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野鳥観察|ハハジマメグロ|引きこもりの戦略


アホウドリは1日500kmも海上を飛ぶらしい。
その一方で、わずか数キロ先の隣の島にもお出かけせずにずっと同じ島で暮らす鳥もいる。

小笠原の母島列島固有種で国の天然記念物、
ハハジマメグロだ。


小さな鳥なので意識しないと見逃すが、母島ではそれほどレアな存在ではないのかもしれない。
いちおう港の観光案内所で「メグロはどのあたりで見れますか?」と伺ったけど、教えていただいた山に向かう途中の市街地にメジロ(目白)に紛れて普通にいた。

※字面がよく似ているので以降、メジロに触れたい時は『メジロ(目白)』と書くことにする


メジロ(目白)と姿形はよく似ていて一緒に行動することも多いらしい。メグロかどうかは、目元の黒い模様でぱっと見で見分けられる。他にも、メグロの方が顔やお腹が黄色かったり、嘴に鋭利なカーブがある…ような気がする。

メグロ
別の場所で撮影したメジロ(目白)


冒頭にも書いたように、メグロを貴重な存在たらしめているのは彼らの行動範囲の狭さだ。
メジロ(目白)がどこでもピーチク歌うのは微笑ましくも珍しくはない一方で、メグロは母島列島にしかいないから注目される。母島列島にしかいないのは、その場から動かないからだ。


もう少し掘り下げると、母島列島(母島・向島・妹島)の3島に暮らすメグロはそれぞれ独自のDNAを持つとのこと。頑なに島の外に出ない生き様だ。キーウィのように飛べない鳥ならともかく、飛べる鳥がこままで移動しないのはかなり珍しいとある。


きっと、移動するよりその場に留まっている方が進化の上で有利だったとか、外向的な個体はことごとく不運に見舞われたとか、色々な都合や偶然が重なったのかもしれない。明確な理由はまだよくわかっていないらしい。

出典
「小笠原に生息する絶滅危惧種の鳥「メグロ」は
狭い海峡を越えずに独自の進化を遂げている?」
- 独立行政法人 森林総合研究所



さて、いま私がいるのは小笠原から遠く離れたイギリスのエディンバラ。天気は晴れ。年中雨と曇りの多いこの国で、英国人は少しの機会も無駄にしまいと芝生に転がっている。

天気が良いだけじゃない。世はグローバル社会。あらゆる機会にアクセスしやすくなり、外に大きく踏み出したり、ドラスティックに変化していく人が華やかに見えてしまうことよ…話の飛躍を許して欲しい。

この記事はベッドに座って書いている。今日は一切外に出たくない。

大洋を駆け巡る海鳥にも憧れるけど、こんな生き方もありだよねとメグロに思いを馳せている。

一緒にしないでくれる?



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