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「感性×論理」で算数ゲームを生み出せ!〜数の魔術師(おしごと算数#15)〜

小学生向け、アウトプット型・探究学習プログラム「なりきりラボ」「おしごと算数」(2019年度グッドデザイン賞受賞)。子どもたちの探究心や創造性を刺激する、数十の職業が詰め込まれています。マガジン「なりきりラボ・おしごと算数の世界」では、その一つひとつのタイトルの魅力をご紹介します。今回ご紹介するのは、数の魔術師(おしごと算数)です。


<プログラム開発者、いわたく&すぎちゃんに聞きました!>

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いわたく(岩田拓真):
株式会社a.school(エイスクール)代表取締役校長。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(専門分野は、脳科学とイノベーション)。大学院在学中に、ひとり親家庭に対して動機づけ教育を行うNPO法人Motivation Makerを仲間とともに創業し、理事に就任。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務した後、a.schoolを創業。探究学習の塾「a.school」を運営するとともに、様々な創造的な教育コンテンツの開発に携わる。自分自身も新しいことを学ぶのが大好き。一児の父。

すぎちゃん(杉野 亮介):
慶応義塾大学経済学部卒業。学生時代に学習指導やテニスコーチの仕事を通じて「人に何かを教えること」に没頭。一方、日頃から思考ゲームや数学パズルなどに高じる、根っからのロジカルシンカー。大人の教育を手掛ける企業に7年勤務し、子どもの教育分野へ転身し、算数・数学の魅力を伝えるべく活動中。a.schoolではラーニングデザイナーとして、「おしごと算数」の企画開発に携わるほか、2017年3月〜2019年7月は柏の葉T-site校の同名クラス講師も務めた。


ー おしごと算数シリーズもそろそろ完結か・・というところで登場しました、「数の魔術師」。これはもはや「おしごと」ではないですよね(笑)

いわたく:まぁ、そうですよね。シリーズ終盤ということで少し遊んだタイトルをつけてしまいました(笑)。真面目に答えると、要は算数を活用したアナログゲームデザイナーのことなんです。あまりにニッチな仕事だから、一般的な職業名は思いつかなくて。ある意味、ゲームは子どもたちを魅了する魔法みたいなものだよなぁ、というところから発想したタイトルです。

プログラムは前半4コマ・後半4コマにわかれて進行するんですが、前半はひたすら既存の算数ゲームを試遊しまくります!遊びながらゲームの構造を探究・分析して、その魅力や工夫されているポイントを発見します。最大13のゲームに挑戦しますが、カードゲームが半分くらい、残りはボードゲームやパズルなど。a.schoolオリジナルゲームもいくつかありますよ。

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それぞれのゲームが扱う算数領域もさまざま。数字や図形の特徴に焦点をあてたもの、計算を活用したもの、論理や発想を促すものなどなど。幅広い算数に出会えます。

すぎちゃん:既存の算数ゲームは比較的シンプルな計算や図形コンセプトを土台としているので、分数ゲームなど一部のものを除けば、小学3年生までに習う算数知識で遊べるものがほとんどです。

ー なるほど、ゲームを通して算数に親しむ、というのはいいコンセプトですね。でもこれ、「パズル算数」や「おもしろ算数」のような、おしごと算数の《番外編》でもいいんじゃないかという気がするのですが・・・?

いわたく:確かに、内容としては「パズル算数」に近いかもしれません。でも「パズル算数」がプレーヤー視点だとしたら、今回の「数の魔術師」は開発者視点。自らゲームづくりに挑戦するというアウトプットに重きを置いています。

おしごと算数シリーズには、a.schoolオリジナルの算数ゲームがそこかしこに散りばめられているんですね。「コンビニ店長」「貿易商」「都市開発士」「投資家・ギャンブラー」などなど、仕事の算数的な側面を疑似体験する方法として算数ゲームをとりいれているから、子ども達はプレーヤーになるのは慣れている。だから今回はあえて、普段「プレーする側」のゲームに、「つくる側」として挑戦してほしいんです。

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すぎちゃん:似たような話ですが、最近知育玩具がとても流行っていますよね。小学生と言わず幼児の時分から、そういうツールを使う場面が増えていますが、本来遊びは子どもが自ら考えてつくりだすものだと思うんですよ。例えば昔、おにごっこのアレンジバージョンというか、「オリジナルおにごっこ」を編み出して遊んだ、なんてことはありませんでしたか?子どもが屋外の構造物や環境をいかして遊びを開発するように、算数ゲームも自分でつくれるんだ!と知ってもらえたら。

いわたく:確かに、言われてみると僕もトランプやUNO、将棋のルールを自由にアレンジしてプレーするのに夢中だったことを思い出しました。懐かしい!

ー なるほど、だからゲーム「デザイナー」という仕事にこだわっているんですね。アウトプット・フェーズはどのように進めるのですか?

すぎちゃん:全8回の授業のうち、5回目には企画立案を、6・7回目で試作品(プロトタイプ)のつくりこみ、8回目で試遊&品評会を開催します。最終回では、プロトタイプを商品化する道筋までみせたいですね。

いわたく:子どもが発案したゲームが、もしかしたらもっと広い社会に届くかもしれないっていうワクワクを知ってほしいですよね。ちなみにa.schoolも、これまでに開発してきたオリジナル算数ゲーム3点の商品化を目指しています!

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すぎちゃん:あと、アウトプット・フェーズで重要になるのは、ゲーム構造を決める①勝敗 ②終了 ③制約 ④任意の四条件。プログラム前半で既存のゲームを徹底的に分析しつくすことで、自分だったらどんな条件設定のゲームをつくりたいか、考えを整理する助けになります。今回のプログラムが特徴的なのはこの点で、いうなればクリエイティビティ×ロジックによるアウトプットづくり。柔軟な発想に、条件をずらして思考実験するような論理性が加わることで、思いも寄らない作品が生まれるのが醍醐味ですね。

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ー つまりはいわたく・すぎちゃんが普段やっている仕事に、子どもたちも挑戦するってことですね!どうりでマニアックなプログラムが出てきたものだと納得しました(笑)。そんなお二人のオススメの算数ゲームや、ゲームの楽しみ方を教えてください。

すぎちゃん:定番ですけれど、モノポリーかな。プレイヤーがこうしなければいけない、という制約条件が少なく自由度が高いのがポイントです(ボードゲームのなかでは稀なんです)。あと、現金を扱うので計算のトレーニングにもなるところ。

いわたく:僕もモノポリーかな・・・あと、タングラム!シンプルな図形の組み合わせで創造力がどこまでも伸びるところがい。モノポリーもそうだけれど、自由度の高さがキーなのかも

すぎちゃん:ゲームの楽しみ方については、ちょっとしたところで「探る思考」を働かせることかな。運だけで進むように見えるゲームでも、実はプレイヤーには選択肢があって、一つ一つの小さな意思決定が勝敗をわけることが多いんです。

あとはこれを機に、デジタルゲームだけでなくアナログゲームにもっと親しんでほしい。デジタルゲームって画面の美しさやストーリー性がどんどん作り込まれて、進化すればするほど想像の余地が少なくなってしまうんですよね・・・。

いわたく:プログラミングができないとデジタルゲームはつくれないという、「遊ぶ」と「つくる」の距離が遠いのも難点ですね。そういう意味でも、アナログゲームはいろんな楽しみ方ができておすすめです!

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グッドデザイン賞受賞の小学生むけ・アウトプット型探究学習プログラム「なりきりラボ」「おしごと算数」は、東京は本郷・池上の直営校のほか、全国のパートナー校で受講できます!(2020年4月からは、オンライン受講も可能に!)くわしくはエイスクールのホームページをご覧ください。


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