見出し画像

【緊迫】エマージェンシーコール【いのちを繋ぐ】

パチンコに勝ったからと『すしざんまい』に誘い一緒に呑み食いした後、当たり前のように近場のラブホテルでその男性はわたしの肉体カラダざんまいする・・(中略)・・
後期高齢者とは思えないその部位は正に働き盛りで、わたしの肉体カラダは最後の赤身にぎりまでざんまいされていた
(“わたしたちはざんまいされた” より)

・・・・・・

いやぁ、こんなに動いたのは人生初めてかもしれないなぁ…
事後シャワーを終えた男性はそう言うと全裸のままソファに沈んだ

・・・・・・

セッション終了後、わたしがベッドに座りNHK『エマージェンシーコール ~ 緊急通報指令室』を観ているとソファから何か不自然なイビキが聞こえてきた
ねぇ風邪ひくからベッドで寝てね!
反応が無いので傍に行き身体を揺するが応答が無い
そのうちイビキが途切れ苦しそうに頭部を反らしたかと思うと目と口を半開きにして舌を出し、全身からの脂汗が拭いても拭いても止まらない
大声で呼びかけようが頬を叩こうが反応しない状態がその後も続く

始める前に男性は日本酒をがぶ飲みしていたが、この深刻な症状はつい数十分前迄の後期高齢者男性の心肺機能を無視した運動量がトリガーに違いない…
果たして、不自然なイビキが止んでも呼吸しているのかさえ疑わしくなる。心臓は動いているのか?マズいぞこれは!!
男性の足元には失禁の跡があった…

・・・・・・

もはや親父同士でラブホに入室している理由いいわけに悩み躊躇している状況ではなかった
医療機関・警察・男性の家族…、これをどう説明するべきなのか
どうであれ、わたしが唯一の関係者である事実は変わらない

「もしもし…405号室です。お酒の呑み過ぎだと思うんですが同室の、あの、男性なんですが呼びかけに反応しない状態で…、救急車呼んでいただけますかお願いします」
受付女性スタッフはすぐに対応してくれた

・・・・・・

『しっかりして!いま救急車来るからね!』
そう繰り返し呼びかける一方、救急車のサイレン音が近づいて来るまでに急いでランジェリーウィッグつけまつげを脱ぎ去るとバッグに押し込み、ルーム備え付けガウンを羽織るとベッド脇の持参ローションも隠し乱れた枕とシーツも整える
今できることは、この変態女装ホモセプレイの事実を表に出させないこと

(うぅぅ…だいじょうぶ…)
男性が初めて声を上げた直後、部屋のチャイムが鳴りわたしは救急隊員3名を招き入れる
「ご主人、聞こえますかー?」
(うぅぅ…ぁ、あれ、きゅ、きゅうきゅう…?)
幸い男性の意識が少しづつゆっくりと戻り始めていた
リーダーらしき隊員がテーブルの空になった日本酒紙パックを手に取った
「14%ですか…、だいぶお酒呑まれたようですね」
『はい、本人はお酒に強いと言ってたんですが…、夕方から居酒屋で日本酒を何合か呑んだ後コンビニでまた日本酒買ってここでも…』

矢継ぎ早にもう一人の救急隊員がわたしに訊いてきた
「この男性ひとの氏名だけ教えてください」

(わたしが本名なんて知るわけがない!)


『ほら、救急隊員さん来てくれたよ!』
わたしはその質問を聞き逃したテイで男性に声掛けする
ただならぬ空気の変化を感じてか、ようやく簡単な質疑応答できるまでに意識を取り戻してきた
幸い大事には至らなかった

・・・・・・

持病に関して等、救急隊員としばらくのやりとりの後、男性本人の強い意向で救急搬送だけは固辞した。念のため血中酸素濃度・脈拍数・血圧だけを測定し、男性が諸々同意した旨の用紙に署名して救急隊員3名は帰還することになる

隊員リーダーは終始部屋の中を細かく観察していたが、わたしの事前工作やっつけで変態プレイの物証痕跡は見当たらないはずだった
「二次会ラブホ呑みに来た後期高齢男性と渋々付き合ってトラブルに巻き込まれた知り合いの中高年男性」として現場報告してくれることを願う

・・・・・・

「それじゃぁ我々は帰りますので」
3名の救急隊員が部屋を出ていく際、わたしはドアのところでひとりひとりに深々と頭を下げ謝意を伝える

ドアが閉まりこうべを上げた壁際の鏡の中に、クッキリ眉で真っ赤なリップのおっさんがいた

(了)


【緊迫】エマージェンシーコール【いのちを繋ぐ】
Copyright © 2024 C_ko All Rights Reserved.
===============

趣味だけで書いてます('ω')イマドキの女装さん見ると女装辞めたくなりますが辞め時を見失ってます('ω')。LGBTイシューはよくわかりません('ω')...それではきょうもみなさま、ご安全に。