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アンティーク着物と古裂と私 vol.6 本を出版

続きになります。

雑誌「KIMONO姫」が創刊されて以降、店やデパート催事での販売以外の仕事が生じてきました。

「KIMONO姫」だけではなく、他のアンティーク着物雑誌への着物貸し出し(誌面でモデルさんが着用したり、商品を置き撮りしたり)、店舗の紹介、店のおすすめコーディネイトを紹介などです。
「店の宣伝になる」とオーナーの方針で、頂いた依頼はほとんど受けることになっていました。

コーディネイトが得意なスタッフOさんとオーナーで、依頼主の趣旨にあったコーディネイトを作り上げ、商品をセレクト。
雑誌の編集者、ライター、スタイリストと呼ばれる職種の方々と接する機会が増えていきました。

同時に、路面店の方でも催事を行おうという話が出て、店で自分たちでDMやチラシを作り(写真を撮り、コピーを考え、印刷会社で印刷して)テーマを決めた催事を行いました。

この頃は「古裂のお客さま」「アンティーク着物のお客様」とかなり分かれていた時期だったので、どちらのお客様にも楽しんでいただけるよう、アイディアを出し合いました。

催事ごとにお客様数はさまざまでしたが、自分たちで企画し、準備、実行する手ごたえを、全員で感じていたと思います。

◇◇◇◇◇◇

「販売」では胸を張って「役に立ちました!」と言えない私ですが、この頃から自分が出来ることが見えてきました

雑誌の取材、記事掲載での文章、店催事のテーマ(キャッチコピー)と文章、……店にまつわる「文章」に関することを私が担当するようになりました。
オーナーは、自分でも骨董雑誌に連載を持っていたことがあり、文章を書くことが得意な人です。私はそう思っています。
店の文章は、すべてオーナーのチェックが入るのですが、それらを私が書かせてもらえることになりました。
オーナーに毎回必ずチェックをお願いし、修正もありましたが、誉めてももらえました(笑)

当時の編集部さんとのやりとりはFAXか、バイク便で送られてくる仮の原稿で(店にPCがありませんでした)

・「ここに〇〇字で店紹介入れてください」「商品説明、○○文字でお願いします」のように指示がある箇所に私が考えた文を入れていく

・ライターさんが書かれた文章に赤を入れさせてもらう

のどちらかでした。
素人がプロの書いた文章に赤を?!と思われるかもしれませんが、古裂や着物用語は漢字も難しく、店側のチェックは大切だと思います。

正直に白状すると、「この表現、うちの店に合わないよな」と思うものは遠慮なく赤を入れていました。ライターさんたち、その節は素人が失礼なことを……申し訳ありませんでした。
でも、古裂や着物のことを調べず、知らないまま適当に書いていると思われるものを読むと、なんだかなぁと思ったのも事実です。

路面店とデパート催事、雑誌へのレンタル業務、記事掲載とあわただしく日々が過ぎていったある日、

「本を出版しませんか?」

店が扱っている古裂、アンティーク着物の本を出してみませんか?というお話がありました。

◇◇◇◇◇◇

その出版社から出ている本を、私は一冊持っていました。
この頃はアンティーク着物ブームで、アンティーク着物界での〝人気ショップ本”や〝人気スタイリスト本”なるものがぽつぽつと出版されていました。

うちの店に声がかかったのも、この流れだったと思います。

「アンティーク着物の着こなし提案ではなく、今までにないような本をつくりたい。それがこのお店となら出来るように思います。」

有難い言葉をいただいて、私達の本づくりは始まりました。

紹介するのは、古裂とアンティーク着物、小物(駄玩具も)。
店の特色でもある「オモシロ柄」を中心にしていくことが決まりました。
オモシロ柄(面白柄)というのは、読んで字のごとく面白みのある柄行のことで、一般的には、生地として男性の羽織裏や襦袢、子ども着物の中にオモシロ柄と呼ばれるジャンルがあります。

でも、古裂やアンティーク着物の柄は、見る人によってはそれぞれがオモシロ柄であり、この本では特にジャンルにこだわらず、古裂や着物の世界の面白さを自由に味わいませんか?という流れで行くことに。
着物本というよりは、テキスタイル(生地)の方を押し出すことにしました。
一方で、着こなし提案ではないけれど、やはり着物コーディネイトも載せましょうということになりました。

章立ての提案や、細部にわたり検討し、企画にしていく。
本来の業務と並行しながらの本製作は、心身ともにくたくたになりましたが、最高に楽しい仕事でした。

カメラマンやアートディレクターが決まり、撮影日を決めて、出版社のスタジオで一日がかりで掲載品撮影をしました。

着物コーディネイト提案では、人が着ている写真もあった方がいいとなり、予算の関係で、編集者1名と店スタッフ2名が着て、それを掲載することになりました。その2名のうちのひとりが私でした。
どこで撮影するかも検討し、ロケハンに行き、撮影交渉して、当日は着付けやメイクさんを頼んで、お弁当を用意し、と何もかもみんなでやりました。

文章はライターさんが土台を書き、それに私が手を加え、オーナーのチェックを通す、という流れにしました。
フリーのライターさんで「着物はよくわからなくて」とおっしゃりながらも、店のことをしっかり理解してくれようとする彼女の書く文章が、私はとても好きでした。

今までの仕事の中で、一番たいへんで一番楽しくて印象に残っているのがこの本づくりです。

それは売れたのですか?
……もっと売れてほしかったです!
出版社さんは苦笑いをされるかと。
Amazonでのレビューはわるくなかったです(笑)

今は絶版で手に入りません。

「これ、お母さんなんだよ。」

子ども達に言っても反応は無に近く、「ふーん」です。
そんなものですね。

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次回「vol.7 新たな展開に」に続きます。
長文をお読みいただき、ありがとうございました。
もう2,3話で終わらせようと思っています。
長くなってしまい、すみません~!!

※見出し画像は以前も出したことがありますが、トランプ柄の着物(袷:あわせ、縮緬の着物)です。本の中に掲載されています。端のほうに見切れているのが本(表紙)になります。

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