渋々非正規雇用2ヶ月め日記
皆さん、こんにちは。お元気ですか。私のほうはまだ労働をなんとかがんばっています。
非正規のお給料がどんぐりで一人暮らしなので、とにかくお金がない。たくさん働いている気がするけど、実はそうでもない。しんどいつらいとピーピー喚いているけど、1年7ヶ月費やしたニート生活との落差がすごくて参っているだけだ。
お金がないので、仕事がある日は1日1食で生活している。炊いて冷凍しておいた雑穀ごはんに一袋あたり90円のレトルトカレー、ゆで卵、1週間ぶん仕込んだ大根の漬物やらほうれん草のお浸しなんかをトッピングして食べる。人参のラペも美味しい。自家製マスタードを和えると最高だ。
近所に野菜が安くておいしいスーパーがある。ありがたいことだ。旬の野菜も定番野菜も安価で手に入る。人参4本78円、春キャベツひと玉130円、新玉ねぎ6個110円、エトセトラ。すばらしい。お野菜パライソ。
毎日毎日カレーばかりで、飽和状態から来る物足りなさに抗おうとマヨネーズをかけたら、ドバカの味になって面白かった。カレーって、マヨネーズじゃないんだな。
当然こんな食事を毎日続けていたら反動が来る。マックやモスやケンタッキーをドカ食い気絶して、次の朝包装を片付けながら罪悪感に盲ることになる(メシだけに)。それくらい分かっている。っていうか、うどん極貧生活をしている最中に、何回かやった。ああいう朝は、身体が重く、脳みそがうまく働かず、本当につらい。
だから、一袋あたり90円のレトルトハヤシも常備している。交互に食べることで飽きを紛らわせる作戦だ。かしこい。先見の目が、ある。私は今後、人生を賭けて、カレーとハヤシを交互にいかせていただく。
いつかの晩、私は暗い部屋の中でひとり生活のすべてが嫌になって、ファミマで冷食の焼きそばを買いに走るしか能のない身体になってしまった。焼きそば、美味い。
焼きそば、自炊の選択肢としていいかもしれない。キャベツを切って冷凍して、豚バラの冷凍パックと一緒にストックしておこうか。飽きたらオムそばとかにしてもいいし。そうするととんぺい焼なんかも作れるな。お好みソースを買う必要がある。冷蔵庫及び冷凍庫がパンパンだ。一人暮らしって、整頓・取捨選択の頭脳が必要になるな。今まで使ってこなかった脳みその領域だ。
パスタもよく作るのだけどIH一口だと何かと勝手が悪い。ワンパンパスタは楽だけど、あんまり美味しく作れない。リュウジが「カルボナーラはワンパンのがうまい」って言ってたけど、絶対そんなことない。私のパスタの作り方が下手なだけか。『女たちよ!』で、「パスタはたっぷりのお湯で湯がかなきゃダメである」という文節を見た大昔から、そういう宗教に入信しているだけかもしれない。だが、宗教は根本的な心の支えだ。おいそれと鞍替えはできない。
キッシュ焼きたい。いちおうこの電子レンジにはオーブン機能もついているから、さてやろうと思い立てばまあ、できないことはない。キッシュが食べたいな、キッシュってうまいから。スタバで働いていたときはキッシュばかり食べていた。あれが一番うまい。自分で作りたい、あれを。ほうれん草とかベーコンとか、キノコとかたっぷり入れちゃってさ。うまそうだね。
型?なんか、生地焼くときの石?なんそれ?別にそれくらい買う金はある(めちゃくちゃ買い渋るけど)。でもこの狭い1Kのどこに収納するというのだろう。とにかく収納スペースが無い。調理器具や食器が溢れかえっている。冷蔵庫の上に電子レンジ置いて、その上に炊飯器を置いているし。踏み台がないとご飯よそえないってかなりの欠陥だ。欠陥賃貸に住んでいます。
仕事終わりにホイップが飲みたくなることがままあり、このままシュークリーム経済圏を潤し続けるのは癪なので、ブラウンのホイッパー・アタッチメントを買った。今までバターチキンカレーを作るときだけに引っ張り出されてきたブレンダーに、新たな役割が与えられた。
早速生クリームを買ってきてパックの1/4程泡立てた。はじめの一口ふた口は美味しかったのだけど、生クリームって、そのまま食べていても、飽きますね。自家製カスタードクリームでも作って混ぜてやろうか。それともなにか、ディップするモノが必要だろうか。
やっぱりココアとか作ってフロートするのが一番おいしくホイップを摂取できて良いかもしれない、結論としては。
ホイップおいしい。ストレスが霧散していく。あまり根源的な解決ではないが、こうやってごまかし続けて、生活を続けていくものらしいのだ、人間は。
節約するばかりじゃなくって、たまには趣味のスパイスカレーも作りたい。クラフトビールやコーヒーといい、金のかかる趣味ばかりやっている気がする。
職場でコーヒーをドリップしていると、「良いコーヒー豆、高くないですか」とよく言われる。高いと思う。でもメシを抜いて貯金を削りコーヒーを飲んでいると言っても「へえ〜……大変だね……」って妙な空気にさせてしまうから、ヘラヘラしながら「他に趣味がないので」と言う。嘘をついてしまった。誠実さに欠ける。人間としゃべるのは難しい。「へえ〜……」って言われると、しまった!間違えた!と落ち込む。
「自分は味の違いがよくわからない」という人たち。コーヒー飲むのが趣味です、と自己紹介すると、かなりの頻度でこの返答がある。
カッピングを生業にするバリスタ以外は「うまい」とか「好きだ」とか、そういう感想で楽しめばいいはずなのに。妙にスノッブな雰囲気がつきまとっているのだろう、コーヒーには。
実は私も全然わかっていない、味の違いなんか。味の違いがわからないなら、口をつぐむべき趣味みたいに捉えられている。全然そんなことはなくて、エチオピアのコーヒー・セレモニーみたいに、共同体をつなぐビバレッジとして、ただあなたと一緒に飲みたい、それだけだ。
それでも味の差異を理解したいという人に対しては、2点、持論を述べさせてほしい。
だいいちに、コーヒーには、ストーリーやヒストリーなどの「情報」によって、脳で「味を拾う」作業が必要だと私は思う。
たとえば、水洗式・スマトラ式・乾燥式・アナエロなどのニューウェーブ、好気性/嫌気性発酵がどうたらこうたらといった、加工法の情報。それから、産地のテロワール、産地の歴史、産地の文化、産地のコーヒー生産者と社会のあり方。とうぜん、抽出器具やロースターの哲学も大事だ。そして、そのロースターがある街が醸造する雰囲気も。それから今まさに、コーヒーを飲もうとしているこの状況。あなたの私に対する評価、私のあなたに対する評価。さまざまな情報の有無が、この舌が拾う味を変える。コーヒーとは、知識を飲むものなのだ。どこか有名な漫画で聞いたような台詞だが。
それから、2種類以上のコーヒーを同時に飲んで、比較検討をする飲み方を推奨する。これをやると「味の違いがわからない」なんて言えなくなる。だって違うもん。
デイリーポータルZで「同じものを食べて食レポする」っていう最高の企画をやっていた。
この記事が成立するように、最悪、同じコーヒーを比較テイスティングしたって味に違いが出ると思う。2種類以上のものが横に並んだ場合、私たちは、比較せずにはいられない。
オタクの早口になってしまった。
ともかく、生活は変えられても生活の質は落とせないというのは、これらをきっぱり諦めることはできない、ということだ、私にとって。毎日レトルトカレーないしレトルトハヤシを飲むことになろうとも、これらの「スーコーな」趣味を辞めることはできない。
まったく俗物らしい、つまんない人間だ。はやく無になりたい。目を閉じ、合掌して呼吸をし、全てがここに足りていると言いたい。あと何十年かかるだろうか。
週に2回シフトインしているクラフトビール醸造所では、福利厚生として、タップから出るビールが飲み放題だ。本ブルワリーで作っているビールだけでなく、バッチ替わりのゲストビールも飲み放題。京都醸造や奈良醸造、カマド・ブリューイングに玉村本店をたらふく飲める、ありがたい。この福利厚生に甘えて、興味のあるビール以外を買うのを辞めようとは思う。分かりやすく言うと、帰り道に惰性で買う淡麗グリーンラベルやスパドラを、辞めなさいよと。言っています。労働のストレスを酒で晴らすな。
お酒を飲まずにどうやって現実逃避をしたらいいかわからず、現実とがっぷり四つで向かい続けている。気がおかしくなりそうだ。自己嫌悪によって駆動する死への衝動と、そんなことを成し遂げる勇気のない自己への嫌悪、悪循環中。飲酒の逃避をやめ続けていたら、いずれ慣れるだろうか。
とはいえマッチポンプなのだ、確実に。アルコールをオーバー・ドーズしたときの薄白い靄霞の状態が、快いものだとは到底思えない。
私の土曜日は、世間一般で言う月曜日。土曜日から、憂鬱な1週間の始まる。5連勤ないし6連勤地獄の火蓋が、切って落とされる。こんなに働くつもりじゃなかったのにな。
休日ダイヤの電車とキャリー・ケースで混み合う主要駅を歩く皆さんの幸せそうな顔、人間をナメたような中吊り・サイネージ広告に内心悪態をつく。やわらかな心が死に、淀んだカルマが溜まっていく、気がする。こういうのが嫌なら、お賃金どんぐり3つのアルバイトを辞めて、土日休みで年間休日数120日以上の正社員職を探したらいい。
正社員で働きたくないね。社会と契りたくない。カイシャとかいうところの資本の発展に責任を持ちたくない。
いま職場のラジオで「大根の葉っぱを醤油で炒めて白ごはんと混ぜて菜飯を作るとうまい」と流れてきた。早速帰ったらやってみよう。大根の葉っぱと暮らしています。このつまらない部屋にイキモノの気配が欲しい。切花。大根の葉。いずれ枯れゆくものたち。根っこを持ったイキモノに、そばにいてほしい。アカハライモリでも捕まえてこようかしら。
仕事中気を抜くとぼけっとラジオに集中しちゃっている。こんなつまんないラジオでも心慰みになるのだ。そのぐらい仕事というのはつまらない。おかげで、今日も写真加工のノルマ枚数をこなせなかった。そろそろクビを切られるんじゃないかとか、お前ええ加減にせえよと怒られが発生するんじゃないかとか過剰に怯えている。絶対そんなことないのに。可哀想。
労働のイヤなところって、つまるところココなのかもしれない。資本の発展というアイドルに五体投地し、一心不乱に祈り、その結果として富の不平等に加担することも勿論イヤなのだけど、私は、大人のひとに怒られるのが何よりもイヤだ。もういい大人なのにね。情けないぜ。
ラジオからスピッツの『春の歌』が流れてきて泣いちゃった。マスクと眼鏡をしていて良かった。
「今日は調子がいいので、多少何してんだろでもガマンしてお金を稼ぐぞい」という気分のときと、「‘何’をしているんだ?一体?1円も貰えなくても構わないから、自分の思想に伴ったことに時間を注ぐ、それが人生では?」という気分のときとの、労働態度・ご機嫌に乖離がありすぎる。
お金……お金がない……ダイソンの掃除機、Macのlaptopが必要だ。オメガのGenève・dynamicもほしい。毎日の労働に酷使しすぎてボトム類が全滅。靴も内側踵部分が破れた。新しくて丈夫なやつを買わなくてはいけない。あと、オレンジ色のスウェットがほしい。薄いブルーのウォッシュ・ジーンズと合わせて、小粋にペニーで移動したい。
どうもお友達の皆さんと違って「足るを知る」ということが不得意のようだ。
今日もまた8時53分の新快速で職場へ向かい、19時15分の特別快速で自宅に帰る。正気ではいられないから、精神を麻痺させている。ささいなことで笑ったり悲しくなったりしている。
精神が麻痺した自分というのはみずぼらしく、なさけない。なにかをしなくてはいけない……。
友だちが本を出した。「締め切りがあれば本は出るんですよ」という言葉が刺さった、抜けなくなった。やりたいことがあるのなら、締め切りを設定しなくてはならない。
今の私は時間があっても何かをしない気がする。肉体を突き動かす、あの無尽の元気がやってこない。どうしたものか。
もうだめだ。4月の半ばに旅に出よう。関西のほうに予定があるので、ここらへんで連休を取って、行きたい場所を巡ろうと思う。
名古屋駅のサイネージ広告が、代々木ゼミナールの提供するものに切り替わっていた。パッションカラーのベタ塗りに、知らないおじさんの写真が躍動感のあるかんじでトリミングされていて、アイドルみたいな白抜きでフルネームが記載してある。それらが、おじさん十数人ぶん。それぞれのおじさんでテーマ・カラーが違っていて、カラフルに駅構内を彩っている。
よくわからない感情だけど、うれしい。妹尾さん、萩野さん。へ〜そうですか。
広告って全部こういうのでいい、知らないおじさんの写真とフルネームがポップに掲示されているようなものばかりでいい。
たぶん意図と反して、おもしろくなってしまっている。この雰囲気が意図したものであったなら完全降伏、あっぱれだ。
職場で流れるヌルいFM、今日はドラえもん特集。ドラえもん人気キャラクターランキングの9位を当てるというコーナーをやっているんだけど、パーソナリティが一生「キー坊」を擦っていてとてもよかった。いいよね、キー坊。うれしい。でも、キー坊が9位なわけない。答えはジャイアンのママだった。マジで?それもなんなの?
職場の飲み会によく誘われる。それ自体はまあ、義務の範疇を出ず、くだらない話に愛想笑いをしている。上司の悪口はおもしろいけど、まあ、それはそれで。
飲み会でお喋りしたのをきっかけに、クール系金髪先輩(歳下)が「白﨑さんと喋るのは楽しいので、エントランスまで一緒に帰りましょう」と声かけしてくれるようになった。平沢進、小林賢太郎、ひとり旅の趣味が合い、意気投合できたのがよかったのだろう。人に懐かれると、うれしい。
名古屋駅の乗り換えで地下道の階段を歩いていると、前を歩く人のトートバッグと目が合う。紫色のナイロンに「BYOUDOIN」と書かれていた。平等院。若そうなのに渋い趣味だ。修学旅行かなんかで購入したのだろうか。連れ合いのほうを横目で見ると、目に眩しい黄色のピカチュウが飛び込んできた。ポケモンセンターのショッパーだ。ということは、つまり、この寺院トートバッグのシニフィエは、対戦ミームとしての「平等院鳳凰堂」だな。ふうん。へー。わかんない、わかんないけどこういう時にすごくうれしくなる。
社会ってたまに、うれしいことがあっておもしろい。こういうときに、私は、無人島にひとりきりでなくて良かったと思う。
なんだかんだでご機嫌になるイベントというのは日常に溢れている。だからがんばるなんて言えないけど、今月も、のらりくらりとやりすごす。月末は広島市と尾道に行くぞ。
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