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生き方が下手すぎる日

今日もうまく立ち回れなかったな、と後悔を飲み込んだまま帰宅の途についた。

高校からの友人なのに私は未だにどう振る舞うのが正しいのかわからない。
受け答え変じゃなかったかな、とか。
ずっと笑顔でいられたかな、とか。
うまく馴染めなくて気をつかわせなかったかな、とか。

みんながにこにこ笑って映る写真も、みんなかわいいのに私、かわいくないな。
服のチョイス間違えたな、髪の毛もカットしてから1カ月経ってるから量が増えてシルエットがイマイチだな。
そんなことを考えてしまって気が重い。

みんなみんな、人のことまでそんなに気にしてないだろう。
長年の付き合いだ。
私がダサいのも今更だし、みんな元気ならそれでいい、ぐらいのはずなのに。

風は少し涼しかったけど、日差しは暖かく、お出掛けするにはちょうど良い天気。
楽しげにおしゃべりしてくれたり、駆け回ったり、かわいらしい友人の子供たち。

明るい空を大きな音を響かせながら上っていくジェット機。

写真に切り取ったら素敵な光景がいっぱいあった展望デッキで、なんだかとてつもなく1人だった。

解散して、疲れた心の慰みにお土産物屋さんを覗いているうちに、あれもこれも美味しそうで選べなくなった。
レジも並んでいる。

「帰ろう。」

駅弁ならぬ空港弁を諦め、パブロのタルトも諦めて、駅ビルまでのリムジンバスに乗る。
空港はどこもかしこも人が多く、疲れた。
バスは空いていた。

駅ビルでお昼にしよう。
空港よりはマシだろう、そう思ったのだ。
でも残念ながらそんなことは無く、どこもかしこも行列で、みんな誰かと一緒に楽しそうにわいわいお店を覗いていて、やっぱりここでも私は1人で、何も決められない。

途方にくれたまま、端へ端へと進み、何とかお昼ごはんを座って食べ、温かいお味噌汁とお刺身にホッとして、少しだけ温かい気持ちでお店を出た。

ふらっと覗いた本屋さんで何冊がパラパラと目を通し、買おうかな、どうしようかなと悩んで決められずふらふらしたまま、電車に乗った。

とっても、たぶん、疲れている私は実家に寄って帰ろうとしていて、それは実父の土産の赤福をもらいに行くためで、ついでに空港で買った高いポッキーを渡しつつちょっと摘まんでやろうと思ってたんだ。
でも本当は、最初から、空港を出たときから、どこにも寄り道せずまっすぐ家に帰った方が楽だったんだろうな。
必要に迫られたわけでも無い選択を色々悩むうちに疲れ切ってしまった。

今日はうまく行かなかったなとちょっと沈んだ気持ちで実家に帰った。
母でも妻でもない自分で、ぐだぐだと愚痴をつぶやき妹や、父、母と話してる自分は少しだけ、娘だった私だった。
息子と夫の存在が消えたわけじゃ無いけど、ここに私だけで居る間は、母にも妻にもならなくて良い。
ただの私で良いという開放感。

少しだけ肩の荷を下ろして、お菓子を食べてはしゃべって、鍋をつついてはしゃべって。
あっという間に夜になり、ちょっと夜遊びをしてきたような気持ちで電車に揺られる。

夜歩く、私の足取りは、やっと少しだけ軽くなった。

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