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創作【詩】 娘よ

娘よ
また春が来るだろう
君の頬は丸く膨らみ
瞳は眩しく細まるだろう
鳥のさえずり聞かせてあげよう
いつか君も羽ばたけるように

娘よ
また雨が降るだろう
君の髪や肩を濡らし
洗ってゆくのだ、あの日のことを
吹きすさぶ風をなだめてあげよう
せめて今夜は眠れるように


そして
私は去るだろう
灰のように身軽になって
たったひとりで舞い上がる
優しい風に紛れて

歌ってあげよう
歌ってあげよう
もう隠し事などないのだから

祈りをあげよう
祈りをあげよう
願ってはいけないことなど
なにひとつない

春をあげよう
春をあげよう
なにものでもない私の代わりに


娘よ
泣いてくれるかい?


そして、また春が
君のところに巡ってくる
そこに私の影はなく
ただ木漏れ日がささやく

「娘よ」


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