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時を越える金属バット

 いよいよ明日には原作脚本を担当した『アリスインアリスインデッドリースクール 』が開幕する。10年続いた『アリスインデッドリースクール』の世界に、アリスインプロジェクトのアイドルグループ「アリスインアリス」が現れる。という、文字通り盆と正月がいっぺんに来るような物語だ。

 元々の『アリスインデッドリースクール』には、紅島弓矢という人物が登場する。彼女は金属バットを持っており、それは正しく「襲いかかる人ではないもの」を打ち倒すために使われる。つまり、その衝撃は表面に凹みを作り、血糊をしたたらせる。

 劇中で「勢い良く床に叩きつける」という一場面があるため、デッドリー本編では本物の金属バットを加工して使っている。さすがに凹ませるのはむずかしいので、エポキシパテなどで金属の歪みを造形し、その上に血糊を塗る。たしかオルタナティブから作り始めて前回までで5代目のはずだ。

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 今年の頭に上演した、劇団ディアステージとのコラボスピンオフ作品である『悪魔inデッドリースクール』では、自分で脚本を書ける自由さから、作中に「神の金属バット」なるアイテムを登場させた。これは悪魔の呪いによって欲望ゾンビと化した少女たちの頭をジャストミートして、呪いを吹き飛ばす神のアイテムである(天使がくれる)。そういう話なんだから仕方がない。

 「神の金属バット」は劇中でベニシマが振り回し、頭のそばを通る。安全のために軽い素材を組み合わせて神々しく造形した。タイトル写真がそれである。

 というわけで10周年記念の大千秋楽を飾る『アリスインアリスインデッドリースクール』に登場する金属バットのお話なのである。今回の金属バットは時を越える。軽い素材で造形したが、そのうえ「経年」というファクターが加わり、なかなか興味深い「ベニシマのバット」になった。やはり塗装が肝要なのだ。

 おかげさまでチケットの売れ行きもよく、土日はほぼ満席とのことだが、できれば早いうちに観に来てほしい。なにしろ演者たちがすばらしい。実験的な演出もよく作用しており「細川博司に任せておけば間違いない」という惹句で営業をかけたいくらいだ(もうすでに2020年はほぼ作演出で埋まってるらしい)。

 ぼくも来年はそうありたいものだ。

 アリスインアリスインデッドリースクール をよろしくお願いします。


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