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晩秋のかき氷【エッセイ】

仕事帰り、震えながらかき氷を食べる。

ちっちゃなたい焼き店の外のベンチで。

もう10月も終わり。そら寒いわな。

けどねえ、その月しかないフレーバーがあるのよ。

シロップは店主手作り。その時時の果物で作るから。コンプリートしたいから、寒くても食べる。

今日はなしのかき氷。年内これが最後かなあ。

梨は甘く煮てある。

誰がいればまあ誘うときもあるけど、私はかき氷食べたいだけだから、基本は一人で入る。

仕事は6時前に終わるから、もはや外は真っ暗だ。

店主が見かねて温かいお茶を出してくれた。

その心遣いが嬉しい。

また来年の4月までお預けかぁ。

名残惜しいけど、寒いから急いで食べる。

3月は何味が出るだろう。今度聞いておこう。

たいやきや玄米団子もやってるから、冬の間はそれを食べに来よう。そして春のかき氷のラインナップを聞いて、5ヶ月楽しみにするのだ。

晩秋というのに、かき氷のことを考えると早く春が来てほしい。

仕事後のホッとする一息。

こんな近くやけど患者さん出られへんのよなあ。

ふと虚しくわびしくなる。

りんごくらい買いに連れてってあげればよかったな。

看護師といえど人間だもの。合う人合わない人いる。

りんごくらいね。好きだったからね。

家族はあっさりしてたなあ。まあ年だったもんね。

かき氷を食べながら心の整理しながら。

かき氷は美味しいけど口実かもしれない。

家にまっすぐ帰るのは苦しい時もあるから。

あきはいかんねえ。寂しさが募るなあ。

でも、かき氷はほんとにおいしいんだ。

神様、私は誰かのために生きられてますか。

そんな必要なんてない?

かき氷は、もはや昔話。

今の私は這いつくばってるだけ。

自分がいなくても世界なんて回ってくのよ。怖いね。気づきたくなかったけど。

居場所必死に見出そうとしてるけど、必要ないのかな。

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