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指定難病「多発性硬化症」の診断が出た話

自分のための記録と、今の気持ちの整理のために。
あと同じ症状が出て病院を彷徨っている人の助けになるのなら、という想いで書きます。
これからセカンドオピニオンを聞きにいくので、また診断が変わる可能性がありますが、一旦は確定診断が出た状況。
こんな経緯で、診断が出ましたよ。という1つのケースとして。


11月15日 右側の顔の感覚異常、発症

症状が出たのは11月15日(水)。
51歳の誕生日の5日前、突然のことだった。
夜ご飯を食べようとしたら、右側の唇に麻酔をかけたみたいに感覚がない。あれ?なんだこれ、しびれというかなんというか、麻酔かけてないのに麻酔かけてる感じ。それが、最初に起こったできごと。
その後、ほっぺたや口の中の感覚、まゆのあたりもも、麻酔がかかったように鈍いことに気がついた。なんと言うのか…皮膚の上に7mmくらいのゴム製のものが乗っている感じ。手は触ってるのに顔の皮膚は触られている感じがしない。顔を洗っている時のなんともいえない違和感。化粧も…たとえば眉ペンシルにどのくらい力を入れていいのかわからない。
症状はくっきりと右側だけ。

これはなんだ、なんだ、と大急ぎで検索をかける。

「顔 麻酔 感覚が鈍い」
「顔 半分だけ 感覚が鈍い」

でも出てくるのは顔面麻痺の話ばかり。
顔面麻痺というのは、顔が動かなくなるやつのことだけど、そうじゃない。わたしは外から見たらなんの違和感もなく、以前と変わらずちゃんと動いている。あーうーと鏡の前で大きく口を動かしてみる。
うん、大丈夫。
なのに、皮膚の感覚は歯医者さんで麻酔をかけた後みたいに鈍く、それが口の中だけでなく右側半分に広がっている。

「感覚異常が顔の半分だけにある場合、医者にいきましょう」

とあるサイトのページにこう書いてあった。
…そう、だよね。
単純に自律神経がどうのってことじゃなさそうな。気のせいでもないし、脳神経を疑うべき事例だよねこれは。

11月16日 総合病院の受診

あいにく主治医としている近場の内科は、木曜日が休診日。
ただ幸いなことに、都心のこのあたり、大きな病院はいくらでもある。脳神経を専門とする町医者も多くあったけれど、その後どちらにしても大きな病院で見てもらいたいと思って、次の日16日(木)、近くにある総合病院を受診することにした。
ちなみに最近は紹介状のない初診は7700円かかるんだけど、神経のことは早い方がいいだろうと思うので、お金を支払って受診。
ただその日は内科の先生しかおらず、激混みの内科で2時間待った後、内科の先生が私を見て首を傾げ、非番?ながらたまたまいた脳神経内科の先生が呼ばれた。
それで、2人して「うーんわからないね」「わからないですよね」という会話をしていたのが聞こえた。

医者でもすぐにわからない症例なのか。
「とりあえずCTを取ってみましょう」
たぶんもう午後になっていたからMRIの予約は入れられなかったんだろう。CTをとった。結果は「異常なし」。
「脳内出血も腫瘍もなく、特段の緊急性はないように感じられるので」
と、結局1週間後の脳神経内科の先生の外来日(22日(水))に予約が入ったけれど
「でも、突然手が痺れてくるとか動かなくなるとか、なんらかの異常が出たらすぐに連絡ください」
なんて言われて、ちょっと怖い。

ちなみにその日、帰ってきてお腹が空いたのでトンカツをUberで頼んだら、食べてる間に3回も口の中を噛んでしまった。歯医者さんで良く言われる「麻酔が効いている間は食べ物を食べないように」って、あれ大事だって痛感する。
触ると鈍く麻酔をかけた感覚だけど、痛覚はちゃんとある。
口の中噛むと、普通に痛い!
試しに毛抜きでムダ毛を抜いてみたけど、それも痛かった(涙)。
口の中は数日後、右側の噛んだ後が口内炎になり、なんも食べたくなくなった…。

その後もずっと麻酔かけた感じ…「感覚鈍麻」と言うみたいだけど、全くもって改善する気配を見せない。
20日(月)私の誕生日の日。
少しの頭痛とともに頭皮の方まで広がってきたように感じて(元からだったのかもしれないけれど)、不安になったので病院に電話。
次の日21日(火)に見てもらうことになった。でもその日は翌日22日(水)の朝イチのMRIの予約を入れたのみ。
もともと予約は22日の午後に入っていたので、午前中のMRIの結果を見て午後に話をする、という流れに。

不安で受診したのに何も進展がなかったことにちょっと焦りが募り、「asaさん、歯医者は行きました?」とも聞かれたので、次の日までに歯医者にも見てもらおうと、急いでいつも通ってる歯医者に予約を入れて、夕方歯医者に。

ただ、予約を入れた時はテンパってて「歯医者でも見てもらったほうがいい」という話かと思ったのだけど、よく考えたらたぶん先生は「歯医者で変なところいじっちゃった可能性」を考えただけ、だったのだと思う。
歯医者に行くころにはそれに気づいて
「そう言われて勘違いして来ちゃったかもです」と正直に話すと、とても感じの良い先生で
「なるほど。最近僕がasaさんの歯をいじったことはないですよね。とはいえ、ここで僕が口の中を見て何か大発見をできればいいってことですね!」
なんて言いながら見てくれて、でも結局
「歯医者的にはなんの問題もありませんね」
となった。

11月22日 「多発性硬化症の可能性」指摘

次の日は朝イチからMRI。
経緯はさておき、1ヶ月前の乳がん検診もこの病院で受けていて、乳腺外科の先生の紹介で「粉瘤(アテローム)を取る」手術のため、外科の先生に会うことになっていた。この11月22日(水)は外科の先生の初めての予定が入っていた日でもあった。
もう今となっては粉瘤ごとき(!)どうでもいいんだけど、この時は右側の顔は麻酔かかった感じになっているものの原因はわからないし、あまり脳神経内科の先生も大事と思っていない様子だったし、予約は予約。
MRI→外科→内科
と病院内をハシゴすることになった。

外科では粉瘤を取る予約を、余裕を持って12月11日(月)に入れる。
そしてその前に手術のための血液検査や心電図やらが必要とかで、その日のうちに病院内を回っていろいろ検査。
んで、時間ギリでおわって内科の受付に行く。

すると脳神経内科の先生がたまたま通りかかって「あっ、asaさん!すぐ戻りますからね、後ほど。ちょっとお話がありますんで」と。
んん?なんだ?
と若干いぶかしく思いながら待っていると、すぐに名前を呼ばれた。

丁寧なMRIの写真の説明を受けた。
まず右側の顔の痺れに関しての直接的な所見はみられなかったので、原因は不明であること。
ただこのあたりに白い点があることで、多発性硬化症の疑いが出て来たこと。
多発性硬化症の診断は、何かが出たら確定診断ができるというものではなく、いろいろな可能性を排除して、「時間的多発(時期をずらして発症している)」と「空間的多発(場所が違うところで発生している)」がみられることで診断されるもの、と説明を受ける。
そのため、たくさんで申し訳ないが検査をいろいろ組みましょう。ということで
・造影剤入り脳のMRI
・骨髄液検査
・首のMRI
・胸のMRI
・腰のMRI
・眼科の検査
・耳鼻科(これは可能性潰しのため)
の予約が入った。
造影剤検査をするために血液検査ももう1回。昨日外科手術のための血液とったばかりなのに、見る項目が違うから必要とかで、もう1回。さらに髄液検査当日の血液も必要とかでもう1回。
血管が見えにくいタイプなので、高確率でやり直しになって右も左も青たんができるから血液検査が大の苦手。
結局、11月は健康診断もあったので、合計4回血液検査をしたんだよな…。
造影検査も造影剤入れるために注射をさすわけで、両腕内側に青あざができてた。
ちなみにMRIは1日1回しか保険適用にならないため、全て別日に。午前中で終わるとはいえ遠い病院だったら大変なこっちゃな。(自転車で行ける距離でよかった)
ここから怒涛の病院通い、検査づくしの日々に突入。

12月2日 顔の感覚異常、改善!?

とにかく急いで予約を入れましょう、という先生の言葉で、検査はMRIが空いているところで私がOKなところをどんどん埋めていってくれたものの、結果が出るのは12月6日。それまでに2週間はあるわけで、その間ずっと顔半分が麻酔かかってる状態。
見た目は今は変わらないけれど、こんなんじゃこの先きっと表情にも違いが出て来ちゃうと思ったし、治らない可能性が高いという先生の言葉もあって自分の心が追いつかず。
不安も募るし、この後診断を受けたらどうするのか、診断が出なかったとしても症状はあるわけで、どういう行動をしたらいいのか、悩みは尽きない。
妹が看護師さんだという人に「脳神経内科に強い大きな病院」を聞いてもらったり、セカンドオピニオンに関して気をつけなくちゃいけないことを調べてみたり、「紹介状」のもらい方とか病院のかかり方もいろいろあるわけで、考えることをやめられなかった。
ストレスが良くないとわかってても、やっぱりこんな状況はストレスになる。

一方、わたしは糖尿の持病持ち。父も妹も糖尿病で、筋金入り糖尿家系だ。
今はとある新薬のおかげで数値は落ち着いているのだけれど、その薬をもらいに2週間ごとに近くの内科(糖尿病に詳しい)に通っていて、2日はその内科の受診日だった。
「調子はどうですかー?」の言葉から
「実はですね、大変なことになっていて…」
と、糖尿の医師に状況を伝えて、ぶっちゃけどの病院がいいかとか、紹介状のもらい方とか、いろいろ教えてもらった。
紹介状を書いてもらって、その病院で診てもらってから、落ち着いて来たら今の病院に戻るとかも全然 OK、という話を聞いてひと安心。
どの病院にセカンドオピニオンをもらうかも、この時に決めた。
「でもね、今の担当医、これだけスピーディーに検査を入れてくれてるのはすごいことだよ」
との言葉を聞いて、あまり意識していなかったけど、ありがたいことだったんだなと改めて気がついた。

そして夕方ごろ、なんとなくそんな感じがしてたけどもしかしてもしかして、やっぱり!
これはきっと、たぶん、症状がちょっと軽くなっている!!
食べても噛まないのは口内炎が治ったからだけではない。皮膚の感覚も、ちょっとだけど戻っている気がする。眉毛はまだ描くと違和感があるけど2週間のうちにだいぶ慣れたし、注意して食べれば口の中を噛まないのであればそれほど困ることはない。

すごい嬉しかった。
治るんじゃないかと思った。
脳のMRIに今回の痺れの所見はみられなかったと言われていたわけだし、このまま症状がだんだんと消えていって、先日MRIに写っていた白い点は、単なる症状の出ない脳梗塞(動脈硬化?)であって、今後の食生活や適度な運動に気をつかってればいいんじゃないかって。
そう思うと、本当にそんな気持ちになって。

──「多発性硬化症かもしれない」という言葉にはもちろん驚いた。
そして自分自身も「悲しい」と言う感情は自覚した。けど、落ち込んだりはしていなかった。
決してポジティブな人間ではないけれど、追い込まれたピンチみたいなシーンには意外と強くて「なるようにしかならん」「しかたない」という気持ちの切り替えはできる方なんだと思う。
悲しいは悲しい、でも何が起きても大丈夫。
そう思っていたけれど、「違う、きっと、ううん絶対違う、治る!」みたいに思えた時、すっきりと目の前の霧が消えていくのを感じた。肩の荷が降りたって思って、明るい気持ちになった。
趣味の洋裁も実はなんとなくできなくなっていたのが(病気について調べなきゃ、って落ち着かなくて)、次の日は鼻歌混じりにコートを作っていたし、ああ、何が起きても大丈夫と思ってはいたけどそれなりにストレスだったんだなあ。
よかった、治って来た、本当によかった!ってそんな気持ちですごした。

12月6日 多発性硬化症確定診断

朝10時からの診断。この日は終わってから会社に行く予定だったので、自転車じゃなくて電車で移動。
良くなった!って思っていたし
「検査の結果、問題ありませんでした」
という言葉を聞くんだという確信があって何の不安もなく病院の受付を通過。そして内科の受付に行くと
「注射をするかもしれないので、熱と血圧を測っておいてください」
と体温計を渡された。
…え?
ええ??
注射をする可能性、とは。
何もない人に注射はしない。とすると何かがあったということだ。
ふと、病院の受付で渡された紙を見たら「ステロイド」という文字が見えた。
ああ、そういうことなのか。多発性硬化症だったんだ。
朝からちょっと眠くてぼんやりモードだったけど、だんだんと頭が冴えてくる自分を感じる。ピンチに強いんだ、昔から。
いますべきことは何か、可能性は何か。
頭の中で想定される会話と、確認すべきことをまとめる。

担当医から説明があり、「確定診断を出すか」は放射線医と内科医師の間で意見が割れたことを伝えられた。
頭と首に病変があるので、空間的多発は確定、ただし脳の造影検査での時間的多発に関しての意見が割れている。とはいえ内科医としては、時間的空間的多発の所見と見て、今回の右側の顔の感覚異常も多発性硬化症の初期の発病と考えているとのこと。
原因がわからなかったからできなかった治療だけれど、その診断を出すならば、ステロイド治療という選択ができる。
ただし症状は軽いのでステロイドを通常の半分(とはいえ500mg)を3回、通院で構わないのでやるか、あるいは症状が軽いならやらないか・・・
症状が軽減し、口の中を噛まなくなったことを伝えたら、「それならステロイドの弊害も多いからやらない方がいい」との結論。他院への紹介状の話もきちんと伝えたら
「この症状、他院の意見も聞きたいというのは非常によく理解できるし、そうすべきだと僕も思う」
と言ってもらえた。
確定診断を出すか意見が割れたことは、予防薬の投与の開始をするかしないかをいつ決めるかということ。
他の病気の可能性は見つかっていないわけなので、次の症状を待つか待たないかということでもある。
副作用がない薬ではないから悩ましいわけだけれど、もし予防薬を飲まないで次の発作が例えば「歩けなくなる」みたいな大きなものである可能性もあるわけで。
正直に、診断に悩んだ経緯を伝えてくれる先生のことを、信頼できる人だなと思った。ありがとうございます。

通常は20代や30代で発病することの多い難病「多発性硬化症」。
50や60の発症は予後が悪いと言われているようだ。それは若いうちに見つけられていれば予防薬を早期に始められて抑えられるからという側面がある。とのこと。
「脳の白い点は少ないし、おそらく初発だと思うので、予後の悪いケースには当てはまらないだろう」という見立てを先生はしてくれていたけれど、実は今年の1月ごろに「人の話が頭に全然入ってこない」みたいな時期が2週間くらいあって、もしかしたらそれは多発性硬化症の症状だったかもしれない、とも自分では考えてしまう。
30代くらいから気づかないうちに何か起きていた可能性だって否定できない、とか。
でも脳も比較的キレイだったし、もしかしたら多発性硬化症じゃない可能性もまだ残されている。
であっても、次の何かが起きなければ診断はつかないんだろう。

今の気持ち

例によって、落ち込んではいない。
でも今朝も右手がちょっと痺れただけで、もしやこれは!?と思ってしまうし、頭痛がすればそれも不安に変わってしまう。今までだったらたいして気にも留めなかったのに。味が感じにくいのは病変?それとも顔がまだ痺れているからなのかな。
疲れやすいのも昔からだから、どのくらい疲れたら休めばいいのか迷ってしまう。
一旦基準として「椅子に座っているのが辛い」時には横になる。というのを自分の基準にしようと思うけれど、意外とみんな椅子に座っているのが辛くても仕事してたりするんだろうか?(人と比べることもないけど)
少しすれば、この気持ちは落ち着いてくるだろうか。
なるようになる、のはわかっている。でも、人は本能的により良く生きたい生き物なんだな、と思った。
それは欲ではなくて、植物が太陽の光を求めるような、ごく自然に身体ににそなわっているものなんだ。

…6日の診断から「明日何が起きるかわからない」を心に抱えた。
今日と同じ明日があるなんて、幻想だったんだ!ってすごい発見。
であれば、できるだけ人の前では笑顔でいたいと思うようになった。誰かの何かを責めることを、もうしたくない。病気になった意味なんて考えようとは思わないけれど、これを活かしてできることもあるんだろうし、それをそのまま受け入れようと思う。
何が起きても、自分アップデート。
とりあえずは右の顔の感覚異常は後遺症として残りそうなので、そういう自分としてアップデート。
目が見えなくなって来てもアップデート、足が動かなくなってもアップデート。
なんとかなるでしょ、きっと。

これを書いたのは自分の記録のためと、自分の心のため。なんだかんだ言って気になって、何かする気になれないんだもの。
あとは、最初に検索した時に全然同じような症例に当たらなかったから、そういう人のために1つの例を残しておこうと思ったから。
私も最初はこんな病気だと思わなかったから、症状だけで検索してこのnoteを見つけた人には、少し不安を与えてしまうかもしれないけれど、1つのケースとして、事実として残しておく。
日本では17000人程度しかいない多発性硬化症は、専門医がいないとなかなか診断がつかなくて、いろいろな病院を転々とする人が多いみたい。
私みたいに最初の病院で診断がつくのはとてもラッキーなことだったようだから、同じような症状が出た人は最初から大きな病院に行ってみて欲しい。治療ができないから早く予防薬を飲むことがとにかく大切みたいだから(私まだ飲んでないけど!)。

とりあえず、今週には紹介状をいただいて、別の大学病院の予約を取らなくちゃ。
と、その前に、明日は粉瘤の手術〜〜〜!
ほんと今となっては粉瘤なんてどうでもいいけど、高額医療控除の対象ギリギリだから、今年中にやっておこうと思う(笑)

もしサポートいただけたら、いつもより高級な食材を買います。そしてお礼の気持ちを込めてその食材で「ダイエット食記録」を綴ります!