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スタートアップに入社して、社長になって、会社を売却して、PMIを終え退職した話(完結編)

3月に書いたnoteにて、私がスタートアップに入社し、社長になり、会社を売却した話をつらつらと書きましたが、8月にPMIを終えて会社を退職しました。タイトルに工夫がなくて、すいません。笑

この時のnoteは想像以上にたくさんの人に読んでいただいて、それをきっかけに連絡をいただいたり新しく出会う人もいました。そこでよく聞かれたこととかにも触れつつ、激動の5年について改めて振り返りをしました。

一応流れとしては、一般社員としてスタートアップに入社し、社長に就任し、業績回復させた後、外資スタートアップに会社を売却、今月で退職したという流れです。今回は主に私の心情について書いてます。

そもそも私がなぜ社長に選ばれたのか

これいろんな人に聞かれるんですが、私も実は聞いてないんです。笑

当時株主の方々から選んでいただいたんですが、当時私のことをよく知っていた人がいたわけでもありませんし、実際当時の株主の方に「骨は拾う。最悪、就職先等も探してあげるから」と言われたんですね。墓場行き前提かーい!ってね。笑

つまりシンプルに、期待されていたわけではないんですよ。笑

この時の言葉は私の負けず嫌い精神に火をつけたところがありまして「たとえ、どんな結末になっても就職先くらい自分で探せるわ。」って思った記憶があります。笑(先方に悪気があったわけでもなく、私も怒ってないですよ。)

「当時から目に留まる何かがあったんでしょうね!」なんて言っていただくこともあるんですが、謙遜とかではなく、多分そういうのではなくて。笑
その当時売上の大部分を私が担当していた事実や、外から引っ張ってくるのも時間的にも状況的にも厳しかったと思うので、苦肉の策だったんだと思います。
そういうのも理解していたので、あえて「なんで私なんですか」なんて野暮な質問はしていません。笑

ある意味、やることは明確だったから迷わなかった

業績回復のためにやったことも、銀の弾丸的なものは何もやっておらず、あえていうなら「やらないことを決めたこと」です。

これは言葉で言うと簡単なんですが、実は結構大変でした。スタートアップって基本(良い意味で)「やりたい!」で組成されている会社じゃないですか。
私も個人的には「やっちゃおうぜーイェイ!」というタイプです。笑
だから「やらない!」って決めるのってネガティブな判断にも見えるし、当然反感も買いましたし、シンプルに辛い作業でした。

でも、これは辛いけど、絶対にやるべきことだとわかっていたので、迷うことはなかったです。

創業者がいなくなったスタートアップがどこへ向かうべきなのか

業績が回復しつつある中で、私が直面した悩みは、「創業者がいなくなったスタートアップがどこへ向かうべきなのか」というものでした。

業績回復までは、前述した通り、ある程度やるべきことが明確なんですよ。もちろんやり方はいろんな道があるし、私もたくさん失敗をしながら進めましたが、とにかくやればいいんです。

私は経営者になってから、私の周りには経営者が増えました。しかも大多数はスタートアップの創業経営者です。
私にも彼らに負けない覚悟や執着心を持っていたと思いますが、どうしても彼らが持つ事業に対する強烈なパッションや夢には届かないなと、どこかでずっと思っていました。
負い目とも違うんですが、これは「努力で補う種類のものではないな」とは思っていましたね。
(もともと私にとって、会社の事業ドメインは、自分が強く興味を持っている分野でなかったことも大きいです。)

実は、私が経営者を引き受け、必死に業績を回復させていることは、ただただ会社の「延命処置」をしてしまっているだけではないか?そこにいる社員は本当にそれで幸せなのか?と。

もちろんお客様から感謝の言葉を伝えられることもあるし、社員もやりがいを感じて頑張ってくれているし、業績が回復することで少しずつではあるけれど活気のある会社になっていく様が感じられて、その変化は私にとっても幸せな変化でした。
そこに嘘偽りはないけど、私は「会社を再建させるプロジェクトとしての社長役を引き受けた」というのも本音で、その本音が変わることもなかったのです。

全ての会社が、大きな夢を持って、大きく成長していくことが全てではないです。別に大きく成長しなくなって、社会のためになることをやれていたら、それでも十分に素敵なことだと思います。ただし、ここはスタートアップで、(自分がしたわけではなくても)資金調達もしている以上、途中でスタートアップでなくなることは許されないのです。

スタートアップの経営者として、いろんなことを学んでいけばいくほど、この事実に打ちのめされそうになりました。

また市場環境も競争が激化していたこともあり、悠長なことを考えていたら、回復した会社がまた溺れてしまうことも容易に想像できたのです。

「社長にしかできない仕事がある。」

私の踏ん切りがついたのは、ある人から「社長にしかできない仕事があるよ。この状況を解決するのは、社長にしかできない。」と教えてもらったことがキッカケです。

つまり自分が船長として舟を漕いでいくこと(大きな夢を描くこと)がベストだと思えないのであれば、新しい船長を探してくるか、新しい舟に乗り換えるか、ということ。このドラスティックな決断は社長の私にしかできない仕事であると言われました。

前noteにて「当初EXITについて積極的になれていなかったこと」についても軽く触れていますが、「この会社に相応しい新しい舟を見つけ、大きな舟で再出発をはかること」が私の最後のミッションであると思えたことが、M&Aについて真剣に向き合うことに繋がったと思っています。M&Aを「目的」としてではなく「手段」として捉えることができるようになったのが大きな変化でした。

もちろんM&Aは相手ありきですし、いろんな条件やステークホルダーの意向が噛み合って達成できるものなので、やはりそう簡単ではなく、何度もくじけそうになりましたが、「自分にしかできないミッション」だと考えられていたことが最後の最後まで踏ん張れた理由かなと思います。

無事に舟の乗り換え完了!

スタートアップのM&AはEXITと表現されることもあり、最終ゴールのように見えますが、本質的には買う会社と買われる会社がM&Aによってどう成長できるのか?が重要なポイントで、つまりこれは「再スタート」です。

その答えは1年で見えるものではありませんが、私の「この会社に相応しい新しい舟を見つけ、大きな舟で再出発をはかること」という経営者としての最後のミッションは達成できたと思っています。
私が社長でいつづけることよりも、会社にとってもサービスにとっても社員にとってもハッピーな道になる自信と直感があり、それも社員にそのまま伝えました。(もちろんいろんなM&Aの形がありますし、会社が統合せず、社長が続投するパターンもありますが、今回は交渉の段階から完全統合を目的として進めていました。)

どんな風に舟を乗り換えることになるのかは、実際やってみないとわからなかったので不安もありましたが、私達がもともと漕いでいた小さな舟は壊されることなく、彼らの舟にすっぽりと吸収されるような形になったと思います。

新しい舟は世界各国に素敵な仲間を持ち、育ててきたサービスがグローバル展開され、オフィスもリッチで綺麗で、資金やリソースも比べ物にならないほど大きくなりました。こんな絵に描いたようなこと、本当に起きるんですよ?夢がありませんか?笑

私にとってもなかなか居心地の良い舟だったので、もうちょっと居座ってもいいかなとも思っていたんですが(笑)、私のミッションは終えたので、大人しく大手を振って下船しました。
私は私で新しいチャレンジをしようと思っています。

終わり。


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