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真実でも事実でもないのだけれど

きっと、医師からしたら

そんなエビデンスに欠けたこと
信じられるわけないだろ?

と思うかもしれないけれど

わたしは、看護師の勘というものを多いに信じている。

なんかおかしいな?ってときは
だいたい、なにかがおかしいのだ。

そのうち患者が急変する。
しかも、盛大に。

きっと子をもつ親にも、同じような感覚があるんじゃなかろうか。

なにかがいつもと違う…
なにがって訳じゃないんだけど…みたいな。

言葉にするには至らない、でもその人の機微で重大な変化をキャッチしようとする五感の感受性、その経験と蓄積が勘なんだろう。

先日も、「なんかおかしい」と出会った。

熱も血圧も変わりない。
神経学的初見もない。
意識レベルもいつもと一緒。

でも、なにかがおかしかった。
数字や言葉にできない歯がゆさがもどかしい。

手を握る。
明らかにいつもより冷たい。

エアコンで冷えたんじゃないの?

健康な人ならありうるかもしれないけれど
病人の手の冷たさは異常だ。

そんなわけないのに氷より冷たく感じる。

隣の患者のテレビから、今日も猛暑となりそうですというニュースが聞こえるなか、患者の手の下に電気あんかを敷いてあたためる。

正直、手が冷たいだけで
こんなに胸がザワザワすることはない。

わたしの勘が告げているのだ。

その、なにかおかしいは合っている、と。

考えられる可能性をすべて考え
できうることをすべてやって

わたしは病棟を後にした。


次の日

わたしが出勤したら、その患者は居なかった。
あの日の夜、急変して亡くなったそうだ。

ほらごらん
合ってただろう?

勘が得意げにわたしを見下ろしている。


そのうち勘を見下ろせるくらい、瞬時に的確な判断をしてケアできる日がくるといいんだけど

人が人を理解するなんて
到底無理なんだよっていう気もしてる。


それでも、人を元気にするのは人なんだと証明したいから、わたしは今日も病棟へ行く。



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