かもめ録 #1:新年

人々のすなる「えっくす」だか「ついったー」だかいふものが自分のペースに合ってないなと感じているので、今年は2週間に1回くらいのペースで日記のようなものを書いてみようと思います。毎日じゃないから日記ではないのですけど。



News

地震

今年は、1月1日に能登半島沖で最大震度7となる地震と、それに伴う津波や火災といった災害から始まりました。2日には、災害支援物資を送るための海上保安庁の輸送機とJAL機が羽田空港の滑走路上で衝突・炎上。3日には小倉の火災に、秋葉原駅における車内での刺傷事件など、心の痛む事件が相次いで発生。被害に遭われた方々、悲しみや辛さを感じている方々に、穏やかな日常が戻ることを切に願っております。

まずは人命が最優先ですが、その一方で避難所にてお子さんがゲームで気を紛らわせているというニュースが印象的でした。

「友だちと連絡取れない」多数の学校 再開見込み立たず…被災地の子どもたちの日常は(2024/01/09、テレ朝ニュース)

私も東日本大震災のときは大きな被害こそありませんでしたが、憂鬱なニュースが続いて何も手に付きませんでした。ましてや地震の不安と隣り合わせの避難所での慣れない生活ですから、精神的な負荷は大きいと思います。ゲームをする気力があるだけでも、本当に良いことです。

こうした姿を見ると、クリエイターとしては人を楽しませる娯楽を世の中に送り出すことの重要性を強く感じます。

ちょっと話は変わりますが、東日本大震災のとき、比較的安全な場所にいることができた私は、「何か役に立つことをしなければ」という思いに駆られて、新聞で得た給水所の情報などを仙台にいる大学の友人たちに必死で送っていました。

今回の地震でも、例えば「倒壊した建物の下敷きになって出られない」といった投稿を見かけた多くの方が、「役に立とう」という思いで拡散に協力されていたと思います。その思いは、あのときの私と同じだなと感じました。

しかし実際には、インプレッションを集めるためのデマも多かったようです。いわゆる「インプレゾンビ」のような収益化構造が問題視されていますが、収益化なんてなかった東日本大震災のときも「雨に有害物質が含まれてるから浴びないように!」というデマを大学の優秀な先輩が注意喚起してましたし、問題はもっと本質的なところにあると思います。災害時には「多くの人が正義感から行動するためにかえってデマを広めてしまうもの」という認識が必要でしょう。

Xに蔓延する「インプレゾンビ」という病 広告収益ビジネスの構造的欠陥(2024.01.10、KAI-YOU.net)

それゆえ、私のXアカウントでは、地震の発生を伝える信頼できる発信元のみをリポストし、その後は何もアクションしませんでした。災害時の避難方法であったり、避難所で役に立つ知恵についての投稿が拡散されたりもしていますが、私はおすすめしません。それは公的機関などが必要に応じてアナウンスしてくれるので、多くの人はそれを見ればよいと思います。ましてや素人がドヤ顔で披露するお役立ち情報は、誤りが含まれている可能性が高く、デマを広めてしまいかねません。そして素人はデマの責任を取ってくれません。普段から根拠の怪しい情報を発信しているにもかからわずフォロワー数が多いインフルエンサーもいますから、注意しましょう。

「このリポストのボタンを押すことで助かる人がいるかも」という良心は大変素晴らしいことだと思うのですが、こうした緊急時には平常心を保つことも忘れないようにしたいです。もちろんそうした投稿で助けられた方々もいらっしゃると思います。私の考えはドライすぎるのかもしれません。正解はありませんし、くよくよ悩んだところで私には答えは見つからないだろうなと思います。

何はともあれ、大きな災いを前にして場当たり的に支援なり寄付なり善いことをして、善いことをした自分に一過的に満足して忘れ去るのではなく、日々のものづくりを積み重ねて作ったもので、永い間、いつかどこかで誰かを楽しませられるようになりたいです。

締まらないので、私のつぶやきでお茶を濁しておきましょう。

スパムにも負けず
誹謗中傷にも負けず
デマにもフェイクにも負けぬ
丈夫なリテラシーをもち
承認欲求はなく
決して怒らず
いつも静かに笑っている
そういうものに
わたしはなりたい

https://twitter.com/AshizawaKamome/status/1744174615130505400

Input

不勉強なのに、この年末年始も大して本を読んでおりません。それでいて気になった本を収集する癖があるので、積読ばかりが溜まっています。切実に本棚が足りていません。ブックオフで1万円を消す手品にも抵抗がなくなってきました。小さな書店でもお金を落とすように心がけていますが、私もアラブの石油王ではないのでやりくりがむずかしいところです。作家業で頂いたお金と本を買うお金を天秤にかければ、本を買うお金の方が1000年生きた魔法使いの魂くらい重たいです。そもそも私は映画やゲームなどからも栄養を摂取していますし、高価なGPUを搭載したPCやらAPIのサブスク費用やらも体の一部のようなものですから、当たり前のように赤字です。副業作家はこんなもんなんですかね。本業でエンジニアしてるのでなんとかなってはいますが、専業クリエイターとして独立する未来は深い霧の中です。やっぱりYouTuberになるしかないんですかね。

『忘れる読書』

愚痴はさておき、昨年読んだ落合陽一氏の『忘れる読書』は、そんな私によく効きました。「読んでもどうせ忘れるんだし、自分にとって重要な本だけ精読して、あとは飛ばし読みしたり拾い読みしてよくね?」という感じの内容が、もっとマジメに書かれています。私にとって都合がいいので、全責任を落合氏に押しつけてマネをすることにしました。

『サピエンス全史』

まずは、なんかインテリっぽい人がよく読んでる本(偏見)。Not for me。悪い書評を書いても得しないので次。

『技術の哲学 古代ギリシャから現代まで』

拾い読みでしたが「技術の創造性」の話が良かったです。この辺りから、やっぱちゃんとメディア論勉強しないといけなさそうだなと思って、積読の山から本を発掘したりし始めました。その辺は追々。

『ツァラトゥストラはかく語りき』(マンガ)

「哲学とか意味あるんか」人間ですが、「分かる言葉でしゃべってくれるんなら」という気持ちで手に取りました。おそらく原作のメッセージのエッセンスを現代風に翻案したものだと思います。分かりやすいと言えば分かりやすかったです。分かるべきものが分かったのかは分かりませんが、私のような初心者には良い入り口のような気がします。

『現代思想入門』

これもインテリがよく読んでそう(偏見)。マンガ読んで調子に乗って哲学を攻めましたが、よく分からなかったです。音楽性の違いですね。「専門用語を並べて語ったように見せるのはインテリではない」みたいな話を最近どこかで見かけましたが、ここでは言及しないでおきます。まー、でも構造主義とか言われているのは多分生物学でいうDNAのことで、ポスト構造主義はエピジェネティクスやシステムバイオロジーのことかなと感じました。『偶然と必然』とか金子邦彦氏の『生命とは何か』を積んでるので、この辺を消化する方が私には合ってそうな気がします。シュレーディンガー氏の『生命とは何か』とかウィーナー氏の『サイバネティックス』は水が合ってましたし。

今回はここまで。他にも読んでますが、次回までにちゃんと本を読んでるか怪しいですし、こっそりストックを作っておきます。ドラマや映画、ゲームのレビューでお茶を濁すのもありですね。何にせよ、この記録を書くことで継続的なインプットのモチベーションになったらいいなと思います。

以下、追記。

『PERFECT DAYS』

現在上映中。ネタバレしないように書きます。東京でトイレ清掃員をするおじさん(役所広司さん)が主人公。「清掃員の悲哀」を押し付けられるのかなと思ってましたが、実際は「寡黙な役所広司の東京おしゃれトイレ散歩 ~ドラマを添えて~」の方がイメージは近いかも。田中泯さんの使い方がずるい。

本作で描かれているのは、変わらない日常と、さざ波のような変化。木々、光/影、新/旧といったモチーフが印象的。映画らしいストーリーの起伏はあまりないけれど、それはこの映画に求めるべきものではないと感じました。言葉のやり取りが少ないので一言に重みがありますし、挿入曲の歌詞も主人公の言葉のように聴こえてきます。時代に取り残された人たちのための懐古主義なところがあり、都合のいい若者たちが描かれるところは、私には響かなかったです。そういう描写が必要なほどに、この映画のターゲット層には現実の若者に対する被害者感情があるのかもなと思いました。まあでもそれは、若者向けコンテンツにおける「若者の力になってくれる年配者たちの描写」と、そんなに変わらないのかもしれません。総合的には良い映画だと思います。

『キメキャワ♥限界ビートちゃん!!』

ゲームでは、伊東ライフ先生の実況で知った『キメキャワ♥限界ビートちゃん!!』が良いなと思いました。限界社畜の女の子がフルーツのプレス作業をするリズムゲームです。無料のブラウザゲームで、1時間もあれば全ての実績を解除できます。

「ワンダーモード」という妄想状態(?)に入ると女の子がかわいい衣装になり、フルーツもかわいいモンスターに変化します。要するに現実逃避です。ブラックな単純作業の中である種のハイになって妄想に入り込むというコンセプトがいいですね。ビジュアルも印象的。

unity1weekのタグが付いてるので、たぶん1週間で制作したゲームですよね(注:コメントでご指摘いただきましたが、どうやら3週間ほどかかっているようです。お詫びして訂正いたします)。私も素人ながらゲームジャムにて2週間でゲーム制作に挑戦しましたが、短期間で形にするのは難しかったです。作者さんは大学生らしい。すごすぎる……。


Output

『子供の科学 2024年2月号』掲載

1月10日に発売された『子供の科学 2024年2月号』(誠文堂新光社様)にて、生成AIを使った小説の書き方について解説させていただいております。未来の新しい作家が生まれるきっかけになればうれしいです。Xでの宣伝ポストは多くの方に拡散していただき、『子供の科学』さんが多くの方に愛されているのだなと改めて実感しました。他の記事も好奇心が刺激されるものばかりです。ぜひ書店様にてお手にとっていただければ。

しかも知らないうちにITmedia NEWS様に記事にしていただいておりました。大変ありがたい限りです。私が何も考えずに書いたスベり気味の投稿内容まで載ってしまったのは大誤算でしたが……。ちゃんと100年後まで現役作家でいられるように頑張らないといけませんね。

「子供の科学」で生成AI特集 「星新一賞」入選作家による“AI利用小説”の書き方解説も(2024年01月10日、ITmedia NEWS)

進捗

ものづくりの進捗の方は、出せるものはあまりありません。創元SF短編賞は、AIについて規定に書かれていないのでスルーします。ハヤカワSFコンテストには何か出したいですが、まだ構想は決めていません。今はエンタメを書きたいのでどちらかといえばラノベ系の賞を目指したいと思っています。でもあれもこれも書けるほど時間はないので、完成したタイミングで出せるところに出すくらいがちょうどいいかもしれません。


次は1月28日(日)に更新予定です。


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