京都 徘徊つれづれ 3日目 その2

■予想外に面白かった桂離宮

桂離宮ってどういうところ? と問われも、ほとんど説明できないぐらい知らない。せいぜい、ブルーノ・タウトが褒めたらしい、ってことぐらいかな、記憶にあるのは。そんな生半可な態度で引率に付いていったんだけど、庭園内には茶室も含めて建物がたくさんあって、もちろん中に入ることはできないけれど近づいて見たり、窓からの景色を味わったりと、なかなか多様性に富んだ体験ができるツアーだった。午前中に見た仙洞御所がたんに池のあるお庭なら、こっちは池を中心に要塞があちこちに配置されていて、その攻略も頭を使うレジャーランドみたいな感じかな。ま、大げさだけど。
茶室がいくつもあるんだけど、客が徒歩で向かうものもあれば、なんと船で行くところもいくつかある(もちろん見学では船に乗らないよ)。だから池には客のための船着き場が数ヵ所あり、そこから茶室へのアプローチが確保されていたりする。とはいえ、船着き場からの階段の踏み込みが傾きすぎで、あれじゃ昇れないだろ、なところもあったりしたけどね。はたまた客を迎える茶室のつくりに乙な仕掛けがあったり。庭園全体の構成もなかなか複雑だったりして、それも興味深い。
最後は入ってきたところにもどって。で、解説者がいうには、客を送り出す道に遠近法の効果が使われていて、実際よりも長く見えるようになっているんだとか。いろんな企みが埋め込まれているので、なーるほど、なかなか考えられとるな。こちらも約1時間のコースで、現地集合現地解散。無教養なレベルですが堪能しました。
あ、あとね、周回する小径がなかなかスリリングなんですよ、これが。池をまたぐ太鼓橋が狭くて急で、ひょっとしたらつまずいて落ちるんじゃないかとヒヤッとしたり。足元の小石がズルッといつてよろけそうになったり。ふだんから平衡感覚に自信がないので、おっかなびっくりのところも結構あったぞ。

■京都人は観光地に行かないはホントだった

参観が終わったのが2時で、まだ中食は採っていない。友人に連絡するにはまだ早いので、どっかで飯を…。とたらたら歩いていたら、ラーメン来来亭というのがロードサイドにあった。心情的にはご飯と野菜と、なのが食べたかったんだけど、まあいいかと店内へ。頼んだのは冷めんで、韓国風の冷たく透明なスープに茶色の麵が泳いでるのがやってくると思いきや、これがなんと。紅ショウガはなく、練り辛子でなく粉末の唐辛子。スープはゴマだれ。イメージとだいぶ違う冷めんだった。おいしかったけどね。

で、桂駅に向かいつつ友人に電話すると、いろいろあって4時ぐらいになるかもなので、駅西口のサイゼにいてくれという。はいはい、分かりました。でドリンクバーとチョコレートケーキで疲労回復を試みていたら、話よりすこし早めの3時40分にやってきた。再会するのは10年ぶりぐらいか、もっとか。メールでのやりとりはあったけどね。
桂離宮の感想を少し話して、でも反応がイマイチ薄い。なので、
「行ったこと…ないんだろう?」と突っ込んだら
「ない」と、こともなげにいう。ああ、やっぱりな。京都人にとって有名な寺社仏閣、観光地は日常の生活とは無縁なようだ。そういうことを聞いたか読んだことがある。いくら近くにあっても、わざわざ金を払ってまで行くような場所じゃないんだろう。
ビール飲む? というから、逆流性食道炎であまり飲めないと応えると、「え? 小生も同じ、日本酒も飲んでせいぜいコップ半分」と返されて、互いに大笑い。というわけでソフトドリンクで1時間あまり。あれやこれや話して別れを告げたのであった。じゃん。

■四条から三条あたりをふらふら、うろうろ徘徊

桂から電車に乗って、5時過ぎに四条烏丸に戻った。まずは大丸百貨店の美術コーナーで「村山耕二ガラス作品展 ガラスと地球の関係について」というのを覗いて。それから大丸の裏に抜けてうろうろ。京都は街中を歩いていると、あちこちで地蔵なのかな、の社に出くわすんだけど。大丸のだったかな、のビルの壁面が凹んでて、そこにも社が祀られていて、おー。ビルが建つ前からここにいらしたのかな。それにしても京都らしい。いつのまにか錦市場に迷い込んだんだけど、とくに食べ歩きも興味がないので、さっさと抜けて小路をうろうろしていると、地方発送承りますと書いている酒屋があったので、入ってみた。

店主に、関東にはあまり出まわってないお酒ありますかね、といったら、うーん、と首をかしげられてしまった。そういうのは、いまどきないのだろう。「知人は糀の香りのする酒が好き」なんていうヒントを話して、なんとか選び出してもらったのが、京都のあるお酒と、店主が晩酌の相手にしているという滋賀の酒。いずれも四合瓶を2本セットで知人宛てに送ってもらうことにした。ただし、あらら、と思ったのが送料で、なんと酒1本分ぐらいかかるんだと。そんなにするんだ。へー。
その後は、いい感じのお店で夕食を食べたいな、とうろうろ。新京極の外れあたりは、美術用品を扱っている店が集まっているのね、ふーん。なんてくねくねしてたら、いつのまにか三条通りにでて、目の前にレンガ建築やレトロな建築が並んでる。でも、食事どころはムダにオシャレで高そうな店ばかりで、こちとら1人だしなかなかちょうどいいのがない。そんなこんなで、とうとう今夜の宿泊地である烏丸御池駅近くまで来てしまった。
とくに観光地っぽさは求めていないのだけれど、ほどほどの値段で、そこそこ美味しそうな飯屋というのはなかなかないもんだ。で、たどり着いたのが駅近くにあった、店名のデザインだけはなかなか渋い「王将」である。

そういえば餃子の「王将」って、発祥は京都だったよな。そして、そういえば10年以前前に京都に来たときも、「王将」で夕食を食べたっけ。などと個人的にも懐かしささえ覚える店である。って、いつまでたっても貧乏旅行で、チェーン店の味で満足できる体質だってことか。さて、注文したのは極めてベーシックに安心の味、炒飯と餃子のセットで、なんの変哲もないテキトーさ。いいんだよ、腹が落ち着けばなんだって。
料理がとどくまで待っているあいだ見ていると、すぐ近くのカウンターにひっきりなしに客がやってくる。持ち帰りの客、ウーバーかどうか知らんけど、な配達員…。多くは地元民なのか。京都の王将は人気なのだった。

■全自動洗濯乾燥機と電子レンジのあるお部屋へ

セブンイレブンでおやつのチョコレートを買って、宿にチェックインしたのは7時頃。預けていた荷物を受け取ると、「使いますか?」と洗剤の小袋を見せてくれたので、それも受け取って。エレベーターで7階だったか8階だったか。ボタンを押す時カードキーも同時にかざすシステムで、そうすると自分の階にしかカゴは停止しないんだとか。つまり、探検だ! とかいって他の階をうろうろできないのね。って、いいオッサンがそんなことしないけど。いまどきのホテルはセキュリティも厳しいのだね。
というわけで部屋のドアを開けると左手すぐにバカでかいドラム式の全自動洗濯乾燥機があるのが目に入った。そして、洗濯機の上の棚には電子レンジもある。なんかホテルじゃないみたいだけど、とりあえず、まずは風呂にお湯を張ろう。そして、脱いだ衣類、そして、この2日分の汚れ物もまとめて洗濯機に放り込んでスタートボタンを押した。この手の洗濯機、使うのは初めてだったけど、難しい設定とか要らないのね。タイマーが2時間30分ぐらいになったのには驚いたけど。そんなかかるんだ、と。
ところで、小さな声で衣類の話をすると、実はこの2日間で長袖Tシャツとパンツをこっそり捨てているのです。昨日の、あの常寂光寺で脱いだ長袖のTシャツ、それから、パンツも。もともと少し破れてたりするものを着てきたりしていて、それはもう使い捨てにするつもりの計画的行動。こういうことは、昔からよくやってる。なんだけど、昨今の「家庭ゴミは捨てるな」とかエコがどうとかで街や駅のゴミ箱は減ったりなくなったりしている。ほんとやっかい。でも、こういうのはモラル違反とは違うだろう。昔とはモラルの基準が違うといわれるかも知れないけれど、モラルの変化にかこつけて経費と手間を省こうというこすからい魂胆にしか見えないのだよね。観光地も、この手の観光客もいるんだと理解し、受け入れていくべきだ、と思っているぐらいだ。そもそも、重い荷物を背負い、汚れ物まで背負い込み、さらにお土産買おうなんて思わんよ。
もちろん捨てる前には「これまで長い間つきあってくれてありがとう。ごめんなさい、さようなら」と別れを告げているのも書き添えておこう。
というように、長旅における衣服の問題は長年の課題であり、これに対して部屋に洗濯乾燥機を置く、というのは画期的だよね。だって、着の身着のままで旅に出ても、その日の汚れ物をみんな洗って乾かせば、翌日はサッパリとして出かけられるのだから。これで肩の荷は軽いし、いつも洗い立てが着られるなんて最高だろ。部屋に洗濯乾燥機は、これからのスタンダードじゃないのかな。
で、10時ぐらいには乾燥も終わって、ふっかふか。ジーンズは洗わなかったんだけど、一緒に洗っちゃえばよかったな、とあとで思ったりした。
で、宿泊料だけど、ここに2連泊の予定で1万3000円余り。ということは一日あたり6500円余である。しかも、これ、朝食付きでなのだ。朝食といっても昨日みたいなコンビニ弁当ではなくてのこの値段。どうです奥さん。お買い得ではありませんか?
しかし本日は、庭園周回、御所だらだら、駅間ふらふら、友人と会ったり街を徘徊したりで、気づけばなんと26000歩あまり。うわ。歩き過ぎだろ。さて、風呂も湯が満ちてきたので、疲れを癒しましょうかね。しっかし、テレビは相変わらずつまらんなあ。
※歯ブラシセットはなかったように思う。よく覚えてない。


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