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妖怪に学ぶ防災教育

こんにちは!朝プロ新入生のらんです。
今、空前のアマビエブームが来ていますね。疫病退散の妖怪として知られるアマビエですが、その顔はなんとも面妖。なんとなく可愛いような、恐ろしいような…妖怪ってとっても不思議な生き物ですよね。今回は、そんな魅力的な妖怪がテーマです。

さて、私が所属しているISHINOMAKIの朝日プロジェクトは、防災教育サークルです。防災教育と言えば……なんでしょうか?
そうですね、妖怪です!( 防災教育=妖怪? )

先祖代代、受け継がれてきた妖怪伝承には、先人たちの知恵がぎっしり詰まっているんです。今回は、それらの伝承から、これからの防災に役立つ知恵を学ぼうと思います。


①『ヤロカ水』

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出没地域:木曽川周辺(美濃国、尾張国)
 [伝承内容]
大雨が降り続き、木曽川の水かさが増していた時、川の上流から「やろか!やろか」という恐ろしい声が聞こえ、それを聞いたものが「よこさばよこせ」と返事をした。すると、大量の水が押し寄せ、町が沈んでしまった[1]。

この妖怪が伝えることはなんでしょうか。私はすなわち、川の音に気をつけろ、ということだと思います。川の傍にいて、「やろか!やろか」ではなくとも、上流の方から何か不信な物音がする際には、川が氾濫するサインである、という事だと思います。ヤロカ水伝承を知っていれば、川に入る際、上流の方へ耳をすます事ができますね。

②『大蛇』

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出没地域:日本全国
 [伝承内容]
様々。
 *例(山口県 岩口市 寂仙坊):
寂地山には一匹の大蛇が棲んでいて、里の人びとは山の主と呼んで恐れていた。というのは、ひとた び大蛇が怒って暴れると、七つの山、七つの谷が揺れ動き、その吐く息は、山麓の農作物をも、みる みるうちに枯らしてしまうという、毒気の強いものであったからである。里の人びとが寂地山に踏み 入らなかったのも、実はこの大蛇の機嫌を損じないよう、里の平安を願ったからである[2]。

上記の例のような大蛇の伝承からは、農作物被害や、土砂移動の記述が見受けられますね。これらの記述からは、土砂災害が連想させられるように、伝承の主なる目的も山にまつわる災害への警告であると思われます。
実際に、ヘビを含む地名は、災害地名と言われ、土砂災害に関係がある場合があり[3] 、同様に、木曽地方では、古くから「蛇抜け」という言葉が土砂災害を指して使われています。
これらのことから、大蛇伝承は、山災害への畏怖と警戒を人々に伝えるだけでなく、その土地の特性を、伝承による地名を通して、よその土地の人々に伝える役割も担っていたと言えます。

③『人魚』

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出没地域:沖縄県 石垣島
 [伝承内容]
昔、石垣島の北に野村村があった。ある日村の若者たちが漁をしていたところ、人魚が網にかかった。若者たちは喜んだが、人魚が懇願したので、憐れんで逃がしてやった。すると人魚は喜び、若者たちへ、「あした大津波が来るから、山の方へ逃げるように。」と伝えた。若者たちは村に帰りこれを伝え、村の人々は津波の難を逃れることが出来た[4]。

この人魚伝承は物語としての完成度が高く、教訓を伝えるのに効果的であると感じます。人魚というインパクトのある妖怪が、津波と山への非難を、印象的に結びつけています。理屈ではなく、妖怪が災害と避難の架け橋となっている点が、この人魚伝承の特徴です。


妖怪は伝承によって様々な役割を担っていますが、共通する主なる役割は情報伝達であると感じます。災害のための効果的な情報が妖怪に委託されて、社会に受け継がれてきたのではないでしょうか。それぞれの地域の災害の特性が、これらの妖怪伝承に明確に見いだせるのも、地域の人々が、次世代の安全に向けて伝承を作り上げてきたからだと思います。また、妖怪たちが恐ろしいと同時に愛おしいのは、時には災害の原因とされながらも、防災の役目を私たちとともに担ってきた歴史があるからだと思います。

作成:練馬大根lover らん


(参考文献)
[1]「犬山たび 物語の巻 (平成31年発行)」『犬山市文化遺産活用実行委員会』https://inuyamatabi.com/data/download/100/5/monogatari.pdf、2021年6月8日 最終閲覧
[2]「災害教訓事例集~過去の災害を語り継ぐ~『3山口県内の災害伝承・災害教訓一覧・参考等』」『山口県』                            https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/6/d/0/6d0c721e273bdc3a336e18e8e3b9bb09.pdf、2021年6月8日最終閲覧
[3]「洪水危険、土砂崩れ注意…『地名』は警告する」『読売新聞』(2018年7月30日)https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20180725-OYT8T50042/、2021年6月8日最終閲覧
[4]「~石垣島の風景と歴史~ 33. 人魚と海の秘密(大津波)」『石垣市教育委員会』、http://115.31.195.15/100000/100500/ishigaki_fuukei_rekishi/033.html、2021年6月8日最終閲覧


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