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変化する世界に合わせた教育を

この記事は、Forbes.comに掲載されたアショカの記事"Aligning Education With A Changing World"を訳したものです。原文はこちらから↓

Aligning Education With A Changing World
変化する世界に合わせた教育を

蔓延するCOVID-19に学校が対抗しようとしているように、世界中の学生は、この1年で急速な変化に適応することを余儀なくされています。多くの変更は、授業のオンライン化など、実用的で表面的なレベルのものでした。しかし、将来を見据えた教育者、保護者、生徒たちの間では、目的や機能のレベルで学校を再定義しようという、より深い流れが存在しています。

教育の未来について、ジュネーブに拠点を置き、158か国に5,000校の認定校がある、国際バカロレア(IB: International Baccalaureate)の事務局長シヴァ・クマリ(Siva Kumari)氏と、世界最古かつ最大の社会起業家とチェンジメーカーのネットワークであるASHOKAのリーダーシップグループのメンバーであり名誉会長でもあるダイアナ・ウェルズ(Diana Wells)氏にお話を伺いました。この対談は、IBミドルイヤーズプログラムの学生イノベーターであるファイザ・ファリーン(Faiza Farheen)が司会役を務め、文章は原文をより簡潔にするため編集されています。


ファリーン:このパンデミックによって、どの学校も変化と革新が求められており、私のような何百万人もの生徒がこの状況を目の当たりにしています。しかし、IBとASHOKAは長年にわたり、教育に対して主流とは異なるアプローチをしてきました。それはなぜでしょうか?

ウェルズ:理由は簡単です。それは、私たちの教育システムが、世の中が急速に変化しているペースに追いつけず、旧態依然であるからです。ほとんどの学校は、いまだに「繰り返し」から成るこれまでの社会に合う人間を輩出するための教育内容を続けています。「(習った技を)繰り返す能力」は、産業革命の時代には有効でしたが、今日の現状には適していません。今の「どんどん変化するのが当たり前な時代」では、変化を物ともせず柔軟に対応し、臨機応変に自らが変化を生み出すことによって、自分がこういう世界であって欲しいと思う目的に向かって能力を発揮する人間を輩出する教育に切り替えなくてはならないのです。これが、ASHOKAとIBの共通の価値観の中核をなすものです。

クマリ:その通りです。それに加えて、IBのコミュニティは、生徒の持つ情熱を育む手助けをしたいと考えています。IBプログラムは、なかなかの難関だと皆さん仰っていると、いつも耳にしています。これは間違いありません!しかしです、人生のこの時期(中高校)は、少しハードルの高いことに挑戦し、そこから将来役立つ基礎的なスキルを身につける重要な時期なのです。この期間に学んだ基礎的な能力を使って、将来やりたいことを決め、より良い世界にするためには自分がどのように貢献できるかを考えることができるようになるのです。IBは、大多数の学生が(世の中に出る前に)このような準備をできるように組まれているのです。この点こそが、私たちがASHOKAとパートナーシップを組んでいる理由なのです。ASHOKAは、人の一生を俯瞰的に見て「社会を刷新する」能力の意味を説き、教育システムと若者の成長に影響を与えており、IBは教育分野の中から影響を与えています。二者はお互いを補い合う関係なのです。

ファリーン:私は数年前に最初のベンチャーを始めました。私のような若いイノヴェーターが直面する問題の一つは、自分には何かを変える準備ができているか、そしてどんな貢献ができるか、と考える時、(若くて未経験だから)余り大それたことを考えてはいけないんじゃないか、と自分自身に制限をかけてしまうことです。この思い込みを変えて、大人が若者の力を引き出し、サポートできるするにはどうすればいいのでしょうか?

クマリ:若者が成功したり貢献したりした事実を、もっと世間に知らしめる、ということが挙げられるでしょう。最近は、多くの若者が自ら踏み出しけん引役を担っているのを目の当たりにしています。しかし、ジェンダー平等、公民権、そして現在の気候変動活動など、最も効力を発揮している社会運動について調べると、すべて「自分たちの望む未来」のために立ち上がった若者たちが、始めたことがわかります。私たちは、社会のあらゆる組織が若者とどのように結びついているかを、考え直す必要があります。学校は最もキーとなる組織ですが、学校だけではありません。

ウェルズ:一つ付け加えるとすれば、大人は若者を信頼しなくてはならないということです。1980年代にアショカ・フェロー達が、初めてグローバルな集会を開催した時のことです。多くのフェロー達の共通点は、若者に責任を持たせていることでした。コミュニティのリサイクル活動やら、学校での視力検査やら、ベンチャーを起業したり、と様々でしたが、いずれも若者達に主導権をとらせていました。この若者に主導権をとらせるというやり方は、劇的なインパクトを生み、広がっていきました。「子どもに主導権を持たせる」という言葉は、人々に驚きと同時に不安を与えました。しかし、今から100年前の1910年代、モンテッソーリのメソッドを発表したイタリアの教育者であり、社会起業家でもあるマリア・モンテッソーリは、若者に自身の教育の責任を自分で持つよう促していたのです。この彼女の洞察力に元ずいた教育法は世界中に広まりました。しかし、何十年も経った今でも、私たちの教育システムの大部分は、その原則を教育方法の中心に置いていないように思えますし、親のあり方については言うまでもありません。

ファリーン:自閉症の学生と雇用者を結びつける私のプロジェクトを通してわかったことは、学校が雇用者へのパイプ役になってるということです。雇用者はどのような新しいスキルを求めているのでしょうか?

ウェルズ:私が企業のCEOで、将来を見据えたビジネスをしているとしたら、IBは会社の次のリーダーを見つけるために利用したいネットワークです。なぜか?それは、新しいことに挑戦することを恐れず、自分の信じるもののために立ち上がることを恐れない人たちを採用したいからです。おそらく失敗したことがあっても、自分自身を立ち直らせ、新たな道を見つけた人たちです。失敗の力を侮ってはいけません。また、具体的なスキルとしては、エンパシーや、効果的なチームを組織してリードする能力もあります。チェンジメーカーにとってこれらのスキルは大いに役立つのです。私が企業のCEOだったら、このような人材を採用したいですね。

クマリ:これに加えて、自分の信念を貫き、それ以上のことをする能力が必要です。タスクをこなすことを教えることもできますが、イノベーション、忍耐力、礼節を教えることは、今日の世界で必要とされるリーダーシップの資質です。そして、若者にこれらのスキルを実践する機会を与えられるかは学校にかかっています。ですから、我々はStudent Innovator Awards.(学生イノベーター賞)をスタートしたのです。学生の提案や何かを変えている若者の力を目の当たりにすると、とても希望に満ち溢れ、心強く感じます。将来的には、医者やエンジニア、弁護士だけではなく、私たちがまだ知らない職業がたくさん出てくると思います。

ファリーン:そうですね。何もないところから何かを生み出すという経験は、間違いなく決定的なものになると思います。

ウェルズ:そうですね。社会起業家のグループに話を聞いてみると、世界のどこにいても、10代の頃に何かを始めている人の割合が高いことがわかります。そして、大人の味方、家族、宗教指導者、スポーツのコーチ、コミュニティの誰かに助けられながら、変化を起こすために自分を制限しない癖を身につけているのです。人はいったん何かをゼロから創リ出す経験をしたら、あとはそれを続けていくようになるのです。

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モデレーター|ファイザ・ファリーン Faiza Farheen
バングラデシュのインターナショナルスクール・ダッカ(IB加盟校)に通う高校2年生です。自閉症を持つ若者に雇用の機会を提供するProject Independentを創設した彼女は、IB学生イノベーター賞のファイナリストとして選ばれた、32人のうちの一人です。

シヴァ・クマリ Siva Kumari
国際バカロレア(www.ibo.org)のアジア太平洋地域ディレクター兼最高執行責任者(COO)を務めた後、2014年1月に女性初の第7代事務局長に就任しました。クマリ博士はIBの前、米国ライス大学で15年間在職し、K-12イニシアチブ担当の初代アソシエイトプロボストを務めていました。

ダイアナ・ウェルズ Diana Wells
Everyone a Changemakerの世界を目指している世界最古かつ最大のソーシャル・イノベーターのネットワークであるアショカの名誉会長です。ニューヨーク大学で人類学の博士号を取得。

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