「僕は僕を好きになる」について

 お疲れさまです。

「僕は僕を好きになる」
・26thシングル表題曲
・センターは山下美月
・作曲は杉山勝彦さん

 信頼の杉山さんではあるけど、メロディ的にはそこまで刺さりませんでした。この曲の問題は歌詞でしょうね。
 主人公はネガティブ全開の乃木坂的な「僕」ではありますが、さすがにちょっと暗すぎるというか、負のイメージをもつ言葉が強すぎて聴いているのがつらくなりますね。しょっぱなから「今一番嫌いな人」、2番には「死にたい理由」、最後のサビには「一番嫌いなのは自分ってこと」。リリースのタイミングもコロナ禍真っ只中、有名人が自ら命を絶つニュースが流れていたりする中でしたし、部分的に切り取ると自責の歌に聞こえるので、世間的な受けもよくなかったと思います。
 あとは、個人的に何があっても逃げきる派なので、最終的に「今の場所受け入れればいい」に着地する歌詞は好きではなかったです。

 センターとそのサイドを務めるのが3期生3人、山下美月・梅澤美波・久保史緒里。勝手なイメージではありますが乃木坂の中でもTheストイックな3人という認識です。この3人を前に立たせてこの歌を歌わせているのが……いろんな言葉を探したんですが、一番しっくりきたのが「グロテスク」です。
 歌詞の内容とMVは直接は関係しませんが、MVを見るとさらにその思いが強くなります。MV撮影が終わって帰宅したと思ったらそれはドラマ撮影で、撮影現場を出て友達と買い物をしていると思ったらそれはモデル撮影で…という現実と虚構の境目がなくなっている構成なのですが、アイドルのプライベートはどこにある?と考えさせられます。
 そしてこのMVを受けて、さらにグロテスクさに拍車をかけるのが、huluで配信されたドキュメンタリー「僕たちは居場所を探して」です。もちろんドキュメンタリーを撮ったら対象が誰であろうと多かれ少なかれ切れ味鋭いものが出来上がるとは思うのですが、この3本は特に興味深い作品でした。

 それぞれ作中の本人の言葉を借りるなら
・山下美月編は「普通の顔ができない」という話
・梅澤美波編は「自分には何もない」という話
・久保史緒里編は「誰にも嫌われたくない」という話
 ちょうど公開されたのぎ動画の久保チャンネル#59で飛鳥さんとこの話をしていました。梅澤・久保編もいろいろ感じることがあったので機会があれば何か書きたいと思っていますが、とりあえずセンターの山下美月編が怖かったので…。

 山下美月編で語られている内容は大枠としては以下のような感じでした。

・プライベートでも自分がアイドルであることを意識している
・公私の区別がついていないし、MVは私にぴったりである
・普通の顔ができない
・家に帰って洗面所で鏡を見ると、口角が上がっていることに気づく
・休業するくらいなら辞めるつもりという気持ちで活動していた
・結果ぶっ倒れたし心も折れた

「僕たちは居場所を探して」山下美月編より

 ちょっとファンとしてもどう受け取ればいいのか困りますね。アイドルを応援することの意味とか、この状況をノーテンキに楽しんでいていいのかとか。そして最も怖いのがドキュメンタリーのラストです。

・スタッフ「本当の山下さんのこと、わかんなかったです」
・山下「わかんないですよねw よく言われますw」

「僕たちは居場所を探して」山下美月編より

 散々インタビューした挙げ句にわからないと言ってしまえるスタッフ(たぶんディレクターさん)も、それに対して笑って肯定するしかない山下さんも。ここの山下さんの笑顔を見ていたら心が痛くなります。本当にグロテスクなドキュメンタリーでした。

山下美月さん

 2年ほど経ち、内面にどのような変化があるかは分かりませんが、傍目には何事も全力でというマインドは変わっていないように見えます。普通に女優一本で歩きだしてもいいキャリアですし、あまり気負いすぎずにマイペースにやってほしいです。船長に指名された件については、期待と信頼の証だとは分かっていますが、飛鳥さんにしては変なプレッシャーのかけ方をするなと思ったりもしました。

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