雨の鳥取・池島キャンプ(2/9)
2022年9月27日
雨が降っている。
雨が降ることは天気予報を前もって見て知っていたので(えらい!)、今日は遠くに出かけるのはやめて、鳥取市内でぼさっと過ごすことにしていた。
レインウェアを着込んで出発する。たくさんの積載をして濡れた路面を走るのは初めてだ。滑ってコケたらおしまい。緊張する。
キャンプ場のチェックインは11時。今は9時。少し時間を潰す。
北陸地方民なので、曇天が好きだ。
平日・朝・雨天だというのに、傘を差した人がちらほらいる。こんなかっこいいところがあったら、ちょっとしたお散歩コースにくるよなあ。
いちばん鳥取砂丘らしいポイントは、徒歩で往復2時間かかるらしいので、そんな体力も気力もない私はひたすら近場をうろうろする。雨に濡れたくなくって、フルフェイスのヘルメットを被ってうろうろする黒尽くめ。不時着した宇宙船のデブリ清掃員、簡単に言えば不審者だ。
だだっ広い砂漠ではもちろん迷子になる。方向というものが苦手なのだ。
雨が強くなってきた。キャンプ場に向かう。
このキャンプ場は無料で利用できる代わりにすっごく長い橋を徒歩で渡らなければならない。それはそれはなっがい橋を、カートを引いて徒歩で歩く。土砂降り。
身体中ずぶ濡れ。辛い。なにをしているんだろう。
やっとこせ到着したキャンプ場には大きめの東屋があって、おじいちゃんたちが談笑していた。
東屋、あるんだ。雨天時には絶対必要でしょ!と息巻いて持ってきたタープとポールが無駄な積載物と化した瞬間であった。前回のキャンプで下した判断が間違っていないこと、すなわち今回のキャンプで下した判断が完全に間違っていたことが証明された瞬間であった。
完全に不審者のなりでコソコソと設営を試みようとしたら、気の良さそうなおじいちゃんたちがニコニコと話しかけてくれた。「この雨の中キャンプするわけないよね?え?福井から来たの?ええ、大丈夫……?」と引かせてしまった。
「ごっついことすんなあ」って笑いながら去っていった。「ごっつい」という私の地方の方言にはない語彙。良い。
おじいちゃんたちが去った東屋でいそいそと設営をはじめる。東屋の中でテントを組み立てたあと、広場に持っていってペグ打ちをする。この戦法いいね。
事前に修復したと思っていた長靴は、全然修理が足りてなくて、靴下がぐずぐずになっている。古着屋で買ったノースフェイスのゴアテックスは、鳥取砂丘の時点でしみしみだ。近所のホームセンターで買った2000円くらいのレインパンツは言わずもがな。明らかに装備が不足している。レベル5で、中盤ダンジョンに来てしまった。
文句を言っていてもしょうがない。
食料を調達して、ガソリンを入れて、コーヒー豆を買いに行こう。
本当は行きたい書店と美術館があったのだが、こんなしみしみの体で本屋さんや美術館の敷居を跨げるわけがない。服も顔もドロドロのテカテカだ。今日は雨の音を聞きながらゆっくり本でも読もう。
雨のなか、「吉岡温泉」という素敵な温泉街をドライブした。
ロースタリー目的でたまたま訪れた温泉街だが、寂れた雰囲気と雨降る景観がとてもよくて、すっかり気に入った。
小道が非常に入り組んでいて、コーヒーを焙煎するいい匂いはすれどその場所に辿り着けず、という素敵な体験をした。
久しぶりのご飯。持ってきた米・レトルトカレーで質素に済ます。ボンカレーはね、どう作ってもうまいのだ。
誰もいない孤島、頼りない桟橋。雨上がりの夜、池(!ここは、日本でいちばん大きい「池」に浮く島らしいのだ。おじいちゃんからは「昔は古墳だった」と聞いた、真偽のほどはともかく)の向こうにゆらめく街灯のあたりから4気筒めいたエンジンの音がする。
疲れた。テントに入って数時間で、テントが雨音でいっぱいになった。どんどん強くなる。また降るの?もう上がると思ったんだけど……。不安で今日も眠れない。眠れない夜は長い。こんなに眠れなくて大丈夫だろうか、明日は結構走るのだけど。