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待合室にて【エッセイ】

病院の待合室で採血の結果を待つ。鞄に入れたままにしていた本を、読みふけりながら。

ふと思う。今の自分はなんて幸せなんだろうと。お金の心配も感じず、月曜日の朝から仕事にどうしても行かなくてはならないと短い時間を貪ることもなく、メルカリで欲しい商品が売れてしまうのではないかとハラハラすることもなく、ただのんびりと本を読んでいる。

この話、あと何ページ続くんだろう。ぱらぱらと本をめくり、カバーをしおり代わりに、折り込み、閉じる。

久しくこんな何にも急かされない時間を過ごさなかった。時と自分の感覚が等しく流れていると感じた。

何か足りないと思っていれば焦りが沸くのだと思った。

何もどうしてもということはないじゃないか、嫌なら辞めればいい。そう考えるととても楽になる。はみ出さないように生きていく必要なんてないじゃないか。まだまだ私の中には「何者かでありたい」という気持ちが残っていたようだ。

帰りにタリーズでコーヒーでも飲んで帰ろう。



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