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詩公開(KSJ2024北海道大会&仮想地方大会に向けたオープンマイクに向けて)

こんばんは。
いよいよ7月中旬にKSJ2024北海道大会、8月下旬にKSJ2024仮想地方大会が開催され、私のKSJシーズンが始まります。
それに向けて、今週金曜日にオープンマイクがツイキャスで開催され、そちらに出場することになりました。

今回のオープンマイクで披露するであろう詩を全文公開します。
どれも恐らく、北海道大会か仮想地方大会のどちらか、あるいは両方で披露することになるであろうと思われます。

まず一つ目は、私が2014年に書いた同名小説によせた作品です。
ダイジェスト版と言ってもよい。

私のお気に入りの孤独
朝伊ミチル

だれにも言えない孤独があった
だれとも話さない孤独があった
昼も夜もなくインターネットを観て過ごした永く暗い夜の孤独
朝も夕もなく映画や本を観て過ごしたルーティンの孤独
この孤独が一生続くと思った
死にたいとか苦しいとも感じなかった
ただ、孤独があった ただ、孤独でいたかった
孤独でいることしかできなかった
ただ、命をつないでいた ただ、貪るように作品を消費した
何になるとか目指すとか未来とか なんにもなくて
だれかに認めてもらいたいとか見つけてもらいたいとかそういうのもなく
社会のどこともほぼつながらないままで
ただ、息をしていた ただ、生きながらえていた
生きることに燃え尽きて 抜け殻になっていた
それがあの頃の全てだった

それから十年近くが経過した
今はもうあの頃には戻れないし 戻ろうとも思わないけど
いつかまたあの頃に逆戻りする日が来るような気もしてる
怖くてたまらないけど
転んだら全てを引き受ける 全て失ったあの頃に戻る
全て失ってただ生きるだけの日々があったから そう思える
あの孤独や絶望が私を深く救ってくれた

ロックバンドを脱退して六年間ドラッグと鬱と孤独にまみれて
隠遁生活を送っていた偉大なロックスターが 私に教えてくれた
医学的な「死」を経験しても ドラッグで歯をほとんど失っても
どれだけ 打ちのめされても
そこから 始まる人生があることを
躓いたらそこで終わりじゃないことを
躓いた人間だけが知っている世界があることを


二つ目の作品は、ロックバンド BOOM BOOM SATELITTES(ブンブンサテライツ)と後のバンドTHE SPELLBOUND(スペルバウンド)のお三方によせた詩です。「ツヅル」掲載。

ロックスター A HUNDRED SUNS Version
朝伊ミチル

2008年2月3日 札幌 あなたが唄った
魂の片割れ 奏でた
あなたの澄んだハイトーンの歌声が 札幌のライブハウスに広がった
片割れは厳しい表情とタイトな所作で ベースを弾き鍵盤を弾いた
あなたは機関銃のように歌や歌詞を正確に叩きつけた
まるで機械のようなパフォーマーだと思ったけれど
あなたが世間のバンドのイメージと全然違って
本当はメチャクチャでグチャグチャで
飲んだくれで少しもちゃんとしてなくて
天衣無縫で そんな魅力のある人だったと 観客の誰が気づいただろう
ビッグ・ビートと純文学を激しくぶっつけたみたいに
ダンスフロアの真ん中であなたは狂ったように皆の前で叫び続けた
なぜ生きるか、なぜ生まれてきたかを問い続けた
強靭なビートにのせてオロオロアルキ
人を踊らせながら 慟哭し 助けを乞い 命を乞い
気が付くと人の命を手助けするような音楽に向かっていった
そんな音楽 そんなロックスター 今までもこれからも存在し得ない
魂の片割れは そんなグチャグチャなあなたに振り回されながら
魅力を感じて あなたを時に厳しい言動で引っ張って
あなたの生き様にインスパイアされた激しい音楽をつくるようになった
二人で唯一無二の 無数の音楽を つくって世に出した
やがてあなたは長く患った病との闘いを終えて
岩手の宙(そら)に 魂をかえした

2023年9月17日 札幌 継ぐ者が唄った
魂の片割れ 奏でた
遺された片割れは生きて あなたとつくった音楽の続きをやると決めた
継ぐ者は あなたの全ての物語を引き受ける覚悟で 名乗り出た
そうして 新しい音楽が始まった
圧倒的な音像は変わらずに 軽やかさをまとうようになり
日本語の歌詞で より幅広い人に 伝わる音楽になった
なぜ生きるか、なぜ生まれてきたかを考えながら 縛られることもなく
インスタグラムの配信で 二人とも毎週いつもよく笑っている
あなたはそんな二人の音楽や在り方をどのように見ているのだろうか
継ぐ者の澄んだハイトーンの歌声が 札幌のライブハウスに広がった
片割れは何度も嬉しそうに笑って ベースを弾き鍵盤を弾いた
片割れも 継ぐ者も とても真摯に自分たちの音楽について話した
最後に片割れが宙(そら)を見た あなたのことを探してるみたいだった
あるいはあなたの声が聞こえていたのかも
こんなふうにして
あなたの魂は永遠に歌い継がれる
あなたの歌は永遠に続いていく
そんな音楽 そんなロックスター 今までもこれからも存在し得ない
片割れによる強い意志と愛と
私たちによる終わらないカーテンコール

参考文献 
BOOM BOOM SATELLITES 25周年記念本
音楽と人


三つ目(参考作品)は、つい数日前、「月織堂」という札幌のアート系喫茶店に個展を拝見しに立ち寄った際、のんだ一杯のカフェインレスコーヒーから受けた感慨を胸に書いた即興詩です。

本当にうまい珈琲
朝伊ミチル
 
久しぶりに
本当にうまい珈琲をのんだ
目をつむって んーーーっと かみしめた
人にひどいことを言われてされて
傷ついて何日もろくに眠れなくて
毎日朝から晩まで何かをのんでた
うまいもまずいもわからなかった
だけど この店に久しぶりに来て
落ち着いて座って 珈琲をのんだら
何かこう ふっ、と受け入れられる気がしたんだ
今の状況も 気持ちも
少し立ち直れそうな この感覚も
だから今 珈琲をかみしめる
ほろ苦く甘い まるで恋のようだね
本当にうまい珈琲が
私の心に響いて
魂をすこしだけ 救ってくれた
 
 
#月織堂
近衛さんが淹れた一杯の珈琲へ捧ぐ。


以上です。
他にもいろいろな作品を作り、来る北海道大会、仮想地方大会に備えています。
イメージとしては、仮想地方大会は「恋愛詩」を中心にしたいなと思っていっぱい作品を書いて試行錯誤しています。
北海道大会は「ツヅル」や「フラジャイル」に掲載された作品をメインに、あと大会までにもし何か受賞する機会があればそれも披露していきたいと考えています。
また、今作っている作品の中から9月開催の「アートフェスティバル閃」にも出していこうと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

いつの日か小説や文章で食べていくことを夢見て毎日頑張っています。いただいたサポートを執筆に活かします。