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【45】畑遊び

貸してくれた畑は最初、

畑…どこ?

と聞きたくなるような
山の中の竹林に囲まれた、ある場所だった。

たくさんの草や葦やツタに覆われていて、まずは、そこに入れないくらい。

いや。これは文句を言っているのではなく…
ケイにとってぴったりの場所だったのだ。

開拓。
ケイは開拓したかったらしいから。

家族みんなで、草をかきわけ、運んで。

せっせと作業する自分たちが笑えた。
無人島にでも生き残った家族みたいで。

でも、ぜんぶ草を刈って、燃やして
綺麗な茶色い土が見えたとき、私たちは感動した。


中学生になったケイの生活。

平日の放課後は、毎日家でギター。

休日は畑へ。

こうして、ケイは中学1年生を過ごした。

そして、中学2年生。


この年、コロナがやってきた。


私たち家族だけじゃなく。
みんな、仕事も学校も行けなくなった世界。

でも、ケイはギターと畑を手に入れていたから退屈はしなかった。

私たち家族も、畑に救われた。
コロナ渦でも、家族しかいない畑なら行けたから。

おかげで、畑活動がすすんだ。

ケイは、相変わらず、開拓ばっかり。
穴をほったり(これは『ちゃん』のしわざな気がする)
竹で、家を作ろうとしだしたり、
おもに、バーベキューを楽しんでいた。

畑でいろんなお野菜を作っていたのは
パパとナッツとアカルンの方だった。

私?

私は火の係。
草を燃やして、焼き芋を作る人。

こんなに、自分が火を見るのが好きだなんて知らなかった。

話がそれすぎ。

この頃、『ちゃん』はケイの中にいた。

今まで(中学校1年の春くらいまで)ケイは、

「じゃ。『ちゃん』に代わるね」

って、『ちゃん』に体を貸してあげていた。

でも、ある時から…

「あ。『ちゃん』も来た。今、『ちゃん』もいるケイだからね」

と言って、『ちゃん』にも経験させてあげるけど、自分もきちんと地球に一緒にいた。

『ちゃん』がいるケイは、やっぱり、すこーし無邪気でひょうきんで。

何より、美味しそう♪ってよく食べるからすぐわかる。

あ、ほんとに『ちゃん』がいるってわかる。

ケイは、自分が『ちゃん』の好奇心で、あまりにも子供っぽいことをしないように。
畑で危ないことをしないようにって、
きちんと、主導権を持っていた。

私は、もう『ちゃん』が「ママ〜🎵」とハグしてくることはないんだ…と思うと、正直、少し寂しかったけれど。

あの頃の…

「もう、あっち(宇宙)から帰ってきたくないよ」

と言ってた頃のケイより、
今、ケイは【しっかり地球を生きよう】としているんだ。

『ちゃん』に簡単に体を貸さなくなったのはいいことなんだ。

と自分に言い聞かせた。

『ちゃん』の言っていた
【少しだけお兄ちゃんになった『ちゃん』】
になっただけだもんね。







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