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遅ればせながらショパンコンクールのウィナーを聴いて


2023年3月、名古屋に2021年ショパコンの優勝者ブルース・リウを聴きに行った。
私は子どもの頃に少しピアノをやったくらいで、弾けるのはバッハのメヌエットくらい。
でもピアノは楽器の中で一番好きだ。

幼い頃の私は、近所のお姉さんのピアノをよくその家の塀の外のつるバラの隅でショパンを聴いているような子どもだった。
長じてコンサートホールで聴いたピアニストは

ブルーノ・レオナルド・ゲルバー
深澤亮子
横山幸雄
アンドラーシュ・シフ
仲道郁代
牛田智大
上原彩子
阪田智樹

日本人が多い。深澤亮子さんは父が所蔵していた「ピアノの日記」の主人公だ。日本の作曲家の作品など積極的に演奏しておられた。

今気になるピアニストはリウさん。YouTubeで見た彼の演奏。何故か心が躍るのだ。
勿論日本の反田恭平さん(2位)も素敵だし、上手い。
でも何度聴いてもリウさんのピアノは聴いていて楽しい。難解で重い曲でも、何故か軽快感がある。
名古屋で聴いて更にその躍動感が伝わりとっても楽しくなった。何でだろう?
バロックも良く、勿論ロマン派も良く、そしてアンコール最後のリストのカンパネラ。超ピアニシシモが素晴らしく、また一気にフオルテシモになるエネルギーは何なんだ?あんなに弾いた後なのに凄すぎて口が開いた。

そしてイタリアのファツィオリのピアノ。
リウさんはこのピアノを日本のツアーで持ち歩いているのかな。終了後にすぐ梱包作業に取り掛かるファツィオリの職員さん。
良いピアノで、アメリカのジュリアード音楽院では長年名器スタインウェイしか納入されていなかったけれどファツィオリが認められたということでも有名。ショパンコンクールでも2010年から選択できるようになり、リウさんもこのファツィオリで優勝している。

YouTubeで何度も見返してリウさんのピアノを聴いていると、彼の体の中のリズムが受け手に伝わってくることがわかる。そして何より彼が楽しそうであることが一番受け手を楽しませているのではないか。
独特のリズムの躍動感というと陳腐だが、私の拙い文章能力では表現のしようがない。

また聴きたいと思わせるピアノだった。
つるバラを友にして耳をそばだてて聴いた、ドキドキするようなあの幼い日を思い出すような一日だった。

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