「マグカップとシンク」について

 久しぶりに文章を書いています。
 終活も終えた今、あとは亡霊がリアルタイムに感じたものを綴ることになります。もうあまり乃木坂46の情報を追っていないけど、楽曲原理主義者として関心がゼロになるまでは楽曲は追いかけていたいと思っています。

「マグカップとシンク」
・33rdシングル「おひとりさま天国」のカップリング
・メンバーは遠藤さくらと賀喜遥香
・作曲はCOMiNUM・TomoLow

 COMiNUMさんという方は初めましてです。

 この曲に関してはまず、タイトルが素晴らしい。
 二つの単語を並べただけなのに、シンクにぽつんと残されたマグカップのイメージから、「一人が出て行って、一人が残っている」というストーリーまでぼんやり見えてくるところ。こういう歌詞をもっと感じたいと思いました。もしかしたら、皿洗いする時間もないくらい忙しい人の歌かもしれないけど、まぁそれでは詩情がないので…。

 デュオなので声の重なりも少なく歌詞もすっと入ってくるし、二人の声質もよいですね。関係性も十分すぎるものがあります。
 これまでのデュオ曲では相方の声をずっと引き立たせてきた遠藤さくらさんですが、今回は引き立てるというほどではないバランス感。でもユニゾンのところはやっぱり賀喜さんの声しか聞こえないかも。声量なんて録り方でどうにでもできると思うけど、しないっていうことは、意図があるということなんだろうな。

 タイトルの次に好きなのが歌い出し1番Aメロ。ここが秀逸。賀喜遥香さんの声。


【歌詞カード】
マグカップ一つ残されてるシンク
殺風景な痛み ふと感じる
君がこの部屋 出て行った夜明け
言いたかったことは空気

【こう聴こえる】
マグカップひとぉつ 残されてるスィンク
殺 風 景 な 痛み ふと 感じ る
君がこの部屋 出てった夜明け
言いたかったことは く う き (ん~ん)


 映像、痛み、時間経過、後悔が感じられる4行。
 こういう歌い方、読み方、ブレスの入れ方って誰が決めるんですか? レコーディングスタジオにいるサウンドプロデューサー?みたいな人が決めるんでしょうか。作曲した人の意図とか、歌う本人の思い・技術とかいろいろあるだろうけど。

 劇的な展開を見せる間奏も結構好きです。

 MVは『新世紀エヴァンゲリオン』のオマージュらしいけど詳しくないので割愛しますが、元ネタを知らない人でもストーリーが理解できる内容なので特に問題ないと思います。もはや歌詞に沿ったストーリー系MVであるというだけで満足できるほどハードルが下がっている説もあります(歌詞が間に合っている)。

 一つだけ気になったのは、本編後の「これからだよ私たち」というセリフですね。恐らく世間的には好評なのだろうと思いますが、わざと乃木坂の今後を背負わせようとする(この二人はさも背負う意志をもっているのだとファンに刷り込みを行う)のが個人的に好きではないです。運営が自ら物語を作りに行くのが好きではない。
 MVの台本の一部でしかない訳ですし、わざわざ「これからの乃木坂は私たちが!」みたいに受け取らず、文字通り「私たちにはまだ伸びしろがある」という意味で捉えるだけで十分だと思います。

 それではおやすみなさい。

遠藤さくらさんのブログより


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