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働いて、悩んで、読む。【読書日記】

3月18日(Monday)

明後日の春分の日に出勤の夫が代休で家にいる。嬉しいので少し遠くまで買い物にいくことにした。
昨日から無性にスシローに行きたくて仕方がなかったので食べる。我が家はもっぱらかっぱ寿司ばかりに行くのだけど、たまに他のお寿司屋さんに行くといつもと違ってまた楽しい。えんがわが美味しかった。

そのまま買い物をして帰宅。帰ってきてから米澤穂信『追想五断章』を読み終えた。父が書いたという五つの小説。それを探していくうちに知ることになる家族の物語。現在の物語と父の小説がリンクしていく感じがワクワクして一気読みでした。



3月19日(Tuesday)

仕事でミスをしてしまった。他の人のミスがあり、だけどそれは慣れたスタッフであればすぐに気づけたミスだったのだけど、私がそのまま進めてしまい金銭的に絡むミスになった感じ。理解が曖昧な箇所だと思っていたから、いつかちゃんと確認しようと思っていたのに後回しにしてしまった後悔……しょうがないと言ってもらえたけどへこむ。



3月20日(Wednesday)

朝から雪が降っているなぁ、と思っていたけど、お昼からは風がすごくてびっくりした。風の音がすごいとなんとなく窓の外を見つめてしまう。風にしなる木々の枝をじっと見つめる。

読書は佐島ユウヤ『桜行道』を読み終えた。講談社X文庫ホワイトハート。前に読んだ『大人だって読みたい 少女小説ガイド』で紹介されていて、梨木香歩『家守綺譚』を彷彿させる的なことを書いてあったのを見てから絶対読みたいと思っていた。

自分の森に帰ることが出来なくなった天狗と桜に縁のある青年の話。この青年・城戸藤也の過去がかなり好きで、天狗の周平とふたりの間に流れる友情とも違う、だけど信頼にたるだけの絆はある空気感にあてられて、佐島ユウヤの他作品もネットで注文した。最近は書いてないそうなので残念。どこかでまた名前を見かけることができたら嬉しい。

その後は何か観たい気分になってAmazonプライムで、いつか観ようと思ってウォッチリストにだけはいれていた『次元大介』を観た。



3月21日(Thursday)

暖かくなったり寒くなったりと入れ替わりが激しい。来週からはいよいよ暖かくなりそうで春が待ち遠しい。

マッド・ヘイグ『ミッドナイト・ライブラリー』(浅倉卓弥訳)を読み終えた。生きていくことは選択の繰り返しで、そこには後悔もまた付き纏う。選ぶたびに何かを捨てていくなら、捨てた方の未来もまた無限に広がっていく。並行世界。そんな世界を生きる自分を追体験しながら、自分の生きたかった未来を探す。

研究者になっている自分、スーパースターになっている自分、妻になっている、母になっている。そんな未来の可能性は果てがなく、その上で、生きている未来なのだ。この図書館の向こう側──死の先には、そんな未来はなにひとつ有り得ない。

哲学的で、そして、生きることを後押ししようとする物語だった。

その一方で、ある日突然別世界の自分が乗り移ってしまうことが怖いと思ってしまった。なんだかここしばらくの記憶が曖昧で、まるで自分のものじゃないように感じる瞬間があるなんて怖くない? だけど心当たりがあるような気もしてしまう。もしかしたら、どこか別の世界の私が、私の人生を体験しようとしたのだろうか。

私が生きているのは、どこかの私が選んでいればよかったと後悔している人生のひとつだとして、彼女がここを気に入っていたとしたら、私は知らないうちに消滅していたということ?



3月22日(Friday)

仕事が上手くできなくてへこみまくる。昔から要領はいいほうだと思っていたんだけど、そんなことなかったかもしれない。そもそも上手くいくためにはイメージが必要で、現状それが思い描ききれていない。

目の前に出された課題に対処しようとして、だけど、その行動の先というか全体像が見えていないから勝手にあたふたとして余計な行動を取ってしまう感じ。

落ち着こう。ちゃんと落ち着いて一歩ずつ。
こうして思い返していると慌ててしまう意識が強すぎるのかもしれない。一気にすべてこなそうとするのではなくて、落ち着いてひとつひとつと向き合っていく。それでいいと、思えたらいいんだけどな。

がんばろう。



3月23日(Saturday)

夫の車検のために二台で出掛ける。朝から降っていた雪が途中で吹雪に変わり始めて視界が狭まり怖かった。雪道の運転はいつまで経っても慣れない。早く夏が来たらいい。

帰宅後、津村記久子『ワーカーズ・ダイジェスト』を読む。仕事に悩んでいるという安直な理由。日常なんて場所や内容は違えど悩みも面倒くささも、たいして代わり映えしない。だって、同じ苗字で、同じ歳で、同じ誕生日でだって、そんな繰り返しなんだから。だからきっと、私の昨日だって誰かの今日だったのだろう。

そんなことを考えながら読み終えたものの、どうにもすっきりしない。安易に自分の悩みに近い世界のものを読もうとしたけど、私がしたかったのは追体験や賛同ではなかったのかもしれない。

次に『SFマガジン 2024年4月号』を読み始めて、コレだ!と唸った。そうだ、私は遠くに行きたかった。榎田尤利『聖域』、竹田人造『ラブラブ☆ラブストーリー』、水上文の特集解説と桑原水菜のインタビューまでを読む。たのしい。



3月24日(Sunday)

一登場人物である二階堂奥歯が物語を動かすことはほとんどできない。
でも「私」には、その物語を読むこと、読みとること、読んで解釈することができる。
読むことを忘れていた。
読みとることを。紡ぎ出すことを。
世界を。この物語を。
美しさを読みとることによってはじめてこの物語は美しいものとして立ち現れる。
そのような「読み」は常に可能なわけではない。
だから、だけど。
読み手であることを忘れてはいけない。覚えておきなさい。
すぐ忘れる二階堂奥歯へ。

二階堂奥歯『八本脚の蝶』

朝から二階堂奥歯『八本脚の蝶』を読む。何かに行き詰ったとき、まるで聖書のように二階堂奥歯に頼るのはよくないと分かっているのに、どうしても開いている。いけない、いけない。

お昼に夫と一緒に昨日出掛けたときに見かけて気になったラーメン屋さんに行く。見た目がオシャレな感じだなと思っていたら、中もアンティーク調で暖炉やランプも凝っている。所々に絵本が並べられ、オルゴールの流れる店内。ラーメンがメニューではあるけれど、純喫茶という感じだった。回転もそう早くはなく、料理ができ上がるまでゆっくりと本を読んで過ごした。

読んでいたのは恩田陸『ユージニア』で、帰宅後に読了。名家の大量毒殺事件。時を経て集められた事件の断片たち。それらを追いながら少しずつ事件の真相に迫っていくのだけど、すべてが明らかになるわけでもない。ただ、そこには花があり、祈りがあり、静寂と喧騒があった。

あたしは誰よりも強く利口にならなければならない。誰よりも狡賢く邪悪にならなければならない。この世界を手に入れるには、全てを引き受ける強さが必要なのだ。

恩田陸『ユージニア』


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