【好青年女装】とにかく明るい貞操帯 (その2)~ 恋の予感は筑前煮
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二カ月は経ったか、館内の人もまばらなその夜、アイツを5階洗面所前で久しぶりに見つけた
淫靡ツールの極北のひとつである貞操帯を、日常レベルで明るく爽やかに着こなし肛門性交を実践する人物など、SNSの世界にしか棲息しないと思っていた。アイツと逢うまでは...。『とにかく明るい貞操帯』とわたしが呼ぶ、アイツだ
いつものように嫌がる誰かを捕まえて書かせたであろう、尻には消えかけた油性マジックの下品な絵文字?...端正な顔立ち容姿との対照で余計に下品度が増幅される...
『お尻の文字、消えかけてるよ』
「あら、シーコさん久しぶり」
『わたしがお尻に描いてあげようか』
「いや、ボクがシーコさんに描くよ!」
アイツはバッグから油性マーカーを取り出すと、まるで本気のような表情でわたしををビビらせる。いや、その時アイツは確かに本気だった。
『うそ、うそ、ムリだよダメだよ!』
「そんなこと言わずに、ボクが描いてあげるよ!」
『ダメだよ、困るよぉ!!』
洗面所を通り過ぎる人々の呆れた様子も眼中になく、ふたりは一本の油性マーカーを奪い合いじゃれ合う
そうこうしているうちに、ふたりとも疲れたのか飽きたのか、1本のマーカーを握ったまま、お互いを見つめたまま動きが止まる。一瞬、不思議な静寂が支配していた
『…カッコイイ♡』
わたしは思わず囁くように言葉にした
「…えっ?」
一瞬、アイツは少年の顔に戻った
そして少し勢いをつけ咄嗟にアイツの唇に軽くキスをした。そんなつもりは無かったが、静かに佇むアイツの表情が妙にカッコよかったから
わたしのオンナの部分を垣間見るのが初めてだったアイツは、ちょっと混乱して固まる
「えっ?…」
『だから…カッコイイ♡』
「…じ、じゃぁ、描いていいよ...」
あれほど譲らなかった油性マーカーをアイツは素直に手渡すと、まるで降参したようにわたしに背を向け尻を突き出した
『え?ホントに描いてもいいの?』
「…うん、いいよ」
わたしはアイツの尻っぺたにしっかりと大きな文字で落書きした。ふたりとも子供の頃に戻ったように楽しくて、ふたりでずっと笑っていた
【直腸】→|| ←【肛門】
これまでは、アイツが本気で困る顔が見たくて、誰かが書いたケツの落書きが消えなければいいのにと、事あるごとにイジっていたわたしだが、今は違う気がした。
わたしの描いたお尻の文字(想い)が…
どうか、いつまでも消えないでいますように...
それはまるで、少女の儚い祈りのようだった
【おしまい】
2019年8月26日 初出
趣味だけで書いてます('ω')イマドキの女装さん見ると女装辞めたくなりますが辞め時を見失ってます('ω')。LGBTイシューはよくわかりません('ω')...それではきょうもみなさま、ご安全に。