恋人ができると、心と体が相手の中に入るわけだ。そして別れる時、私達はお互いをお互いに残していく。身体の記憶は他人ですぐ上書きできてしまうけど、心の記憶は音楽、ことば、きみがくれたマスコットとかで余韻を残していく。 私は手紙を捨てられるほど強くはなかったし、私は君のことを想って泣いてしまう程もう弱くはなかった。君が教えてくれた音楽だって何も気にしないで聴ける。別れた後に友達とキスをした。これで身体の記憶は消えた。やさしかった。きみと見た海を引き出しにしまった。 生活が
あまりにも嫌いな女のコに甲高い声を聞くたび、大森靖子やCARAMEL CANDiDの歌で耳を塞ぎたくなる。メイクはせず、処女で可愛いの k の字もない彼女らは、例えば修学旅行の大広間で音楽が流れているときに踊り狂う人々を、遠くから目を細めてアゴをツンと上げて見下している。 あぁ、醜い。 私はそんなパーティーがあったら飛び込んでいきたいの。踊っていたいの。歌っていたいの。そんな彼女らの冷たくて、グレーで、つまらない空気にさらされた後は手首に少しだけ香水をかける。元カレとの
