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夢の話ばかりしている【読書日記】

2月5日(Monday)

朝、夫が高校野球で158-10で負ける夢を見たと言う。バスケかな。オーバーキルにも程があるなと笑う。5回の表で150点取られたらしい。

昼頃から雪が降り始める。降ってきたなぁ、と思っていたら、あっという間に辺り一面が白銀に染め上げられる。積もるのが早かったからか道路の除雪が間に合っておらず運転が怖かった。どの車もゆるゆると走っていく。

中田永一『吉祥寺の朝比奈くん』を読み終えた。乙一作品はいくつか読んでいるけど、中田永一作品は初めて。収録されているどの作品もほんの少し切なく、だけど爽やかさを感じる。読後感がとてもいい。特に好きだったのは「三角形はこわさないでおく」。高校、親友、三角関係。それらが変にこじれ過ぎることもなく、険悪さもなく、それでいて寂しく綴られながら、ちゃんと壊れないのがいい。そう、三角関係はこわさないで。



2月6日(Tuesday)

昨晩からの雪かきの筋肉痛に苦しみながら、結局職場も雪かきから始まる。どっしりと固まり重くなった雪をせっせと運んだ。これは筋肉痛がさらに倍増だと今日の夜を覚悟する。

夜、宮木あや子『花宵道中』を読み始める。
そして案の定、筋肉痛。洗った食器を片付けるのも本のページをめくるのもツラくてめそめそ。

アパートを見てみると雪かきをほとんどしない部屋も結構ある。雪かきに対するやる気の度合いが駐車場を俯瞰するとまだらによく分かって面白い。ただ、雪が降っても放っておくことは雪国出身の血が許してくれないのです。



2月7日(Wednesday)

あれだけ降った雪が随分と溶けた。路肩にはまだ多く残っているものの駐車場の大半はしっかりとアスファルトが見えている。引越し前の土地はしばらく残ることが多かったので溶けてくれてありがたい。

夜、『花宵道中』を読み終わる。あまりにつらく切ない吉原女郎たちの恋の結末に、今の気分はハッピーエンドの物語だったかもしれないと思ったもののページをめくる手が止まらなかった。大門に閉ざされた籠の中で毎夜、蜜に誘われた虫のように集まる男たちに艶やかな夢を見させて花を売りながらも、彼女たちはあまりに繋がれている。

ねえ半次郎さん、あたしの肌には花が咲くの。男に抱かれた時にだけ赤い綺麗な花が咲くの。あんたの染める絹の花とどっちがより綺麗だろうね

宮木あや子『花宵道中』

女郎たちの世界で誰かを愛することは死ぬことだ。それでも、そうと分かっていても、止まれない衝動。一番好きだったのは『十六夜時雨』の八津と三弥吉の物語。髪結いを通しての刹那の繋がり、零してしまった「好き」の言葉と「俺と逃げませんか」という心中にも近い誘い。それでも、こんなにも薄汚く蹂躙され、他人の花であり蝶となることしか出来ない世界でなければ生きられない運命。

目を瞑り愛しい男のことを思って別の男に抱かれる。生きていくのを諦めてしまえば、そう辛くはない。そうやって殺された恋がどれほどにあっただろう。

遊女ものは苦しくなると分かっているのにどうしてこうまで惹かれるのだろう。千早茜『魚神』の蓮沼の最期も切なくてしょうがなかった思い出。

「じゃあ……」
しばらく経って、私は言った。
「一緒に死のうか、蓮沼」
(中略)
「本当にそれでいいのか」
ゆっくりと蓮沼は呟いた。私は笑った。
「いいわ。一生に一回くらい選んでみたいのよ。たったひとつしか、選択肢がなくても」

千早茜『魚神』



2月8日(Thursday)

何かとても楽しい夢を見た気かするのだけど、目を覚ましたら何も思い出せなかった。私の夢の中に構築された、あるいは私が来訪したはずの世界はどこへ行ってしまったのだろう。

そう、チェスだ。木製の王様を倒すゲーム。八×八の升目の海、ボウフラが水を飲み象が水浴びをする海に、潜ってゆく冒険だ

小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』

小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』を読み始めた。チェス盤の下に潜って美しいチェスを指す男の話。鏡の国のアリスを読んだ頃からずっとチェスに対する憧れはあるのだけど、結局駒の動かし方がギリギリ分かる程度の知識しかない。チェスという広く深く静かな海。泳いでみたい。



2月9日(Friday)

ここ最近はずっと朝の6時半に自然と目が覚める。念の為に7時にアラームはセットしているのだけど聴くこともなく解除。日の出の時間が早くなるにつれて、これから私の目覚めも早くなっていくはず。
昔から朝寝坊というのがあまりできない。本当に疲れていたり寝不足が続いているとゆっくり起きることもあるけれど、そうでもなければ太陽の光に脳が反応してしまう。よく聞くお昼過ぎまで寝ていた、なんて体験を人生で一度もしたことがないのは少しだけ残念に感じる。

『猫を抱いて象と泳ぐ』を読み終えた。途中から既視感を覚え始め、昔に読んだ本だったような気がしてきた。小川作品を読むとき、こうしたことがよく起きる。夢の断片みたいに私の中に沈み込み、それが作品と手を離して埋まっている。時折それを掘り起こしは、はて?これはなんの話だったっけ?と頭を悩ませる。チェス、ポーン、バス運転手、管理人、象、ビショップ、マスター、プール、a8……こうした欠片たちがまた私という海の底に沈殿し、再び浮上するときまで眠りにつくのだろう。

今夜は夫が飲み会でいないので先に眠る。『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』を観ようとしたけど、あまり気分が乗らなかったので途中でやめてしまう。1時半に夫がインターホンを鳴らし、鍵を開けるために起きた。



2月10日(Saturday)

川上和人『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』を読み終わる。面白かった。コミカルで読みやすい文章によって、鳥類学という馴染みのないフィールドに誘い込まれる。

鳥や渡り、飛翔というものに惹かれはするものの私は鳥がとても苦手だ。道端で鳩や雀が羽ばたくと悲鳴をあげるし、動物園では鳥類の檻には極力近づかない。ただ、苦手なのは主に翼の質感と脚と爪なので水鳥は平気。ペンギンなんて大好き。

この鳥への苦手意識のはじまりは小学生の頃にクラスで飼っていたチャボが肩に乗ってきたこと。身構えていれば可愛いと思えたかもしれなかったけれど、完全な不意打ちで目の前に翼と爪が突きつけられてトラウマになった。

それでも苦手と嫌いは違うので、鳥たちは鳥たちの世界で幸せになって欲しいと思う。一億五千万の時間をかけて空を目指した進化。敵の少ないその世界は生きるための選択だったのだろう。だけどそのために多くのものを捨て、削り、軽くなった。渡りは多くの命も落とす。それでも本能に刻まれた空を生きる宿命はなんて美しいのだろうと思うのですよ。

夜、スパロボもやり飽きてきたのホグワーツレガシーを買ってみる。



2月11日(Sunday)

新しい服が欲しくて買い物に出る。お目当てのものがあり満足。次に夫の室内トレーニング用にエアロバイクを導入しようと目論んでいるので下見をしようとするもどこに行ってもない。何件か回った結果まさかの近所のホームセンターにあった。灯台もと暗し。イメージは出来たのでネットで購入する。

ホグワーツレガシーを少しずつ進めているけどとても楽しい。ハリーポッターはちゃんと読んだことがないので今さらながら読んでみようかな。

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