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この世に猫がいなければ#34

寝室の布団がヨダレでびしゃびしゃになることもない

ベッドを占領され、変な姿勢で寝る羽目にならないし、

朝早くご飯の催促で起こされる事もない

おやつの催促でにゃんこら鳴かれることもないし、
納豆巻きを食卓に置き、袋のまま食べられて家が大惨事になることもない。

布団に粗相されることもなければ、
床に脱ぎ散らかしたTシャツにおしっこされることもない

黒のズボンを履くのを躊躇することもない

爪研ぎでソファをボロボロにされることもない

どの味が1番美味しいのか悩みながらペットコーナーの棚を何往復もすることもないし、

これだ!と思って買ったおもちゃが5秒でバラバラに壊される諸行無常も知らない

猫トイレの汚れを気にしながら帰路を急ぐこともない

玄関のドアや、リビングの窓を開けっぱなしにできるし、思いつきで旅行に行ける

猫砂の量が思ってたより少なく、寝室をトイレがわりにされることもない


なんて快適な暮らしだ


その代わり、

朝、私の腕の中で二度寝を誘う小悪魔にも会わないし

夜、布団に入ったら真っ先に股の間にジャストフィットする湯たんぽのあったかみも知らない

お風呂に入ると心配そうにドアの前までやってくる影も見えないし、

ソファでくつろいでいる時に、膝のうえにかかる温かみも知らない

名前を呼ぶとたまーに返事してくれる、可愛い鳴き声も知らない

夜、寝室からそっとでていく時のリズミカルな足音を聞くこともなければ、
濡れたテーブルの上についた、可愛い肉球跡を拝むこともない

日向ぼっこでお日様のにおいになった毛むくじゃらを、思いっきり嗅ぐこともない

落ち込んだ時に、心配そうに見上げる毛むくじゃらに、会えない


今、ここに毛むくじゃらが座っている。
その日常に感謝を込めて。

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