初めてのFUJI ROCK FESTIVAL'23の感想と教訓
フジロックフェスティバル2023に行った。とにかく楽しかった。そして、初めてということもあって、多くのことが勉強になった。
行く前の興奮はこちらのnoteに書いたけれども、このnoteでは行った後の感想と、はじめて参加して得た学びを書いておきたいと思う。
追体験したいひとは上から順に、フジロック参戦の参考情報を得たいひとは「初めてのフジロックで学んだこと」以降の部分を読んでいただければ幸いである。
フジロックフェスティバル DAY2
関西から行くひとが少数派だというのは、駐車場に停められていた自動車のナンバーを見ればわかる。
私たちは2日目(7月29日)の朝6時半に大阪を発った。途中3回ほどの休憩を挟んで、着いたのは15:30頃。神立駐車場から約30分間シャトルバスに乗って会場に向かう。関東勢がうらやましい。
4人で向かった。CCとMMのカップルと、わたしたちである。羊文学とTESTSETが観れなかったのは名残惜しかったが、着いたらそんな気持ちは吹き飛んだ。
入場ゲートをくぐる前に、高まる興奮を抑えながらグッズを買う。SlowdiveのTシャツ2種類とELLEGARDENのTシャツ1種類、フジロック公式の手拭いを買った。
ELLEGARDEN
軽く腹ごしらえをして、19:00からは二手に分かれた。CCとMMはUAを観るべくFIELD OF HEAVENに向かい、わたしたちはELLEGARDENを観るためにGREEN STAGEに向かった。
ELLEGARDENは高校生の頃から何曲もコピーしたほど好きなバンドだ。ドラムも叩いたし、歌も歌った。わざわざ思い出さなくても歌詞が口を突いて出てくる。高校生の頃の自分にお前は10年後に本物を観ているよ、お前がコピーしている曲を本物が演奏しているのを観られるよ、と伝えたらどんな反応が返ってくるだろうか。
Space SonicやFire Cracker、SupernovaやMissing、モンスターが本当に観れるなんて。何十回何百回と聴いた曲たちだ。
もっと観ていたい気持ちを抑えながらRED MARQUEEに向かう。今回一番の目当てだったslowdiveを観るためだ。
Slowdive
Slomoから始まり、活動休止前の曲が演じられる。昨年プリマヴェーラ(スペイン)で観たときの感動が蘇ってくる。
音とは、わたしがわたしになる最初の一擲である。胎内にいる赤子は目が見えない。そもそも、「目が見える」ということの意味さえわたしたちの言う「見える」以前の状態である。そんななか、どこからか「音」がやってくる。外なのか、中なのか、そんなこともわからない。ただ、そこに響いているものがあり、それに包まれている。原初の感覚。音を聞くのではなく、音が可能になる振動として「わたし」がここにいる。その「わたし」はわたしではない。それ以前の自他未文化の「わたし」である。そのうち、音の響きの強いところ/弱いところ、近いところ/遠いところが触れられるようになり、はじめは曖昧な、そして次第に段々と再現性の高い「自我」を獲得していく。
そんな、忘却したことさえ忘却しているような遠い彼方の記憶を喚び起こされるような空間。演奏ばかりではない、いまや目の見える私たちには光も流れ込んでくる。レイチェル・ゴズウェルが曲に乗りながら揺れている。最初の揺れだと思う。シューゲイジングな他のメンバーの中心で最初の秩序を指し示す。神々しさ、最初の「母」の記憶がおぼろげに浮かび上がる。背景のスクリーンに映し出される映像も輪をかけて私たちを還らせる。
映像に収めようとか、写真に残しておこうという気持ちは起こらなかった。この経験に少しでも罅を入れるような行為はしたくなかった。
ライブの一体感ということが言われる。それはしばしばグルーヴに乗って拳を掲げたり体を揺さぶったりするときに言われる。演者と観客の揺れが同調して「ひとつ」になる経験。いわば、生まれた後、後天的に作り上げる一体感である。が、今回感じたのは、反対方向に向かう一体感、ゼロに漸近していく一体感と言えるように思う。音楽=揺れはそこにあるのだが、そこに浸ることで劈かれる凪の状態。静止していても感じることができるひとつのまとまり。
最終曲の終盤ではもうわたしたちは単純な音になっていた。ただ振動を受け止める「モノ」であり、もはや振動そのものと化していた。音が止むと私たちは「ここ」に戻ってこなくてはならない。足の疲れを思い出して、ここがRED MARQUEEというステージであることを思い出して、前後左右にひとがいたことを思い出して、わたしが着地する。横を見ると連れは号泣している。近くにいるはずのCCとMMを探して合流する。
余韻に浸ったまま、私たちはまたそれぞれのステージへ向かう。
Louis Cole
MMとわたしの連れはFoo Fightersへ、CCとわたしはCory Wongへ、という予定だったのだが、Foo Fightersの観客が多すぎて、Cory Wongのいるはずのステージまで辿り着けなかった。そこで、ホットコーヒーとサンドイッチとともに束の間の休息を取り、Louis Coleを待つことにした。
Louis Coleは各楽器を演奏する技能が高いのみならず、ライブで観客やバンドメンバーを「乗せる」点においても優れている、音楽の申し子のようなアーティストだ。ドラムだけを見てもうますぎて笑ってしまった。ダンサブルなサウンドにただ乗っかっていればよい。自然と体が動くのに任せていればよく、また、各バンドメンバーのパフォーマンスも飽きさせることがない。
途中から入場規制がかかり、椅子から立ち上がって観ないといけないほどの盛況ぶりだった。
途中からFoo Fightersを観に行っていた二人も合流し、最後まで観た。
ここからは、本当は砂原良徳やMOROHAのステージや、Nariaki Obukuro with Melodies International、菊地成孔(新音楽制作工房)を観にいく予定だったが、疲れと、翌日の行程を鑑みて引き上げることにした(明日は朝7時には駐車場を出なければならないのだ)。
駐車場へ
先に書いたが、会場ー神立駐車場間は乗車時間30分のシャトルバスに乗らねばならない。そしてこのバスの待機列が恐ろしく長かった。へとへとの状態で1時間は立ちながら並ばねばならず、これは想像はしていたものの思いの外大変なことだった。駐車場に着いたのは3時半頃だっただろうか。朝7時に駐車場を出ねばならないということもあってすぐに寝る準備をした。体は疲れているが、充実感のある疲れだ。あっという間に眠りに落ちてしまった。
初めてのフジロックで学んだこと
❶駐車場選びは真剣に
駐車場のチケットには以下の3種類がある。
今回のわたしたちのように1日しか行かないとしたら、③の場外駐車場しか選択肢が残されていないことになるが、思いの外、場外駐車場と会場間のアクセスが悪いというのが今回の教訓だった。そして、そのアクセスの悪さとは、シンプルな遠さのみならず、シャトルバスの待機列で長時間待たなければならないということも含む。可能なら3日通し券の①か②を選ぶべきだろう。徒歩圏内に駐車場があれば、休むときには戻ってこればいいし、深夜帯でも気にせず参加することができるからだ。
❷会場は思ったより細長い
これが公式より発表されている場内の地図だが、思ったより、端と端の距離が長いというのが教訓だ。混み合っている時間帯だったとはいえ、RED MARQUEE(画面やや左の赤いテント)からWHITE STAGE(画面やや右の白い四角)まで30分はかかった。それも、今回は雨に降られなかったからよいものの、降雨後の悪路だった場合はさらに時間がかかることが見込まれる。この距離感は、実際に荷物を背負いながら歩かないとわからないところでもあるが、ステージ間の移動は、思っているよりもずっと余裕を見ておいた方がいいということを学んだ。
❸夜は冷える
公式含めいろいろなサイトで言われていることだが、本当に夜は冷える。日中は帽子、日焼け止め必須の暑さでも、夜になるとさすがに寒かった。わたしも厚手のパーカーを腰に括りつけていったけれども、これがなかったら夜、大体時間帯で言ったら22時以降はかなり寒さを我慢しなければならなかっただろうと思う。
フジロックは猛暑と、雨と、夜の冷えとに対応しなければならないという点で本当に厳しいフェスだ。捉え方としては、野外フェスというより、フェス付きのキャンプくらいに思っておいた方が無難かもしれない。
❹家に帰るまでがフェスです
これは特に遠方からフジロックに向かう場合。フェスのうち、観たいアーティストの出演時間と、Googleマップで行程にかかる時間を調べて逆算すればいいかというとそんなことはない。Googleマップは渋滞なども含めてほぼ正確な時間を出してくれるけれども、それ通りに行くとは限らない。
道中、寄り道をするのは当たり前で、人間は休みを取りながらでないと、そして今回は古い自動車で行ったわけだが、人間のみならず古い機械も休みを取りながらでないと目的地に辿り着くのは難しい(わたしたちだけでなくWishもよく頑張った)。
さらに重要なのが帰りである。朝5時までクラブサウンドの上で踊り続けられるかというとそんなことは不可能である。ましてやわたしたちは5時起きだったのだから、昼寝を除いたら24時間動き続けることになっていただろう。フェスの時間だけを見るのではなくて、終わった後はどこで休んで、というのを決めておいた方がよい。
わたしたちの場合は、駐車場から約4時間のところにある健康ランドに宿を取っておいたので、その4時間だけは頑張らねばならなかったが、逆にその4時間を耐えたら後はたっぷり休めるという精神的な安心感があった(実際にそれで疲れが癒えたかはさておき……)。
自動車の運転にも注意力が要るので、無事帰れるようにスケジュールを組んでおいた方がよい。そう、フェスは行って終わりではない。家に帰るまでがフェスです。
まとめ
とにかく楽しかったのは間違いがない。大阪から新潟に行くのはそれだけでも立派な旅行であって、全員無事で帰って来れたことがうれしい。叶うなら、そして来年も観たいアーティストが出るのなら、是非とも観に行きたいと思う。
行ったみなさん、おつかれさまでした。あるいは、行かなかったみなさんも、読んでくれてありがとう。来年は是非とも一緒に行きましょう。
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