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【The Dogs Story vol.2~恋するメイ♡】

『恋するメイ♡』

 あたし、メイ。
生まれてすぐ、一人ぼっちになっちゃった。お母さんの顔もわかんない。

 ある日、ツーンと嫌な匂いがする所へ連れてこられた。冷たいステンレスの箱の中で、寒くて寒くて震えが止まらなかった。食べる物をくれたけど、食べたくないわ。 そのうち意識がボーっとしてきた日、大きな目の男の人が「もう、大丈夫だから。」って抱き上げてくれた。温かい毛布にくるまれて、超かっこいいスポーツカーに乗せられた。車が走っている間も大きな目の人は、「大丈夫だ。頑張れよ。もう少しだからな。」って声をかけてくれてたの。優しいその声と、毛布の温かさで、ウトウトと眠くなって眠っちゃった。

 車が停まって、ずいぶん遠くまで来たのねと匂いでそう思った。たくさんの顔があたしを覗き込んで、「小さーい。」「うわっ!ダニすげぇ。」「歩けるかなぁ?」と煩かった。あたしを連れてきた大きな目の人が「名前どうする? 5月だから、さつき。」女の人が「さつきはおばさんみたいだから、メイ!」あたしの名前は、メイになった。
当時、あたしは全身ダニだらけで貧血を起こし、栄養失調で後ろ足が動かなかったの。みんなは、もう歩けないと思ってた。大豆くらいの大きなダニも着いていたんですって。しばらく、具合が悪くて何度も病院に行って、検査もいっぱいした。その結果、病気の原因はヘパトゾーン。ダニが媒介する寄生虫症。でも薬もたくさん飲んで、ずいぶん良くなった。薬は嫌じゃなかったわ。薬を飲むとご褒美におやつをくれたから。ごはんも食べられるようになって、歩けるようにもなった。嬉しかった。みんなも喜んでた。

メイ保護時 (1)

外で遊べなかったあたしは、事務仕事をしているマッチョなお兄さんの机の下にいたの。あたしのタイプだったわ。机の下でおやつを食べたり、パソコンや携帯充電器の線をかじって、マットをガリガリ掘ったり、その人の靴下をかんだり。ぎゅーっと抱きしめられて「メイー!」って怒られたけど、たくさんイタズラしたわ。だってあたしのこと構って欲しいから。
あたしにとって机の下は居心地がよくて、ドッグランなんて大嫌い。ドッグランに出ると、すぐに帰りたくなっちゃう。150cmもある、柵をよじ登ってマッチョ兄さんのいる机の下に帰るの。
 マッチョ兄さんは、いろんなこと教えてくれたの。「おすわり。」「待て。」「まわれ。」右回りだけだけど…。だって今でも後ろの左足は動きにくいの。でも構ってもらえるのが嬉しいから回るわ。
 あたし、お兄さん達のことは好きになれたんだけど、犬たちがダメなの。だって犬ってデリカシーないでしょ。あたしに容赦なく近づいて、勝手にお尻をクンクン嗅いでくるの。馴れ馴れしくて失礼だわ。一緒になんて遊びたくないわ!って思っていたの。

机の下にもぐるメイ


 でもね、フク君は違った。他の犬たちのようにワンワンうるさく吠えないし、しつこくないの。クールなお顔で、通気口から外の匂いを嗅いで何か哲学的に物思いにふけっているの。彼もあまり他の犬が好きじゃなくて、そんなあたしたちは、気が合うみたい。いつも机の下にいたあたしは机から出て彼の部屋に入った。みんな驚いたわ。あたしは、彼の毛づくろいをしてあげたり、ご飯後の口の周りをなめて綺麗にしてあげるの。お世話をするのって楽しいし、くっついてると温かいし。フク君の難しいお話はわかんないけど、素敵な横顔にうっとりするの。 

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 あたし、本当は死んでしまっていたかもしれないけど、たくさんのメンズたちが助けてくれた。
今とっても幸せよ。恋するって…いいわね♡

【メイのプロフィール】
2012年生まれ。メスのMIX。
保護当時、ダニが媒介するへパトゾーン症と極度の栄養失調で後肢が動かず立つことも歩くこともできなかった。男性とおやつがとにかく好きで、甘え上手に貢がせ上手な小悪魔。

メイ・プロフィール写真

★あとがき
2012年5月に、アシュティー会長の友達の五右衛門(ビーグル)のパパさんから「愛護センターで処分されそうな子がいる。どうしたら助けられる?」と連絡がありました。その遠くのセンターまで迎えに行って、その後その子の支援をしてくれるなら預かるよ!ということに。五右衛門たちはすぐさま愛車のスポーツカーでメイ迎えにいきました。ダニだらけのメイの状態も気にすることなく助手席に乗せて、飛んで帰ってきたのです。
(※この時期本当にダニが活発です。ダニ除け予防をしっかりしましょう)
その後、何かとメイの面倒を見ているのが男性ばかりだったということもあり、メイは恋多き犬に成長。施設のアイドル的な存在でしたが、犬が嫌いで自分を犬だと思っていないようでした。私がメイの大好きな男性スタッフと話をしていると、その間に割り込んで私をそのまん丸な目でジトって見ていました(笑)メイの好きな男性はコロコロと変わり、結果かわいいタイプの男性スタッフのところへお嫁に行きました。
今でもきっと得意の上目遣いで、たくさんおねだりしているんだろうな。
<by   Junko Onishi>

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