京都 徘徊つれづれ 3日目 その1

■ひとり部屋で食べる弁当ほど哀しいものはない

0時前に寝て、夜中に覚醒…。というのはいつものことなんだけど、ほとんど音のしない静かな環境でも、目が覚めちゃうんだな。くっそ。でまあ、仙洞御所に9時半集合というのが頭にあるせいか、6時頃目覚めてしまい、もう眠れない。気が小さいのも困りものである。なので7時頃部屋を出て1階ロビーまで朝飯を取りに行くと、コンビニの300円弁当みたいのが2つ置いてあった。すでにもっていった人もいるとしても、宿泊客の少なさがひしひしと感じられる。ホテル業界、まだまだ大変なのね。
部屋での弁当は、やはり侘しい。だってほんとに300円だろこれ、な感じなんだもの。それを黙々と部屋でひとりで食うんだぜ。呆気なく食べ終わり、簡易ドリップ式のコーヒーとかお茶とか、弁当についてたゼリーとか口にしても、宿泊客の気分にはなれんぜよ。
なんとなく、つまらないテレビをつけ、部屋の片隅にあった足揉み機をコンセントにつないで動かしてみたけど、すっきりせん。どころか、足のツッコミ具合が悪いと装置のイボイボ出っ張りが踝を直撃して離さず痛いのなんの。悲鳴を上げそうになったぞ。なのでさっさと足揉みはやめたでござる。

まずは京都仙洞御所からはじまった

さて、チェックアウトは9時頃で、てらてら歩くと角にどでかいレンガ造りの教会がある。昨夜も気づいてはいたけど暗かったからね。朝の陽射しで見るとなかなかの偉容で素晴らしい。日本聖公会聖アグネス教会というらしい。近くの平安女学院の敷地なのか。なかも見たかったな。


教会は烏丸通に面していて、向かいはもう京都御所。御所の出入りは自由で大きな公園の雰囲気。散歩の人もランニングの人もいたりして、開放的。とはいえ、くだいた砂利敷きの上は足が絡め取られてとても歩きにくい。ざくざく。めあての仙洞御所は壁に囲まれた中らしい。けど、何の標識もないのでどこが入口なのか出口なのかさっぱり分からない。逆方向に行って戻るのも難儀だし、うーむ、ここは勘で北に行ってみるか。ざくっざくっ。足が重いぜ。たまに門があっても、観覧入口がどこか、その案内サインはまったくない。

これはとても不親切。こっちでいいのかな? 同じようにキョロキョロしながら歩いている女性が、近くにいた。話しかけはしなかったけど、みんな不安になるのは同じだよな。とかいいつつ塀の北端にたどり着き、右に曲がったら、らしきものがあった。おお。ほっとしたよ。
受付の女性と、皇宮警察官みたいなのとか、何人かいて、参観者をなかに促している。それにしたがって中に入る手前で、ちょっと言ってやった。
「こっちが入口、と分かるような看板ぐらいあってもいいんじゃないですか」
そしたら女性が「紙に書いてあると思いますけど」という。
ちょっと説明すると、参観を許可するというメールにはリンク先のURLがあって、そのページにいくと氏名や許可番号、簡単な注意が書かれたページにたどりつく。当日はそのページをプリントしてもってこい、とも書いてある。あとから思うと、その紙には仙洞御所の平面図があり、入口は北側と書いてあったようには思う。しかし、入口を探してうろうろしていたときは、その許可ページのプリントはリュックの中に入ったままだった。
いろいろ言い訳してるけど、その参観許可書を見なければ分からない、というのはどうなんだ? と思うわけですよ。そもそもすべての参観者がWebで申し込むわけではないし、プリンターがない人は許可番号を控えてこい、とも書いていた。みんながみんな、入口がどこにあるかちゃんと頭に入っているとも限らないのだ。もうちょいとウェルカムな姿勢で、塀のどこかに、「参観はこちら」と矢印を書いた看板があってもいいじゃないか。
というようなことを静かにいうと、受付にいた女性は「そういうことは宮内庁にいってもらえますか」だとさ。はあ? あんたら宮内庁に雇われたスタッフだろ。宮内庁にいえって、どういうルートで誰にいうんだよ。これこれ、こういう意見がありました、って、あんたが宮内庁の人にはいわないの?
なんていう様子を近くで見ていた皇宮警察の男が、無線でぼそぼそどこかに連絡し始めたのに気づいた。もしかして「参観者の中に反抗的人物まじっている」とかなんとか上司に通報でもしてるのかね。こんなことで中に入るのを阻止されたらたまらんので、ツッコミはたいがいにしておいたが。要は連中の態度が「見せてやる」という高飛車に見えるのよね。役人、それも宮内庁の横柄さ、気のまわらなさ加減がよーく分かったぞ。

■京都仙洞御所は、変哲のないただの庭園だ

仙洞御所というのは京都御所の中にあって、退位した天皇の住まいなんだそーな。で、1回の参観者は2〜30人ぐらいかな。まずは控室のようなところにみなさんたむろしてると、やがて時間になって、案内の、腹の出た中年に入りかけたような男性解説人がやってきた。彼の解説で庭園をぐるりするらしい。そう。仙洞御所の参観といっても建物内部に入ることはなく、庭園見て歩きだけ、なのだよ。マイクとスピーカーで、かねて暗記したとおりに淡々と言葉を発する解説人。たまにたいして笑えないジョークも交えるけれど、これもセリフ通りなんだろう。参観者に質問する隙を与えず、どんどん次の場所へと進んでいく。1時間という枠でひととおり説明するというのが、彼のお仕事なんだろうな。
もちろん、たまには成る程なこともいう。けれど、今ではそのほとんどは忘れている。その程度の謂われ、因縁、古事なんだろう。こっちの教養も足りないんだろうけどね。そもそも庭園自体も東京にある大名庭園とそれ程変わらず、というか、池自体はかなり小さくて。おお、凄い、というような感じでもない。わざわざ申し込んで、許可をいただていて見学しました、が残るだけ、のような参観だった。

■ついでに見た京都御所が、興味深かった

仙洞御所からでると、京都御所はすぐ斜め前。とはいっても入り口まで100mぐらいあったと思うけど。あいかわらずの砂利道で足がとられてズリズリ重い。こちらは申し込みはとくに不要で、簡単な持ち物検査だけですんなり入れる。あとは案内もなく自由にウロウロなんだけど、こちらは建物主体で、広くて、豪華なのがとても興味深かった。

とはいえ建物自体はそんなに古くなさそうで、せいぜい江戸末期ぐらい? よく知らんけど。なので巨大な映画セットのなかにいるみたいな感じだ。とはいっても、いろいろ曰く因縁事故事件もあっただろうから、そうした解説付きで見たら結構面白いんではないのかな。逸話もたくさんありそうだし。なんて思いながらだらだら。思った以上に広いので、ゆったりしつつも、なかなか歩数は稼がされた感じだな。

■交通費を浮かすぞ、テクテク烏丸方面へ

すでに重い足を引きずりながら京都御所をあとに烏丸通りへでると、近くにKBS京都があるではないか。いやじつは、KBS京都の番組でよく聞いているのがあるのですよ。といっても電波ではなくPodcastでね。ひとつは「大友良英のJAMJAMラジオ」で、もうひとつは「角田龍平の蛤御門のヘン」である。ってことは、このあたりが蛤御門なのか。などと考えながら通りを南へ向かってテクテク。まず引っかかったのが丸太町近くにあった洋館。これ、昨夜も気づいていたんだけど、なんなんだ?

Webで調べると大丸ヴィラというらしいけど、曰く付きなのか一般公開はしていない様子。残念。さらに南下すると右手に京都国際マンガミュージアムがあった。『谷口ジロー展』は6月2日かららしい。でも今回は寄るつもりはないのでサヨウナラ。で、たどり着いたのが地下鉄烏丸御池駅。本日の宿はこの近くなので、荷物を先に預けさせてもらおうという魂胆。宿は通りを少し入ったところにあって、目立つ感じではなかったけれど、チェックインもどきをしてリュックを預け、これで肩の荷が軽くなりましたよ、旦那。手ぶらはいいね。
このあたりから京都市の中心地近くに突入したのかな。東京の三菱一号館と同様、往時の姿を復元したらしい みずほ銀行のレンガ造りは美しい。その先にあった、DEAN & DELUCA.の入っているビルもなかなかいい。

てな具合にレトロ建築を眺めつつ、地下鉄「四条」駅に到着。ここで阪急京都本線に乗り換え、桂を目指す予定である。のだけれど、なんで? な気がするのが駅名だ。地下鉄烏丸線の駅名が「四条」(というのもヘンだよな。なんで「烏丸」駅じゃないんだ?)で、阪急京都本線は「烏丸」。駅は直結していて乗り換えはすぐなのに駅名が違う。こんなのどっちも「烏丸四条」か「四条烏丸」で統合すればいいだろうに。そうすりゃ誰だって分かるし間違えないだろう。

名前を統合すりゃあいいだろうに

そういえば「条」の付く駅も、なんかしっくりこない。昨日嵐山から乗って、降りた駅が「二条」だった。たしかに二条通りにあるから間違いではない。でも、この「二条」駅と「四条」駅は、東西にして1.3キロぐらい離れているんだぜ。京阪電鉄の「清水五条」駅となるともっと東にある。
そもそも京都における「条」は東西に通っている通りの名で、東でも西でも二条は二条のはず。なら、南北の通り名を入れ、烏丸二条とか、河原町二条とか表示すれば合理的だと思うんだけど、そうはなっていない。たとえば現在の「烏丸御池」駅は二条通りにあるのだから、地下鉄烏丸線の駅名「四条」に合わせれば「二条」駅でもいいはず。あるいは「烏丸二条」でもいい。なのに、そうはなっていない。なんか不思議。
二条、四条、五条、それぞれの通りのもっとも栄えている場所を「二条」「四条」「五条」としているのかも知れないけれど、そんなことは部外者は知らんのだしな。

■阪急京都線で、桂駅を目指す

とかなんとかぶつくさいいながら阪急京都本線に乗って10分足らずで桂駅に到着した。雰囲気は郊外の住宅地だね。とくに京都の香りはもうない。ここから線路沿いにしばらく歩き、左手に踏み切りを見ながら右に曲がり、てくてくいくと大きな通りに出た。もう、埼玉あたりの風景と変わりがない。通りを渡ってくねくねいくと、うって変わって緑につつまれた一角に到達した。桂離宮の参観口だ。受付は、門の前の地べたに机が置かれているだけのチープさで、参観許可書を見せ、検温したんだっけか。忘れたけ。その後、参観許可書を別の受付の窓口に見せると、奪い取られるような感じで園内へ。ほんと、宮内庁のスタッフは横柄な連中ばかりだよなあ。


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