舞台『桜文』を観た感想のようなメモ

【舞台の内容に触れていますのでご注意下さい】





・はじめに
 配信ではありますが、舞台『桜文』を観たのでメモを残しておこうと思いました。
 久保史緒里さんの舞台を観るのは『夜は短し歩けよ乙女』以来です。花魁の話というくらいしか知らずに前情報ほぼゼロで見たのですが、吉原の歴史とかは大まかに理解しているので問題ないかなと。小説や小説家が題材になっている作品に目がないので、序盤でそういう話なのかと分かったときには楽しみが増しましたし、急にゾラとか出てくるからびっくりしました。元々教養のある桜雅が若き小説家の卵と出逢ったことで自分でも書く才能に目覚めて…みたいな話になる訳はなくて。まぁ、遊郭を舞台に楽しい話を書くほうが難しいでしょうから仕方ないです。とても哀しい話でしたね。作中で語られた通りの悲恋。

・主演の2人について
 ゆうたろうさんのことは寡聞にしてほぼほぼ存じ上げなかったのですが(名前は見たことあるなーぐらい)、非常にセリフの多いあの役をあの熱量で演じるのはなかなかのパワーだなと思いました。それから、物語のキーになっている目。まんまる目ん玉。これで選ばれたんだなっていうのがよくわかる眼力の強さでした。
 そして久保史緒里さん。もう「わっち」が喋り始めた瞬間から「わっち」でした。一瞬で世界観に引き込む力がある。久保さんも、四白眼かってぐらいの目をしていますよね。

これはクロノサキさん

 誇りある花魁としての桜雅、仙太の前でのあどけない雅沙子、悲しき雅沙子、悲しき桜雅と、いろんな人格・表情を見せてくれた久保史緒里さんですが、個人的には与平・石倉三郎さんと2人きりの時だけ本当の姿をのぞかせている感じがすごくよかったですね。人間らしさを感じました。「誰にも秘密で、頼むよ」

・演出面で気になった点
 非常に満足度の高い内容でした。というのは大前提の大前提の上で、あくまで自分の理想と少しだけずれていた点を2つ。
①桜雅の目の下のクマ
 見るからにシールのようなクマが。壊れてしまった様子を強調したいのだろうけど、目の下のクマなんて無くても気が触れた演技は十分できると思うので、役者を信頼してほしかった。まぁこれは配信だから目立ってしまっただけだとは思います。現場が一番。
②仙太の人物造形
 あそこまでノーテンキなキャラクターにデフォルメする必要があったのか少し疑問。もう少しマイルドに「普通」の少年でもよかったのではないかなと思いましたが、あの時代のああいう少年はああいう喋り方がリアルなのだとしたらすみません。

・おわりに
 正しい鑑賞の仕方ではないかもしれませんが、桜雅の気が触れてしまった時点で自分の中では作品は終わっていました。雅沙子も桜雅も仙太も霧野も西条も葵も、結局誰も幸せになれなかったんだなぁ、と。だから桜雅の最後がどうだったとか、(劇中における)現代の二人がどうなったとか、白袴みたいなのを着た二人の姿にどういう意味があるのかも何も考えていませんし、どうでもよかった。
 考えさせられるというよりは単純に感情を揺さぶられる作品でした。やっぱり舞台はいいなぁ。

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