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【毎日ひとつの非日常】 No.012-018 ランチでステーキを食べる

毎日ひとつ緩い制約を課して、日常を縛りプレイする試みを続けています。3週目のおしながきはこちら。


No.013 中国拳法を受け止める

記事企画にて。詳細は後日公開されるが、人間は生命の危機を感じると本気で声が出ると分かった。瓦を割る人はチヤホヤされるけど、瓦を持つ人のコメントがフィーチャーされることはない。その第一人者として声を大にして言いたい、コワいよ!


たまに来る偏頭痛。昨日の夜から兆候があり、今夜は寝れないと覚悟していたがその通りになった。どんなに寝ようとしても痛みには抗えないので、いかに自分を誤魔化すかが勝負。食べたくもない食パンを食べたり、抜きたくもないのに夜の仕事をしたりして気を逸らす。最終的にはYouTubeのしょうもない動画を見続けて、気を失うようにして浅い眠りに入る。コレが月に一度くらいの頻度で処理するなかで編み出されたベターな対応策だ。さいわいなことに祝日なので自宅勤務で済んだけれど、大事な仕事のタイミングで来ないのを祈るばかりだ。


No.014 グリーン車に乗る

意気込んだは良いが乗り方が分からなかった。調べるとモバイルSuicaのアプリで購入できる。いつもは乗らないように避けるグリーン車、逆にその場所を探す違和感と慣れてなさが可笑しい。

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二階建ての車窓からホームの混み合いを見下ろすと、悲しいかな小市民的な満足が広がる。中身は新幹線の座席そのもので、もちろん快適なのだけど、たかが40分なので時間も知れている。常にタイマーがカウントダウンしてるような感覚。睡眠やスマホいじりで無駄にしてはなるまいと、読書に精が出た。課金は自分に対する躾だな。

1,000円でストレスから解放され、集中できる空間が約束される。カラオケボックス式の精神と時の部屋みたいなものかもしれない。


No.015 始発で出勤する

最寄駅から勤務先への始発は午前4時34分。間に合うためにはその30分前には起きていたい、睡眠時間を確保するならその6時間前には寝ていたい。早起きを達成すべき目的にすると、逆算して前日の過ごし方まできちんとする。夜の10時に寝たのはいつぶりだろうか。

朝のアラームで目が覚めても、周りが真っ暗で何が起きているか認識できなかった。ラジオをつけてもMC抜きでマイナーミュージックが流れ続ける時間。お湯を沸かしてうどんを茹でながら、前日に仕込んだおかずを弁当に詰める。

まばらな雨が降る街を歩くと、往来する車はダイヤに縛られていないことに気付く。漁師の船も同じか。パーソナルなモビリティは生活の幅をぐんと広げるのだろう。たどり着いた始発の車内はがらんどうとしていたが、時間と距離が進むにつれて人が増えてきた。こうやってじっくりと、いつもの朝の光景に近づいていくのだろう。

この日は結局16時に退勤。とちゅう昼食や散歩などを除いても8時間は働いたという自負が帰路を行く足を早める。万能感がある。

自宅に着いてから作業があるので仮眠をとると、しっかり2時間くらい寝ていた。やはりどこかで帳尻は合わせないといけないのだな。


No.016 始発から終電まで職場にいる→徹夜で作業する

始発チャレンジが相当良かったので調子に乗る。寝る時間が24時を回ってしまったのだが、帰宅後の仮眠が効いたのか絶望的な眠さはない。ティファールに水を入れてボタンを押し、パンをオーブンに放り込んで少し寝るルーティンは、すぐには色々できない寝起きの体と相性が良いのかもしれない。

昨日は感動のあったスカスカの電車。今日はさほど感動がなく、こんな時間でも端の座席の人気ぶりが目についた。いずれ「おなじみのメンバー」も現れるのかも。

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のほほんとしていた朝のことが嘘のよう、翌日締め切りの映像編集がびっくりするほど終わらず、日が傾いた頃には徹夜を決意していた。学生の頃から一晩寝ずに作業を続けた記憶はないのだが、今回はとてもうまくいった。

始発で来たという心の余裕が、ちょっと疲れた時の休息を大胆にさせる。細切れになった休みでなく、大胆な30分くらいのゆとりをこまめに摂取したから身体が落ち着いていたのかも。

23時にスマブラのDLC発表を見てから銭湯に赴き、お風呂サウナで超回復したのも大きい。徹夜する学生の多いキャンパスには、警備員よりも銭湯を設置した方が良いのではないか。思えば過酷な研究合宿も、宿のお風呂が天然温泉だから頑張れた。風呂&Workで人間は無敵になれる。

久方ぶりのモンスターエナジーも功を奏したか、無事翌朝のMTGに納品が間に合った。6.5割くらいの評価と感じたが、はじめての映像仕事としては上出来だろう。あとは自分の好みではなく他者のニーズをしっかり拾うことだな。


No.017 ランチでステーキを食べる

徹夜明けのMTGを終え、早退。時間としては問題ないはずだけど、他の人とのリズムがズレすぎるのはよろしくない。かといって無為に居続けるわけにもいかず、残業という仕組みは良くできていると納得した。

コンビニご飯で雑に埋めてしまった胃袋と、山場を超えた昼の陽気。疲れた僕にマッチするのは、ステーキなのではないか。

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Google Mapを手繰り寄せ、職場から10分ほどの洋食屋を見つける。通りに面したポップすぎる看板とハートの装飾にギョッとしたが、決めたのだから仕方がない。縛りプレイは思考コストをぐっと下げるのが良い。

久々の分厚い肉のかたまり。押した方が切れるナイフで小分けにして、ワシワシと身を食べていく。感動的な旨さはないが、何度も噛んで味わう肉の存在感が、動物としての自分を思い出させる。ごちそうというよりも、スポーツみたいだな。

とは言いつつも、脂身にたどり着いたら分かりやすく美味しい。「脂がのっていて旨い」だなんて「吉岡里帆は可愛い」と言うくらい意味のないことだ(脂という字には旨いが入っているではないか)。そんなことはみんな分かっている。だけど抗えない、認めざるを得ない。そういう強さが、ステーキにはある。

思い出したのは、学会発表で行ったポートランド。5000円以上はするであろうステーキを先生にご馳走になった。だけれども、肉汁とソースをたっぷり絡めたマッシュポテトの味の方が印象に残っている。少なくとも僕にとっては確実に、肉本体よりも美味しかった。陰になり日向になり、とにかく強いインパクトを残す。そういう存在感が、ステーキにはある。


No.017 アンナミラーズで朝食をとる

モーニングという表現に気恥ずかしさを感じるのは僕だけだろうか。昨年末ごろから始まった友人達との定例会議が、人数の増加に伴い夜から朝の開催に移行してきた。やたら早起きの多かった今週の流れとの相性は良い。

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8:00過ぎに品川のアンナミラーズでカジキマグロのステーキを注文。カラフルで品数も多いご機嫌な朝食のなかでも、何気ないトーストがとても美味しかった。薄めでカリカリなだけでなく、しっかりと「味」がする。麦が云々という話なのだろうけど、食パンの美味さを説明する語彙を持たないことが悔しい。

昼過ぎに帰宅してからは、依頼されていたものの製作と仕上げ。デジタル機材は一通り使えるが、それ以外の手作業・造形・デザインの力が弱いことを感じて悔しくなる。さいわい先方には喜んでもらえた(自分の作ったもので人が笑顔になる以上に嬉しいことはない)けれど、もっと修行してスキルを磨かなければなるまい。

作業が間に合わず別の予定をキャンセルしてしまったのだが、夜10時にブツをお渡しして、開放感と共に寿湯へ。あぁ愛しきホームグラウンド。最後に水風呂でシメる方式にすると、その後のポカポカが長続きすると確信した。


No.018 喫茶ランドリーに行く

午前中はしっかり布団で過ごし、知らない人からの間違い電話で目を覚ます。間違いでも良いから話したい気分になったけど、人との会話に飢えているのだろうか。

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気づけば毎週末に浅草・蔵前エリアを散策している。典型的なベッドタウンやバスで駅から20分のような場所で暮らしていた時には、自宅と行き先は「線」で繋がっていた。目的ありきでその場所までまっすぐ行く。自転車やバスはショートカットの手段であって、道中の何かしらを楽しむ意図はなかった。

今の家の近辺は人や店の密度が高いので、歩いていると必ず何かに出くわす。土地と土地との繋がりや地名の由来もなんとなく見えてくると、地図が「面」として頭に入ってきた。新鮮な感覚だ。

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初めての喫茶ランドリー。店内のBGM、洗濯機と乾燥機が動く音。店員さん親子やお客さんが話す声。高低差や奥行きのある空間は、とても居心地が良かった。

店内の冊子を読むと、カフェではなく喫茶にしたのは、ゆるさを含むためだという。目的がカッチリしてなくても良い。お店ではあるが、公共施設のようでもある。だからドアを開けて入ったときに掛けられる言葉は、「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」なのだろう。

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