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無題【エッセイ】

赤信号で、アクセルを踏み込みたい衝動に駆られる。
ぼんやりしているのか。破滅願望なのか。
心の何処かに怒りでもあるのだろうか。
表向きの私は至って平静である。
まさかそんなこと考えているなど、誰が見ても思うまい。

今週は疲れたなあと、思う。
感情労働は思いの外消耗するものだ。

四十年間住み続けたこの街。
ポプラ並木が美しい。
このカーブを曲がるとき、まるでゾーンに入ったかのような気分になる。
周りの景色の流れを妙にゆっくりに感じるのだ。

とうにも身辺がごちゃごちゃして、昨日少し部屋の整理をした。
そして今日は髪を切った。
アッシュ系を入れるつもりで行ったが、これから一ヶ月が灰のような気分になりそうで、ピンクを入れてきた。と言っても少し。
徐々に明るくしていこう。周りに気づかれない程度に少しずつ。
仕事の打ち合わせさえなければ、一気に明るいピンクにしていたのだが。仕事用にウィッグでも買っておこうか。

今週は体調は回復してきたが、煩雑なことが多かった。
一件依頼があったので、ほんの少し収入はあったが。二千円か。ワイン4本に消えるだろう。

サークルに体験者が来たのだが、元々空手目的だったのに、私がいたがために、ナンパ目的に変わってしまったようだ。そうやって考えると、私がいなければ彼は空手を続けたのだろうかと思う。ついつい相談に乗り、私の友人はデイケアで知り合った人と結婚したよ、とかアドバイスしていくうちに、彼の生い立ちや恋愛遍歴なども聞いていた。
彼にとってはセックスは、簡単なものらしい。私は知らない人とそんなことは気持ち悪くてできないといった。
生い立ちを聞けば、今障害年金を受給しているのもさもありなんという感じだった。就労支援施設がどういったやり方で利用者を囲い込んでいるのかもわかり、ビジネスとしてはためになった。はっきり言ってしまうと、くそったれとしか思えない吐き気のするようなやり方だったけれど。これまで視察に行ったところは、かなりまともな営業をしていたことがわかった。しかし、あんなやり方でも使えるのなら、真っ当なやり方では勝ち目もないし考えなくてはと思った。

今私は一人、無味乾燥に昼ごはんを食べている。美味しいご飯のはずなのに。私のために死んでくれた生き物に感謝することもできず、ただ口へ運び咀嚼している。湯呑を取りに行くのもめんどくさく、カップスープを作ったカップにお茶をついで飲んでいる。夜間のお茶を全部そこへ注いでしまって新たに沸かそうかと思ったが、少し入らない。

物理的には何不自由ない生活。けれどこの生活がいつまで続くのだろうと思うとぞっとする。


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