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幸福県で、一筆啓上

 福井県は、幸福度が高い地区だと言われています。これは健康、文化、仕事、生活、教育という基本的な指標で毎年、住民からの直接のアンケートで集計されるそうで、実際に全国学力テストや、平均寿命も日本の中では常に上位に入っているのです。何よりもここに住む人自身が、福井は幸福度が高いということを知っていることが、幸福な街に住んでいるのだという実感を生んでいくのかもしれません。どういうことかと言いますと、「幸せだ」と自分も周りも口にし感じることが、結局は幸福であることにつながるということです。

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 名物だとのことで蕎麦を食べてから永平寺に向かいました。永平寺は、1244年に道元禅師によって座禅修行道場として開かれた寺です。山の傾斜に沿って建てられており、中国唐時代の楼上を持つ山門は、重厚さと荘厳さが重なり合っていました。永平寺には大小七十余りの建物があります。それらをつなぐ廊下は修行僧たちによって磨かれて輝いています。迷路のようにつながる廊下や階段を歩いて行き、高い場所の御堂から見る庭には、木も葉も石もバランスの取れた位置と色を持ち、芸術作品のようだと感じました。

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 近くに一乗谷があると知って寄ってみました。戦国時代に越前を支配した朝倉家の城下町です。美濃(岐阜県)出身の明智光秀が越前に長年住んでいたことからも、戦国時代にあっても平和が長く続き、住みやすい土地であったのかもしれません。この地で光秀は、今でも「あけっつぁま」と呼ばれて親しまれています。(下記の写真は、岐阜の大河ドラマ館にて)

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 そして海を目指して東尋坊に向かいました。こちらでは、緑と波と岩が織り成す自然の芸術の景色が望めました。空は晴天だというのに、荒々しい波が容赦なく岸壁を打ち付けていました。その傍に一筆啓上の案内がありました。

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越前の本多作衛門重次が、長篠の戦いの戦場から留守を預かる妻に、

「一筆啓上、火の用心、お仙泣かすな、馬肥やせ」

という手紙を送りました。この文章は簡素で意味深く、模範的な文章として知られています。家を火事から守り、嫡男である仙千代を案じ、馬の世話をするようにとの家と家族を守る手紙です。現在で言うとこんな感じだろうか。

「一筆啓上、菌に用心、三蜜増やすな、福増やせ」

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 不幸な中にも福があり、福の中にも不幸があると思います。良いことも悪いことも、それ全部を背負っているのが自分の人生です。結局は幸せとは他人との比較ではなく、自分自身がそう思うかどうかだということです。

 そんなことを学んだ福井への旅でした。日本は深い、日本は美しいです。







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