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「やあ!友達!」

ワインバーをしている、そういうと決まって「ソムリエなんですね」と、言われます。ワインをきちんと学んで資格を取っている人がワインバーができるのかと言うと、そういうわけではありません。別に資格がなくても大丈夫です。

私は天邪鬼なので、最初は資格を取っが方がいいのかな?と思っていましたが、そのうちに飲食業界でソムリエの資格を取るのが流行しだしたので、結局「取ったらみんなと同じやな~」と思って、取りませんでした。いや、取ろうと思っても取れないかも知れないのですが、ここはあえて「取りませんでした」と言わせてください。

何かを習得するときに、勉強から入る人もいます。例えば、電化製品を買った時に、ちゃんと取扱説明書を読みながら使う人もいれば、見ずにいきなり使いはじめる人もいますよね。そういう性格の違いかと思います。

私はいきなり使い始めちゃう。ついでに言うと、組み立て家具も、いきなりドライバーをつかんでやり始めてしまうので、途中で「あれ??なんでこのネジ余っちゃうの?」ってなって、慌てて、解体する、結果、二度手間になるという、愚かな人間です。

そんな私は、ワインが好きで、ワインバーを始めたわけではありません。ワイン好きの人がいたら怒られちゃいますね。でも、あんがい商売って、そういうところがあって、近所の居酒屋は凝った日本酒が沢山あるけど、店主はお酒が飲めないし、お魚が食べられない寿司屋さんもいます。商売というのはある程度の客観性が必要です。採算面でシビアになる必要もあるため、ものすごく好きすぎると難しかったりするのです。

じゃあ、どうして数ある飲食店の中からワインバーを選んだのか。

ひとりで店をするには、一杯350円のコーヒーを売っていたのでは話になりません。お酒があったほうが、客単価が上がるので、それは必須でした。

でも、日本酒をメインにすると、お料理が大変です。パスタにサラダ、というわけにはいきません。そこそこ手の込んだ小鉢なんかを、割と凝った器で出したくなってしまいます。素材も大事、魚料理も必須ですよね。すると、早い時間から食材を仕入れ、仕込みもしなくてはなりません。和食は作るのも食べるのも好きだけど、女ひとりでやるのは大変!とてもズボラな私にはムリ。

じゃあ、ウィスキーやカクテルをメインにしたバーはどうでしょうか。
これは膨大な種類のお酒を揃える必要があります。カクテルはセンスが必要ですし、ウィスキー好きのお客さんはマニアが多い。それに、どうしても2軒めの店になってしまうので、夜も2時くらいまでやる必要があります。酔っぱらいも多そう。女がやるからと言って、スナックみたいになってもいけません。それに、料理が出ません。これでは単価も稼げないしなぁ、ということで却下。

そこで、目を付けたのがワインです。

ワインのよいところは、まず、料理と一緒に楽しめますから、単価が上がります。1軒目としても2軒めとしても使ってもらえる。2人くらいだと一本あけてもらえるし、カクテルみたいにいちいち作らなくても、栓をあけて、ドーンとテーブルに置いておけば勝手にやってくれます。超楽ちんです。
それに、ワインは酔い方が明るいのです。日本酒はグチッっぽい、ウィスキーはケンカになりそう。でも、ワインは「やあ友達!」って酔い方になるんです。不思議でしょ。

しかも、ワインは中華にも、日本のお惣菜にも合いますから、私の作るような料理でも全然対応できるのですね。ワインの守備範囲の広さは無敵です。

そんなわけで、ワインをメインにしたお店にすることに。

でも、始めたころは、本当にワインのことなんて知りませんでした。いえ、ハッキリ言って、知ったかぶりしてました。でも、お客さんも当時はまだワインのこと知らない人も多く、そこそこ独学で乗り切りました。後は店のワインを片っ端から試飲です。

とは言え、付け焼き刃でどこまでも行けるわけではありません。私を鍛えてくれたのは他でもない、お客さんでした。持ち込みのワインをずらっとカウンターに並べられ、

「これ、いくらで店で出せるか考えてみ」

と、常連さんに言われるわけです。お客さんとしては、私を試したり、やり込めたり。かなり面白いわけです。こちらも真剣になります。当然最初は全然分かりません。でも、これでかなり鍛えられました。到底店では売れないような高級ワインを飲ませてくれて、しかもお金も払ってくれるのです。なんてありがたいことでしょうか。

やり始めてからあたふたしてしまう、私のような愚かな、ソムリエでもない人間でも、年月と共に、それなりのお店を運営することができたのは、ワイン好きのおおらかなお客さんに恵まれたからだなぁ、と思います。でも、今はほとんどワイン飲まないんだけどね。今は度数の強いお酒をちびちび舐めるのが好きになってしまいました。まあ、そんなのも有り、なんじゃないでしょうか。

※ 店のイベントでモヒカンにした時の写真

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