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富士フイルムが薬を生産?

本日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の有力候補として注目されている「アビガン」について『富士フイルムが増産、出荷は4月以降に』というニュースを見ました。

富士フイルムといえば、カメラやそのフイルムという印象しかなかったのですが、薬をつくってるの?もしかして、違う「ふじふいるむ」があるの?と疑問に思い調べてみました。

富士フイルムは、コア事業だった写真フイルムの需要が激減するという市場環境の変化の中で、全社一丸となって事業構造の転換を進め、新規事業の起商に成功されたそうです。(ちなみに、医薬品のみならず化粧品など複数の成長事業分野を持っているそうです。知らなかった…。)

なぜ医薬品事業なのか?

写真フイルム事業と医薬品事業は技術の連続性があるものでした。 (技術の応用がきく)例えば、富士フイルムがカラー画像をコントロールするために開発・蓄積した20万種類にも及ぶ薬品種の化学構造は、抗がん剤や既存の薬の構造に類似していました。事実、いくつかの薬品は、テストで薬効を発現したのです。

新規事業に成功したカギ

それは、新規事業ターゲット選定において既存事業とのシナジーを生み出したことにあります。現時点で保有する技術や知識、経験を素因数分解し、一見全く違う分野に見えるけれど、根底では技術や事業に連続性があるものを分析・発見したのです。新規事業はいきなり全く関係のない分野に行かないことが重要であるものの、表面的な類似性だけを拾い集め事業展開しても視野が狭くなってしまうということだと思います。

そしてもうひとつのカギは、変化を恐れない風土です。

医療品事業参入前に、こんなことがありました。1980年代、カラーフイルムは拡大の一途にありました。そんな中、富士フイルムはカラーフイルムが成長し続けている1988年に世界発のフルデジタルカメラを発表したのです。当時、カラーフイルムは富士フイルムにとって利益の源泉でした。それにも関わらず、自らが先頭に立ってデジタル時代を見越した破壊的イノベーションの先駆者になったのです。技術のイノベーションや環境変化などによって市場はどんどん変化しています。先を見据えて潜在ニーズを見極め、現状にしがみつくことなく、自ら変化していく。そんな風土が富士フイルムにはあったのだと思います。

2020/4/3追記
「アビガン」について、約30カ国から提供要請があり、日本政府から無償で供与すべく調整を行っているそうです。アビガンは、国内に200万人分の備蓄があるそうです。一方、中国では新型コロナウイルスによる軽症の肺炎患者の治療に効果があったとの研究結果が報告されており、ドイツなど各国でアビガンを調達する動きが出ているそうです。頑張れ富士フイルム!

2020/4/18追記
「アビガン」の増産を後押しするため、大手化学メーカーのカネカが原薬の供給を始めます。カネカは富士フイルムからの要請を受け、設備投資や人員の配置転換などを行って製造体制をいち早く整え、7月から供給を開始する方針です。

*原薬とは?
 原薬とはおくすりの中に含まれる有効成分のことです。例えば痛み止めの中には、痛みを止めるための有効成分が入っています。これを原薬と呼ぶそうです。


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