見出し画像

指先問題


(以前別の場所で書いたものを再掲しています)

驚くほど手先が不器用だ。

子供の頃から、ハサミとかナイフとか、あ、最もダメなのはお裁縫の針を手にすると急に脳みそから指先への指令がストップしてるんじゃないかという感じがしてきて全然動かなくなる。指先の神経が死んでいるんじゃないかと不安になる。

でも一応私これでもピアニストなんだよな。あれだけ複雑な動きができるのに何で急に指先への指令がストップするのか本当にわからないけれど、まあそれでも毎日料理はできてるし、お裁縫はもう諦めて他人の力を借りるとか、ちょっとした繕い物くらいは震える指でやっているし、全然生きられるから問題なしっ!

問題だったのは特に中学生の時。美術、家庭科、技術の3教科がどうしてもあまりの不器用さにいくら頑張っても悪い成績になるから、ともかく私の内申点を引っ張りまくり、他の教科をいくら頑張っても普通科の希望の高校に行くのは無理だと判断して、最終的に芸術科の高校にした。もしあれこの3教科に足引っ張られてなかったら普通科行って私の人生変わっていたと思う。

小学生の時も、毎年冬に凧を作って河原に上げに行くのだけど、凧がいくら先生が説明して手伝ってくれたりしてもまともに作れなくて凧揚げ大会には参加するけどそもそも凧が飛ばない。写生大会に行けば無謀にも太陽の温かい光を絵具で表現しようとしてみたり、広い河原にいるのに近くに咲いている花のドアップを描いてしまうとか、毎年時間オーバーになって残りは学校で記憶スケッチになりぐちゃぐちゃになって終わり。唯一先生に褒められたのは、有名な絵をお手本に少しだけアレンジを加えるという授業で、数々の作品がある中私はアンリ・ルソーの何故か髭のおじさんの肖像画をえらく気に入り、その人にタバコを吸わせ真っ赤に燃える太陽をバックに加えてやたらにぎらついた一品に仕上げた。その年にぎらついた感じが自分の中で流行っていたようで、ジャングルに潜む不気味だがちょっとマンガチックな人食い花を描いてちょっと先生をドン引きさせたが、両親はあんまり気にしてる風ではなかった。家庭科で作ったリュックもひどい出来でそれが展覧会の会場に並んでいたけれど、恥ずかしかったとかそう言う事は親から言われなかったのであんまり気にしてなかった。

祖母も母も叔母も、そして一番仲のいい従妹もみんな手先が器用でお裁縫が上手だ。そういや子供の頃はかなり祖母が作った服を着ていた。これだけ器用な人がいると、全然ダメでも誰かに頼めばいっかとなるので結局のところあんまり困らずにここまで来てしまった。実は今も、自分に必要なものは町の中国人の縫子さんに頼むし、義妹2人はクリエイティブでお裁縫も上手だし、子供とぱぱっとかわいいもの作ったりするので、凄い凄い!とか言って自分の不器用さを棚に上げて拍手している。

美しい見た目の料理は包丁の使い方が悪いからできないけれど、それでも毎日のご飯には全然問題ないし、お客さんがいてあんまり私の盛り付けが微妙だとさっと夫がそれなりに直してくれるのでこれも無問題。

学校で5教科以外の教科が習えるのって、日本だと当たり前だけどイタリアに来たら当たり前じゃなかったので驚いた。でも、5教科以外の科目が苦手だから内申点が落ちて行きたい高校に行けないっていうのはちょっと変わってもいい気がするのだけど・・・。それってもう努力でどうにかならない領域があると思うんだが。中学生の時何回か本当に困って、技術の課題を後に工業高校行った子に頼むから手伝って欲しいと言うと、向こうは向こうで音楽の授業がさっぱりわからないし楽譜も読めないから教えてくれるなら手伝うと言ってくれて、何とか課題を終わらせた事があった。そうだよね、楽典とかも私は子供の頃から知ってるから何とも思わなかったけれど、全く楽譜も読めない人にとっては週1,2の音楽の授業で説明されたことなんて意味不明だよなあ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?