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【全文和訳】韓国の尹錫悦政府の2022年国防白書発表

はじめに

●「 国防白書2022」の大まかな流れを概観できそうな記事を韓国軍事問題研究院が掲載していましたので、それを和訳しました。
これを見れば、「国防白書2022」を概観できます。尹錫悦政権の国防政策の方向性が概ね理解できると思います。
原文のURLは題名の引用部分に掲載しました。
翻訳は私がしているので誤訳があれば教えていただければ幸いです。

韓国の尹錫悦政府の2022年国防白書発表(2022-02-22)발행일

https://www.kima.re.kr/3.htmlTable=ins_kima_newsletter&mode=view&uid=1459&s=11

韓国軍事問題研究院(KIMA)(最終確認2024.1.302000)

去る2月16日、韓国の尹錫悦政権は『2022年国防白書』を発表した。これは1967年に初めて発行して以来、25番目の国防白書であり、尹錫悦政権の最初の国防白書だ。

海外の主要メディアは、尹錫悦政権が前政権とは異なり、北朝鮮の脅威の実体と厳しさ、韓米同盟のグローバルで包括的な戦略同盟への発展、力による平和維持、グローバル中枢国家宣言、韓国型インド・太平洋戦略発表、国防革新4.0の推進など、強い国防政策基調が含まれていると評価した。

今回の国防白書は、安全保障環境、国家安全保障戦略と国防戦略、全方位防衛態勢の確立と対応能力の拡充、国防革新4.0を通じた先端科学技術強軍の育成、韓米同盟の飛躍的発展と国防協力の深化と拡大など、計7章で構成された。

1章 安全保障環境

1.安全保障環境では、北朝鮮の核能力と多様な弾道ミサイルの諸元と性能、繰り返される2018年9・19軍事合意違反行為などを具体的に記述しており、韓国軍の安全保障環境の責任範囲を従来の北東アジアからインド・太平洋地域に拡大した。

特に今回の白書は、北朝鮮がプルトニウム70kg余りの高濃縮ウラン相当量を保有していると評価し、近距離型弾道ミサイル(CRBM)、高重量弾頭型短距離弾道ミサイル(SRBM)、北極星4/5型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、極超音速ミサイル(Hypersonic Missile)、新型固体燃料エンジンの火星-17型大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの新型弾道ミサイルを確保していると記述した。

2章 国家安全保障戦略と国防戦略

2.国家安全保障戦略と国防戦略では、短期的な国防政策目標として①強固な国防、②科学技術強軍を提示しながら、北朝鮮の対南戦略、持続的な核戦力の高度化などを考慮し、北朝鮮政権と北朝鮮軍を「我々の敵」と明記した。韓国政府が北朝鮮を「敵」として国防白書に記述したのは6年ぶりだ。また、中長期的な国防戦略目標を①統合的能動防衛、②革新と自強、③同盟と連帯、④安全と共存に設定した。

3章 全方位防衛態勢の確立と対応能力の拡充

3.全方位防衛態勢の確立と対応能力の拡充では、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応する①韓国型3軸体系能力の拡充、②統合防衛態勢の構築、③戦闘任務中心の教育訓練、④精神力の強化など、複合的な安全保障の脅威に備えた総体的な概念と能力を記述した。

特に5ページにわたり、北朝鮮の核・ミサイルが発射される前にこれを除去する①キルチェーン(Kill Chain)、飛んでくるミサイルを探知及び迎撃する②韓国型ミサイル防衛システム(KAMD)、北朝鮮の核・大量破壊兵器(WMD)使用に圧倒的な戦略的打撃能力で報復する③大量懲罰報復(KMPR)の『韓国型3軸体系』の分野別能力と態勢構築の方向性を詳細に記述した。

これは、2020年の国防白書で0.5ページの分量で扱われたものと比較すると、尹錫悦政権が北朝鮮に対する強硬な軍事準備態勢への意志を表明したものと評価された。

また、韓米連合演習訓練の拡大、戦争持続能力の拡充、国防部の戦争遂行体系の再確立を記述しながら、民・官・軍・警・消防統合防衛態勢の確立、科学化訓練体系の構築と学校教育体系の改善、兵士の精神力強化などの防衛態勢確立のための韓国軍の多角的な全方位防衛態勢と対応能力を記述した。

4章 韓米同盟の飛躍的発展と防衛協力の深化と拡大

4.韓米同盟の飛躍的発展と防衛協力の深化と拡大では、既存の韓米同盟を『グローバル包括戦略同盟』に発展させ、インド・太平洋地域内の国々との防衛交流協力の拡大、国際平和維持活動に関する成果と推進方向を改善することを強調した。

まず、韓米同盟ではグローバルレベルでの協力を強化するため、宇宙・サイバーなど新たな領域での協力強化、防衛政策協調の強化、韓米日安保協力の発展などを推進すると記述した。

次に、確固たる連合防衛態勢の構築と条件に基づいた戦時作戦統制権転換の体系的・安定的な推進に努め、特に①連合防衛主導のために必要な軍事的能力、②同盟の包括的な北朝鮮の核・ミサイル脅威への対応能力、③安定的な戦時作戦権転換に適合する韓半島及び地域の安全保障環境など3つの条件を具体的に記述した。

また、第54回韓米安全保障協議会(SCM)を通じて合意された拡大抑止の実行力向上の成果に言及し、昨年9月の韓米拡大抑止協議会の運営結果と第54回SCM以降の共同声明における拡大抑止関連の内容を記述した。

特に、オーダーメイド型抑止戦略(TDS)の改定方向、推進計画、拡大抑止手段運用演習(TTX)の定例化合意及び今後の推進方向、米国の戦略アセットの展開頻度と強度の増加の現況も記述した。

これとともに、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に備えた韓米日及び韓日協力の必要性を考慮し、韓国は日本と価値を共有し、日本を共同利益に合致する未来協力関係を構築すべき「近い隣国」と明記した。

また、韓日軍事情報保護協定(GSOMIA)関連の情報分野の協力増進に努めるが、歴史認識と独島などの懸案事項については原則的で、断固たる立場を維持すると記述した。

5章 国防革新4.0の推進

5.国防革新4.0の推進では、戦略司令部の創設など北朝鮮の核・ミサイル対応能力の画期的な強化、科学技術基盤の新しい先導的な作戦概念の発展、宇宙・サイバー・電磁スペクトラムを基盤とする合同全領域指揮統制体系(JADC2)の構築、人工知能(AI)基盤の核心先端戦力の確保、先端科学技術中心の軍構造及び教育訓練の革新、科学技術革新のための国防R&D戦力増強体系の再設計などを記述した。

6章 付録

6.白書の付録では、陸軍の兵力、部隊、戦力改編、部隊名称の変更などを盛り込んだ。常備兵力は36万5,000人で、36コ師団と32コ旅団であり、第2迅速対応師団、第23警備旅団と第1コ山岳旅団を創設したと記述した。

特に、部隊名称変更で陸軍は航空作戦司令部を陸軍航空司令部に、ミサイル司令部をミサイル戦略司令部に変更し、海軍は海軍航空戦隊を航空司令部に格上げし、空軍は空軍防空誘導弾司令部をミサイル防衛司令部にそれぞれ変更したと記述した。

最終的に海外主要メディアは、今回の白書が北朝鮮政権と北朝鮮軍を「敵」と明記することで、韓国軍の能力、軍事準備態勢を強化し、北朝鮮の軍事挑発時に強力な対応意志を盛り込んだと評価した。

記事のまとめ方について


原文をそのまま和訳しようと考えています。コメントがあれば最後に分けて記入したいと思います。
学生時代に論文を作成した際、公刊資料等の原文がまとまって和訳されてるものが無くて苦労した経験があったので、このような形で残していくことにしました。


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