雪がない

「雪、ないね」と言っていたら、3月になってしまった。

盛岡に来て2度目の冬である。昨年は雪が少ないと聞いていたので、今年は心して冬を迎えたが、もはや雪が"ない"という感じだ。
年末年始に降り貯めた雪は、1月の終わりには解けてなくなってしまった。
ハクチョウも早々に北へ向かって飛んでいった。

雨がよく降る冬だ。
こっちの人は、雨より雪の方がマシだ、とか言っていて、首都圏で雪のせいで交通機関がズタズタになる感覚からするとわけがわからなかったが、今では少しわかる気がする。
何せ、私は傘をさすのが嫌いだ。厳密には傘が濡れるのが嫌いだ。雪の時は、傘をささなくても、外套に積もった雪を時々ぺしぺしと払いながら進めばいい。
雨より雪の方がマシだ。

車も自転車も持っていないから、雨の日も雪の日も風の日も、ひたすら歩いている。雪のない道は歩きやすい。
けれども、雪積もる道をキシキシと音を立てながらせっせと歩き、部屋の中からずんずんと降る雪を眺め、早く春にならねぇかな、と思いながら、ふるさとでは見ることのない真っ白い世界に、ほんの少しだけ心が踊る、あの感じが、恋しい、かもしれない。

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