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「ちぷたぷさん」_第3話

■第3話:安曇高校七不思議➀

〇晴香の家_リビング(朝)
晴香「はっ…!?」
  勢いよくベッドから起きあがる晴香。
  部屋を見渡し、隣で夏樹が寝ついていることに遅れて気づく。
晴香(M)「…家だよね?」
  ちぷたぷさんのフラッシュバック。
晴香(M)「まさか実在したなんて…」
  首に手を触れる。傷はない。
  夏樹の首にも触れる。傷はない。
晴香(M)「ということは…」
  8月8日のカレンダー。昨日と変わっていない。
晴香(M)「やっぱり…」
晴香「ナツくん、起きて」

〇晴香の家_リビング(朝)
  朝食を食べながらまったく同じニュースを見る晴香と夏樹。
夏樹「…変な感じだな」
  歯磨き粉があと一回でなくなるのも、母親から電話がかかってくる時間も同じ。
晴香(M)「昨日を繰り返してる」
晴香「ということは…」
  八時五分を過ぎた時計。
  晴香はソファで夏樹に抱き締められている。
夏樹「大丈夫だから」
  そう言う夏樹も身体が震えている。
晴香(M)「ナツくん、こわいのにわたしのために…」
晴香「…ごめんね。弱虫で」
  八時八分を指す時計。
  しかし、なにも起こらない。
夏樹「最初の一回だけってことか?」
晴香「…なのかな」
晴香(M)「わからないことがあまりに多すぎる」
晴香「ねぇナツくん」

〇安曇高校_新校舎二階廊下(昼)
  人のいない校舎を歩く晴香と夏樹。
夏樹「まさかあのハルが夏季講習をサボろうと言い出すなんてな」
晴香「夏期講習がどうこう言ってる場合じゃないでしょ」
晴香(M)「一刻も早くこのゲームを終わらせないと…」

晴香(M)「ゲームについて傍聞きしたことがいくつかある」
晴香(M)「ルールその1。ゲームは1日1時間行われる」
  空き教室に隠れてやりすごす昨夜の晴香と夏樹のフラッシュバック。
晴香(M)「昨日の感じからすると、夜の20時から21時までと考えるのが妥当だろう」

晴香(M)「ルールその2。参加者はゲームを終えるまで8月8日を繰り返す」
  日付の変わっていないカレンダー。
晴香(M)「こちらは目で見て確かめたし、真実と見て間違いない」

晴香(M)「ルールその3。ゲーム内で命を落とすと、世界から存在した記憶が抹消される」
  グラウンドで他の面々と顔を合わせた瞬間のフラッシュバック。未来だけ消えている。
晴香(M)「この情報は調べようがないな」

晴香(M)「そして、ルールその4――」

  振り返る夏樹。
夏樹「どうした?」
晴香「ううん、なにも」
晴香(M)「ナツくんも知ってるよね…」

  足を止めたままの夏樹。
晴香「ナツくん?」
  じっと一点を眺めたまま、晴香の口を抑えて教室に連れ込む。

〇安曇高校_新校舎二階空き教室(昼)
晴香(M)「え……!?」
  殺されるのではないか、と思い、顔を恐怖の色に染める晴香。
晴香(M)「そんな…嘘でしょナツくん?」
  夏樹は視線をドアの外に向けたまま。
夏樹「誰かいる」
  たったったと駆けるような足取り。
  さらに慄く晴香。
晴香(M)「嘘!? まだ昼なのに…」
  首から冷や汗を滴らせる夏樹。
  ごくりと唾を呑み込み、ドアを勢いよく開ける。

〇安曇高校_新校舎二階廊下(昼)
夏樹「かかってこい!」
信二「うわああぁぁ!?」
  腰を抜かす信二。
夏樹「…って早乙女先輩じゃないですか」
信二「驚かすなよ。…てか俺のこと知ってるの?」
夏樹「そりゃ有名人ですから」
夏樹(M)「いい方ではないけど」

美桜「あなた昨日の…」
  背後に立つ美桜を振り返る夏樹。
夏樹「会長、どうしてここに」
美桜「それは私の台詞よ。…あなたも昨日あったことが現実で起きたことか確かめにきたの?」
夏樹「はい、そんなところです」
  ハッとする夏樹。

〇安曇高校_新校舎二階空き教室(昼)
  扉を開けると、晴香が耳を押さえて震えている。
夏樹「大丈夫だハル」
  震えたままの晴香。
  ふっと笑み、晴香の頭を撫でる夏樹。
  晴香、顔をあげる。
夏樹「大丈だハル。あいつじゃない」
  晴香を見つめる美桜と信二。
  ほっと息をつく晴香。

美桜「ところで、ふたりは昨日いた子たちの連絡先をもっていたりするのかしら。もっているのなら招集してほしいのだけど」
夏樹「あぁそうですね。揃って情報整理したほうがいいですものね」
美桜「それもあるけど決めなきゃいけないと思うの」
  瞳を鋭くする美桜。
美桜「誰がこのゲームの生存者になるか」
  息を呑む晴香・夏樹・信二。

晴香(M)「ルールその4」
晴香(M)「ゲームは参加者が最後のひとりになるまで終わらない」

第3話 了



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