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【すんだい新学期】遅れてくる開講日までの準備(その4)

※駿台高卒コース・朝霞担当クラスの生徒さん向けの記事です。開講日の遅くなる関東で受講予定の生徒さんは,参考にして自学自習をしてください。

 今回は「なぜ問題を解くのか?」について考えます。

★問題を解くことは勉強ではない

 かなり以前「予備校で生物をはじめて選択するんですが,とりあえずどの問題集を解いたらいいですか?」という突拍子もない質問を受けたことがあります。教科書はないの?と聞いたら,「ないです」という返答。
 いや,まったく驚きました。知識の入力なしに問題集を解こうとする。どうしてそういう暴挙に出るのだろう💢 いや,これはこの生徒が悪いと言うより,これまで指導してきた人間たちがまともではなかったのだな,ということにして心の平静を保ちました。

 あれこれ思い巡らせ,なんでそういうことになるのかと考えました。あぁ,この子はひたすら問題ばかり解かされてきたのだろう,と。前回の記事に書きましたが,小学校・中学校の薄っぺらい教科書はササッと済まして,次から次への問題演習。ひたすら与えられる問題を解く苦悶式(仮称)。学校ではワーク(簡単な問題集),塾に行けば問題解説と小テストの反復。経験量でほぼ入試は乗り越えられるものですから,演習漬けになるわけです。

 「勉強=問題を解く」の図式のできあがり。

★では,なぜ問題を解くのだろうか

 君たちのまわりに「天才」はいないだろうか?

 「あいつ,大して勉強してる感じがないのに,成績いいよな」という人。高校ではボーッとしてるけど,予備校行ってるからデキるという人は除外してください。そもそも遺伝的に出来がいい人間というのも確率的にはいるでしょうから,そういう人間に生まれたら勉強なんか楽なのにな~と思った人は来世に期待してください。来世,ショウジョウバエかもしれませんけど。

 何もしなくて成績のいい人はいません。話を聞いてみると,たいていそういう人は「自問自答」できるようです。教科書を読んで疑問が出る → 今までの理解してきた知識で解決する or 調べる or 質問する or 議論する → 理解できた,という流れです。この繰り返しが自分でできるんですね。

 そして,入試問題で,自分が疑問に思ったことが問われる。

 ここが肝心なんですよ。「生物では(高校で使っている)問題集に載ってない問題が出題される」ことがしばしばです。なぜ,そのような問題が出題されるのでしょう。答えは明快です。

 出題者が出したかったから。(13字)

 「問題集に載ってない問題を出すなんてマニアックな大学だ!」と思う人は,その大学を受験しなくていいです。行ってもつまらないですし,大学だっておまえさんみたいなつまんない人間に来てもらっても困ります。

 「日々学習する中で,この辺を疑問に思うだろうなあ」,「あぁー,ちょっとここの項目,一歩進んで理解してるかなぁ」ということを問いたいんですね。自分(出題者)が高校生や大学で学び始めたときの疑問を君(受験生)もアプローチしているか,そんな思いで出題しているな,という問題をしばしば見かけます。
 「なんだろ,これ」と疑問に思うことを解決してきた生徒を入学させると,大学の先生方も楽しいんじゃないですか,話が合いそうだし。探究心旺盛で,課題に積極的に取り組んでくれそうだし。与えられた問題集を3回繰り返し解いたくらいで「マニアック大学!」と文句言うヤツよりもはるかに魅力的ですよね。

 前述の天才くんの話。彼は頭の中で課題を提起し,生命現象の理解に努めている。僕らは自分がやらないことを正当化するために「天才」という言葉をしばしば使います。「あいつは天才だからな(オレはそんな努力しないけどな)」(「できない」でなく「しない」ね)ですよ。

 さて。「天才」ではない僕らはどうしたらよいのでしょうか。

★問題に問いかけてもらう

 そろそろ本題です。

 「天才」ではない僕らは,自問自答がうまくできません。教科書を一通り読んだらなんとなくわかったんだけど,本当にわかっているかどうかには疑問の塊です。

 そこで問題の出番です。何がわかっていないかを探し出す手段,これが問題を解くことです。これに尽きます。自ら疑問を探し出すことが難しいので,問題に問いかけてもらうわけです。そしてこの疑問をきっかけにして,関連する生命現象の理解に努めます。その生命現象がきちんと理解されたならば,その分野に関するいかなる問題も解答できるはずなんです。

 入試対策においては,よく手段の目的化がおこります。問題を解くことはわからないことを明らかにする手段であって,問題を解くことが目的になってはいけません。大して問題文も読まずに,設問の解答だけを追い求め,○つけておしまい。こんな感じだから,問題集を3回も解くことができるんですよ。雑すぎ。そして3回も解いたのに,まだ解けない問題がある。そんなインチキやり続けていて,よくもまぁ疑問をもたないよな,と。ああ,そもそも自問自答ができないんでしたね(悪意)。

 問題を解くことをきっかけにして,生命現象の理解を図る。つまり,問題を解いて○をつけることは勉強ではなく,わかってたことの単なる確認作業です。ここに多くの時間を割くのはもったいない。○がつかなかった課題をいかに理解するか,これが勉強です。したがって,確認作業に費やす時間を勉強時間としても意義は薄く,生命現象を理解する時間が意味のある時間と認識する必要があります。

 授業の内容を振り返り,どのような説明がなされていたか。先生方が大いに工夫して解説してくれている授業ですから,まずは授業内容を振り返りましょう。そして,教科書を読んでみましょう。案外教科書の内容は膨大ですから,疑問点はきちんと調べるなどして,整理します。わからないことは質問しましょう。ですから,勉強には時間がかかります。早くから自分の課題に取り組んでほしいのは,理解することには時間がかかるからです。しかし,きちんと理解したことは忘れません。理解していないから忘れるんです。理解を積み上げていくと自信がつきます。

★何をきっかけにするか

 「問題集は何がオススメですか?」という質問がありますが,駿台生の諸君は,駿台のテキスト一択です。テキストの演習問題・補強問題・確認問題など課題が山のようにあります。「ほかに何か問題集は…」という声もありますが,いりません。あれば高校の教科傍用問題集でいいです。セミナー生物でもリードαでもなんでもいいです。何ももってなければ,理系標準問題集・生物(駿台文庫)が手許にあってもいいかもしれません。しかし,テキスト以外の問題集は手をつけることができないくらい忙しいですよ。予備校生活。

 テキスト以外には,センター試験の過去問集(予想問題とかじゃないやつ),志望校の過去問集(いわゆる赤本,青本)くらいあればよいでしょう。

★学ぶこと

 大学において知識を授ける場は,授業と言わず講義といいます。

 「大学の授業はわかりにくい」という声があります。高校や予備校までのすべてがわかりやすいようにお膳立てした授業ではありません。講義された内容をきっかけに,指定された書籍を読み,わからないことは図書館で数冊の類書と格闘する,教官や友人と議論する。これが大学の学びであって,問題集もありませんし,そもそも講義中に問題は解きません。

 大学入試は大学に入学するための手段であって,目的ではありません。生物系への進学を目指す人ならば,生命現象の理解がきちんとできていることの結果が,入試問題が解けるということです。目の前の入試問題を解くことだけに躍起になっている人は,春の息吹とともにそろそろ目を覚ましてくださいね。

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