溶けた影の先に

時は19時を過ぎた頃。

影が夜に吸収されるころ、その人の右手にて。たゆんたゆん揺れるのは、小さな小さな金魚が二匹。


「お祭りなんて、久しぶりだぁ」

「楽しかったですか?」

「うん」

「それはそれは」

 

隣を歩くオッドアイの彼は、少し呆れたように笑った。

人通りの少ない路上。後ろから遠くに聞こえてくる祭りばやし。黒のスーツ姿のその人に対して、彼は白の半袖に薄手の紺色カーディガンとジーンズ姿。非番で寛いでいた彼を無理に連れたったのは、今から丁度二時間前の事。


「いいんですか、仕事を抜け出したりして」

「俺、自分で言うのもなんだけどさ、ここ一ヶ月凄い頑張ってたと思うんだ」

「はあ」

「ご褒美ぐらいあっても、罰は当たらないと思うんだよね」

「…アルコバレーノに叱られますよ?」

「あー、それは嫌だなぁ。その時は一緒に怒られてよ骸」

「おやおや」


日が落ちて幾分か気温が下がったが、それでもどこか生温い風が二人の間をすり抜ける。日中には忙しく鳴いていた蝉の声も聞こえなくて、とても静かな夜。


「デートみたいですね」


なんて彼が言うから


「照れちゃうね」


なんて返してやると、どこか困ったように苦く笑った。


帰りにコンビニに寄ろう。

家で待つファミリー達に、アイスでも買っていこう。



とある夏の夜。

短い時間の休息でした。


※家庭教師ヒットマンREBORN二次創作
綱吉と骸

綱吉は少しだけ我儘に育って、骸は何だかんだで綱吉を大事にしてくれてたら嬉しい。

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