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突っ込め、アンパーンチ

こちらは、性的な表現を含む内容になっております。
諸々、各自の判断でお願いいたします。

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久々に、子宮脱の患者さんをみている。

子宮脱とは、子宮を含む膀胱や肛門をハンモックのように支えている骨盤底筋群が緩んだりなんだりして臓器を支えられなくなり、結果として子宮の一部や全部が膣を通じて体外へ飛び出てしまう病気のこと。

寝ているときなんかは、ちゃんと格納(?)されているんだけど、くしゃみや咳で腹圧がかかると、骨盤底筋群の力が弱いので負けてしまい子宮が飛び出て下界へコンニチハしてしまうのだ。

出っぱなしだと、いろいろ不都合が出てくる。

まず、邪魔。
男性のたまは、太ももよりちょっと前側についているからそうでもないんだろうけど、子宮が出てくる場所は太ももと太ももの、ちょうどあいだ。
生理用ナプキンをあてがう位置に、拳大のなにかがあると、もう歩けない。

それから、不衛生。
そもそも、どの臓器にも言えることだけど、空気に触れる前提で作られていないわけ。
舌をずっと外に出しててごらん?
カピカピになって使いものにならなくなる。

それに、おしっこの出口とうんこの出口に挟まれる場所で去来するからさ、汚いのよ。
子宮だってうんことおしっこに巡り合うとは、これっぽっちも考えていないわけ。
ずっと体内で生涯を過ごす予定だったはずなのに、骨盤底筋のせいで体外へポーンと放り出されるんだもの。困るよねぇ。

おしっこやうんこがついたまま体内へ戻す作業をすると、そのまま感染を起こすことだってある。
そういう意味での不衛生、というのもある。

あとは、乾燥。
口の中の粘膜が、ずっと布に触れてると思ってごらん。
そのうち乾燥して摩擦で出血してしまうんだよね。
それが、子宮とパンツの関係で起こるわけ。よくない。

というわけで、子宮脱と診断されたらできるだけ出ないようにする治療をする、出ちゃったとしたら「なるはやで返納する」作業が求められる。

この、なるはやで返納する作業がね、もうアンパーンチそのものなの。
清潔な手袋をつけて。手のひらをグーにして、だいたい臍くらいまでググーっと入れ込む。まるで、アンパーンチ。

陣痛がはじまって分娩開始の目安が子宮口のサイズ10cmということ、頭ではわかっているのに、いざ自分のグーがすっぽり膣に入ってしまうことを体験すると、なんで?という感覚になる。

グーが入っちまったよ…タンポンをやっとのことで入れてる人もいるのに、グーが入っちまうってどういうこと???って。

コウノトリの第1話、研修医役の松岡さんが早期胎盤剥離疑いの妊婦の膣にグーを突っ込んだままストレッチャーで運ばれるシーンがあるけど、ホントあれ。

膣は、普段(?)指とか男性器とか大人のおもちゃとかクスコ(膣鏡)とかが通るところなのに、わたしのグーが入っちゃってるよ太すぎだろってなる。

しかも、患者医療者という前提の上に成り立っている関係とはいえ、患者はすすんで股を開くし、わたしは点滴の針を刺すのと同じような気持ちで子宮にむかってパンチしている。

性的同意がいろいろ言われている昨今に、思い切り女性器をパンチしていて、わたし大丈夫そ?と、問いかけるもうひとりのわたし。

最近担当している方は、病歴が長いというのもあるせいか
「あ、出てた?もう適当に突っ込んどいて〜」
と、長ネギを野菜室に入れといてと同じようなテンションで言ってくるから、なおさら。

それに、返納しちゃえばその患者の下半身は一気に健康に見えるようになる。
それもまた不思議なのだ。


知識と経験と体感は相関すれど一致しない。
これを、今日もわたしは臨床で味わっている。


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