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「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」

話が上手い人に憧れる。面白い話をする能力というより、人を納得させる能力に近いもの。

仕事場でもプライベートの友人でも何かあいつの言う事って説得力あるんだよな、という人。そういう人に憧れる。

この本の著者の若林氏もそんなひとり。最近好きになったので著書をいくつか読み漁ったが、この人はエモーショナルなところ(特にネガティブな面)を言語化することがすごく上手だな、と思う。

そんな若林さんが書いた表題の本。

概要

本著は3年前に出版された書籍の文庫化。メインはタイトルにもなっているキューバへの旅行記だが、今回は書き下ろしでモンゴルとアイスランドの旅行記と短編を加えた内容となっている。

キューバ編の冒頭の方の一節。

著者はニューヨークで感じた「やりがいのある仕事をして、手に入れたお金で人生を楽しみましょう!」という価値観が海を超えて東京まで届いているのではないかという疑問を持つ。

「勝ち組」「負け組」という言葉が日常的に聞かれる様になったり「スペック」という言葉が人を対象として使われる様になった事に違和感を感じていた。

その原因は新自由主義という経済システムにあると想定し、違うシステム=社会主義の社会を見て確かめに旅に出る。

キューバ編の最後に旅の本当の理由が明かされるのだが、予想外に感動させられる。そして、今回書き下ろしとなるあとがきの一文。

その確信を、新自由主義の競争で誰かを傷つけて貰ったお金を使って俺は見てきた。–p.334

この一文を読む為だけにでもこの本を読了する価値あったな、と思えた本でした。

読んだ感想

受験生時代は人並みに勉強してきたと思うが新自由主義に関しては頭に残っていなかった。(大学受験の時は世界史と政治経済を選択してたのに)

私は「やりがいのある仕事をして、手に入れたお金で人生を楽しみましょう!」という価値観にあまり疑いを持ってこなかった。

それは10数年前の就活(リーマンショックが吹き荒れた)時もいい会社に入れば好きな仕事が出来て幸せになれるんだと疑いなく思っていたし、今でも仕事にやりがいを求めている。

僕が働き始めた10年ほど前。ブラック企業なんて言葉は既に定着していたけど、社会はまだ少し昭和的な労働文化が残っていた気がする。

深夜までの残業、休日返上、仕事は見て盗め、飲み会も仕事のうち、上司の言う事は絶対。

月1回ぐらいの土曜出勤と繁忙期を除けば労働環境は非常にホワイトな会社だったのでこんな観念が残ってた事に驚いた。

色々あって転職した今の会社は某口コミサイトで働きがいがあると評判だった。でも同じ感じか、それ以上の昭和の世界だった。

2社目も似たような文化だったので、働くとは、会社とはそういうものなんだな、と思った。

そして最近、少し文化が変わってきていると思う。働き方改革。

PCの稼働時間はモニタリングされ長時間労働は許容されなくなっていた。休日出勤したら必ず代休を取る様に厳命される様になった。会社からはリモート環境とITツールが提供される。これについて来れない人(会社には結構いる)は取り残されるんだろう、と漠然と思っているので何とかキャッチアップしている。

ついこの前受けた研修でこれからはVUCAの時代と言っていた。そしてVUCA時代に対応する為に伸ばすべき能力を色々と研修で教えていたけど忘れた。

必要ないと思った。今までも世の中は目まぐるしく変化して不確実で複雑で曖昧であるとこの本を読んで学べたから。

考えて悩む事の尊さをこの本は教えてくれる。

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