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長女と背中のファスナー

ドレスを着る途中、背中のファスナーをあげようとして、おもむろに付近にいる男性に頼む女性。

「これ、お願いできるかしら」

映画で、そういうシーンをよく見ます。結構見る。その度に私は思っていました。

えー?あなた、背中に手、届かないの?まだ若いじゃない。見たところ二十代よね?なのに四十肩なの?気の毒に…あ、それとも、単に体硬いの?って、言うか、自分で背中のファスナー閉められないのに、そのドレス買ったんですか?いつも閉めてくれる人が近くにいるって限らないよね。云々。

えーっと、私と同じように感じていた方がいるでしょうか。いるとしたら…。

あなた、長女ではありませんか?

私は女三人の一番上でしたから、例えば、なんかチャック(子供のころはチャックって言ってましたので)を親に「ねえねえ、これあげてー」と言おうものなら「アンタ、お姉さんなんだから自分でそれくらいやって」と言われるわけで、いや、記憶にあんまりないけど、多分そうやって言われたはずなんで、親は妹の服を着せるのに必死だから、姉である私はそれを受けて「ねえねえ、自分でチャックできたよ、ねえ見て見て!」と、アピールして自分の存在意義を盛大に誇示。なんなら妹の着替えも手伝って「ようちゃんのチャックもあげたよ、ねえねえ」と、言うわけでございます。

長女というのは自分でなんでもできることで親にその存在価値を認めてもらえるものなので、とにかくなんでも自分でやる、親の役に立つことをして褒めてもらう。そんな生き物。え?私だけ?いや、きっと違うはず、世の多くの長女はこのような性(さが)を生きているのではないでしょうか。

そんなことで、いい大人になっても「ファスナーあげて」なんて、人に頼めるわけもなく、そもそも自分で閉めるのなんて大大大前提。隣にファスナー上げたい男性がウキウキして待機していようが、「ファスナーくらい自分でできますけど、何か?」と言わんばかりに、男性の存在をも黙殺し、なんでもかんでも自分でできるもん!全開。いや、例え自分でできるとしても、男の人にさせてあげて、そういうなんでもないことで、男の人って「頼りにされてるなー、俺」って、喜ぶんだから。と、甘え上手な恋愛リーダーから的確なアドバイスがもらえたとしても、

「は?何それ?」と、怖い顔になり「悪いけど、自分でできるのは背中のファスナー閉めるだけじゃありません。電球の取り替えも、リモコンの修理も、なんなら棚つけだって、冷蔵庫の移動だって、車幅しかない道を余裕で運転だってできますけど?」と、自分ひとりでできることをドヤ顔で羅列しだし、むしろそっちを褒めてくれ、と言い出す始末。

ああ、悲しき長女の性。そんな長女が「男に甘える」技術を覚えるのは、いったいいつの事になるのでしょうか。

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