる時が幸せなんじゃぁ。立ったままでも寝れるけんねぇ。最高じゃ。まぁもう少し飯をたくさんくれたらいいんじゃけど。「足らんけぇ、もっとくれぇ!」と吠えるんじゃが、ダイエットやらをせんといけんと言うんじゃ。年じゃけぇダイエットはもうよかろうと言うんじゃが、足腰のためじゃぁゆけぇ。うーん確かにもうちぃと痩せとるほうが、写真写りもええじゃろうけぇのう。わしゃ、オードリーヘプバーン似じゃけぇ、年をとうてもまだまだイケとるけんね。洋服を着たり、スカーフをマチコ巻にしたりして、オシャレするのも楽しいんじゃ。まだまだここのヒトのカメラの腕がイマイチじゃけぇ、わしゃの魅力が伝わらんけん、いつか篠山紀信さんにでも撮ってもらいたいけんね。写真集を出したり、もしかしもうたら、映画にでてくれぇって言うてきちゃるかもしれんけんね。ほんだら、わしゃぁ女優デビューじゃけん。わしゃぁの写真撮るなら今のうちじゃ。わしゃぁ動かんけぇ、素人でもええ写真が撮れるじゃろう。とっておきのサービスじゃ。早う撮りにきんさいよ~。

【ハルばぁのプロフィール】
2012年に保護されとの当時で10歳を越えているだろうということで、今なんと18歳!もともと飼われていたことは間違いなく人懐っこく、おやつが大好きなハルばぁ。1日のほとんどを寝て過ごしていますが、おやつに袋を開ける音がすると音もなく現れ最前列で座って待つという、忍者のようなビーグルです。

はる(バンダナ姿)

★あとがき
ある日突然、居酒屋の裏に現れたハルばぁ。ゴミ箱を漁って美味しい魚の残りだけを食べていった。店のお兄さんが何度か捕まえようとしたが、見た目年寄りなのに逃げ足が速いのなんの。そこで捕獲機をもっていきました。猫に教えられたかどうかはわかりませんが(笑)、あっさり入ってくれました。健康診断もどこも悪いところもなく、人に慣れておりお座りも伏せもできるので、迷い犬として飼い主を探しましたが現れず。残念ながら捨てられてしまったのかもしれません。その後、ハルばぁは長老らしく若いもんのしつけをしてくれたり(vol.2のメイなんかよく怒られていました。)何かにつけて写真のモデルを買って出てくれました。
熱中症予防の啓発メッセージには、首に濡らすと冷たくなるタオルやアルミプレートの上に寝てもらったり。老犬サポートのパンフレットには、パソコンの前で伏せてもらたり、手をキーボードに乗せると本当に打てるんじゃないだろうかという役者ぶり。
女優ハルばぁは、あちこちに登場していました。
そんなハルばぁも御年18歳(推定)。昔のように逃げ足はできなくなりましたが、それでも散歩とおやつは大好き。老犬部屋でのんびり暮らしています。歳をとってから飼い主に手放される犬も多くいます。とても残念なことです。老犬だからこその魅力をハルばぁに教えられたように思います。ハルばぁ、まだまだ長生きしんさいね~。

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