世界を作れ〜worldmakerβ版体験〜
マンガのネームを簡単に作れるwebアプリ「WorldMaker」のβ版テストプレイヤーに応募したら受かってしまったので、一般公開までの二週間、アプリを使い倒してみることにした。20000人のうちの500人、19500人の期待を一身に背負っているわけだ。
↑これが現時点での最新作
どうだろう、なかなかマンガらしくなっているのではないだろうか。
(ちなみにこのお話はぼくが原作脚本を担当した舞台『クォンタムドールズ』を元にしている。作品の初演は2016年で、茜屋日海夏さん主演。2017年の再演時には大原優乃が主演をつとめてくれた)
お話を書く。いくつかのコマ割りが提示される。選んで、コマの中にキャクターや素材を配置する。使用して7日目に作ったレポートがこちら。
できること、できないこと、やれるけどやりたくないこと
「とにかく出力したい人向け」というのは本当で、自分の描いた絵や文字や写真をアップロードして組み合わせることもできるけど、凝ったことがしたいならコミポやクリップスタジオなど「コマ割りの中に絵を配置できる」アプリは多種ある。というか自分で描いたほうが早いという人もたくさんいるだろう。
WorldMakerの面白いところは、成果物をネームと割り切ることで「できんもんはできん」と開き直って「完成」させてしまえるところ。たとえばこれは「いらすとや」の提供する素材だけで作ってみた3コマストーリーマンガ(縦3コマ8本で一つの話)だ。
はっきり言って、この4ページを何もない状態からネーム完成まで持っていくことは、徒手空拳のぼくにはできない。頭に浮かんだお話には無限の答えがあり、その無限の答えを無限回数試すことは、定められた命を持つぼくたちには不可能な試みだ。
要するに「もっといい感じになるのでは」という仮想の可能性が邪魔をして、いつまで経ってもネーム完成に至らないのが実情である。
ところがWorldMakerには、悩める隙間がない。何しろ選べるコマ割りの種類も置ける絵の素材は種類にも限りがあり、その限りある素材を配置することが制限となって「持てる手数の中での最適解」が見つけやすいのだ。
足すよりも削るよりも
一度に出力できるページ数は4pまで。というのもなかなか痺れる設定だ。お話というものは、書こうと思えばいくらでも描けてしまう。けれど、読む側の持っている時間は有限で、書き連ねたものを全て良んでもらえる保証はない。だから4Pに納める練習をする━━そう、練習をする。
1コマの中に配置できる吹き出しは3つまで。吹き出しの中の文字数は51文字まで。基本は自動改行で文字数によって文字サイズは可変する(自分でも大中小を選べる)。読みやすさを望むなら、説明を削り分量を減らしながら、同時にいくつかの情報を重ねて提示するようなセリフがふさわしくなる。
素材の性別が体型ではなく仕草のみで分けられていることから想像したディストピア的未来を描いた作品。
最低限、最小限、ミニマムに表現を選んでいくことで見つかる表現がある。
ヤンキーの世界に異世界から変な奴らがやってきて皆殺しにする話。
現役のヤンキー漫画家さんに読んでもらったところ、面白がってくれたうえで「一コマ目凝ってますねえ」とすぐに見抜かれた。
表情の幅に乏しいということは、もはやそれが一つの表現になりうる。
ファニーな絵柄だって、組み合わせによっては怖い話も作れる。
初めて作った作品には、自分の全てが詰まっていると言われている。これはWorldMakerというアプリを手にして初めて作った物語の断片で、ぼくがこのアプリを楽しいと感じた理由が詰まっている。
コマ割りの向こうに世界がある。公式オープンは9月22日、世界中の人たちが飛び込んでくることが今は待ち遠しい。
↑WorldMaker 公式ページ