京都 徘徊つれづれ 4日目 その2

■レンガ建築だらけの同志社大学今出川キャンパスがお見事

歩いたのは表通りではなく、少し入った道。だからクルマも人通りも少ない。けれど日常生活の臭いが漂ってくるから面白い。人も建物も着飾っていなくて、普段着で、しかも所々ほつれているようなところも感じられたりして、親しみも湧く。人に見せる演出が施された観光地の京都とは違って、街の顔つきがやさしいのだ。東京も京都も、人も街も、芯はどこも同じだな、という気分になってくる。てなことを思いながら、路上のつまらないものをスマホで撮ったり、なんとなく眺めたり。徘徊はよたよたと。
旧京都府庁の議場を案内してくれたボランティアのオバチャンのいうとおり、自転車ですいすい移動する人が結構おおい。考えてみると京都の地下鉄初乗りは250円と高く、便利といわれる市バスの均一運賃区間だって大人230円だ。東京はそれぞれ170円、210円だから差は歴然。市民にとって気軽に利用できる交通機関とは思えない。自転車は、京都市民の知恵であり、抵抗でもあるんだろうな。
だからというわけではないけれど、こっちもだいぶ歩いて、やっと今出川通りにでた。ここを右に曲がれば同志社か。と信号待ちしていたら自転車がヒュンと背後を走り抜けていった気配がした。呼応するように「おうっ!」と右横で声がしたので振り向くと、爺さんがびっくりした表情でこっちを見て「危ねえよぉ」みたいなことをいう。自転車は爺さんの目の前ギリギリをかなりの速度で通過したようだ。爺さんはまだ何かいいたそうな顔をしているので、反応してあげるのが礼儀かな。で、
「いまの自転車?」というと、
「んー。あぶねえよなあ。こないだも、ぶつけられてよ」という。
「ええっ? 大丈夫だった?」
「転んじゃったよぉ」
「相手は?」
「逃げちゃったよぉ」
「ありゃ…。気をつけてね」
「んあぁ」
なんて立ち話をしているうちに信号は青に変わって、とくに爺さんに別れを告げるでもなく通りを渡り、そのまま右に行けば地下鉄烏丸線の今出川駅の出入口。その背後は緑とレンガ色で埋めつくされている。なんと、同志社は駅を降りたら0分なのか。
一応、門横の守衛に見学してもいいか尋ねると、建物の中には入らないように、というので、はいはいとうなずきながら中へずんずん。しかしまあなんと、敷地に立つ半分以上の建物が古風な煉瓦建築で、最近の建物も煉瓦風の外観になっているので、四方八方煉瓦に囲まれているような気分だ。こんな環境で過ごせるなんて、まったくうらやましい限り。
キャンパスには学生も戻ってきていて、昼時のせいか思い思いにベンチに座り、あるいは芝生で弁当を広げたり歓談したりしている。絵に描いたような春の大学キャンパスじゃねえか。ほのぼのだなあ。青春だなあ。はははは。女子高生を何人か引き連れたキャンパス見学グループや、私のような、なかば不審人物もまじっていたりするけれど、誰も変な目で見てこない。すこぶる楽ちんな空間である。

■地下鉄に乗って四条河原町方面へ

同志社の後は、地下鉄に乗って今出川から四条へ。はいいんだが、朝飯を食い過ぎたせいか、腹が減らない。どころか胸焼けもあるし、少し腹具合が…。それほど非常事態という訳でもないのだけれど心配なので、まずは大丸に入り、トイレを拝借。とりあえず落ち着いたので地下の食品売場をざっと見て、京都名物みたいなのをテキトーにみつくろう。氷菓という名の水ようかんを家に、漬け物を姉のところに配送依頼。昨日の、知人へのお酒とあわせ、大人の配慮はこれにて終了だ。で、昨日同様、大丸を裏から出て再び錦小路に突入したけど、とくにめあてもない。ただ歩いて抜けるだけで河原町方面に出た。このあたりから四条〜三条のレトロ建築探偵のはじまりはじまり。
まずは京都河原町に立つと、鴨川の向こうにレストラン菊水が見える。川のこちら側、の右手には東華菜館本店がそそり立っている。なんか上海みたいな雰囲気だな。で、その裏道に入ると、洒落た雰囲気のフランソア喫茶室があった。せっかくなので、入ってみることにしよう。内部はレトロというか、オシャレにシックにしつらえました、な感じで入るとすぐ左手にあるキャッシャーが受付ボックスみたいで古めかしくかわいらしい。店員もむかしのレストランの店員みたいな黒地に白襟でなかなか魅力的だ。コーヒー1杯700円は高いけどね。とくにすることもなくボーッとしてたら睡魔がやってきて、少しうとうと。50分ぐらい居たかな。




その後も、近くのいくつかのカフェなんかを探したり眺めたりで、いつのまにか三条通りの東外れに出たのだけれど、またもやトイレに行きたくなって、立誠ヒューリックガーデンへ。ここは元小学校を改築してオシャレな空間に変身したものらしく、ホテルも併設しているらしい。子供連れの奥様方や恋人たちがが集うような雰囲気で、オッサンは腰が落ち着かない。トイレはちゃんと腰を下ろしてしたけどね。


■三条通りは、まさにレトロ建築ストリート

さて、三条通りである。1928ビルはデコっぽいシンプルなスタイルのファサードで、2階に上がる階段にはチラシやポスターがごちゃごちゃと貼られている。2階にはギャラリーがあり、個展が開かれていた。

旧邊徳時計店は、いかにもごつい赤レンガで、無骨そのものだ。
現在テナントとして活躍中なのが、SACRA。階段をそろそろと3階だったか4階ぐらいまで上がっていったけど、ここもまたオッサン向けの商品など皆無で、どーも落ち着きがよくないざます。
TSUGUMI三条は辰野金吾の事務所が手がけたビルらしく、その一部が残りホテルになっている様子。じゃ、一日延長は、ここに泊まってみるか?
その近くの京都文化博物館は元の日本銀行の美しいレンガ造りで、これも辰野金吾が関わっているらしい。ちょっと三菱一号館ビルに似た外観で格調が高い。入るとカウンターのような仕切りがあり、仕切りの向こうの、かつて銀行員が忙しく働いていただろうエリアは、いまはがらんどうの広いホールになっている。仕切りの上半分は木の格子で、むかしの映画によく登場するような銀行のつくり。



建物の奥は新館の博物館につながっていて、このときは「鈴木敏夫とジブリ展」を開催中だったけど興味がないのでスルーだよ。ただし、関連企画のフィルムシアター上映『ぼんち』があって、これは見たいな。上映は6時30分からか…。


博物館のお隣のビルは、これもスタイリッシュなレンガ建築の中央郵便局で、現役らしいけど残されているのは外観だけらしい。ちょっと残念。
郵便局を出て、内部がオッシャレーな空間に改装されている新風館を抜け、ちょっと不思議な外観の文椿ビルをながめつつ4時頃ホテルに帰還した。手には、途中のカルディで買った れもんイカ天と、ファミマで買った夕食用のお弁当を下げて。で、スマホの万歩計を見たら、あまり歩かないつもりが、すでに18200歩になってるよ…。

れもんイカ天はおいしかった。でも、お腹の具合はよくならず、かねて持参の正露丸を2粒のむ。これで収まるかな? 京都文化博物館フィルムシアターの『ぼんち』行けるかな、と思ったんだけど、やっぱり自信がないからパスすることにした。ああ悔しい。
することもないので風呂にお湯を張り、疲れを癒して、貧しくコンビニ弁当を食らった。まだ6時50分。あいかわらずテレビはつまらなくて、見たいチャンネルはない。夜はまだまだ長い。けど、今夜は洗濯はしない。しなくてもあと2日は十分にもつから。

■そして決断すべきは、一日延ばすか、明日帰るか、だ。
な、夜、埼玉の姉から、かねて約束だったイチゴ摘みを23日→24日にしてくれとメールが入ってきた。お。これなら1日延ばして22日に帰っても休息日が1日とれるぞ。これは体調不安にちょっとだけ効きそう。さらにもうひとつ。翌21日夕方の東京の天気予報は雨で、着いたら降られそうというのがあった。今回の旅では、傘はもってきていない。これは難儀だ。そんなんビニール傘を買えばいいじゃねえか、ではあるけれど。信条としてはムダなものは買いたくないので、1人ずらせば難を逃れることができる。
てな感じで、決断の前にホテルでも検索してみるかな気分になってきた。
六波羅蜜寺に行くならその近くがいいから三条、四条、河原町あたりかな。例の、三条通りにあった辰野金吾が関わったらしいTSUGUMI三条も見てみると、なかなか豪華。だけど、今回の旅の予算なら十分に2日泊まれるようなお値段だ。けど最後の夜だし、ここは一丁張り込んで分不相応なホテルに泊まるのも経験だろ。かつて東急ホテルに泊まったときは一泊一万円は当たり前に払ったぞ。それを考えれば…。予算と憧れと貧乏性が戦い始めている。
こんどは6000円クラスの宿を見ていくけれど、朝食付きはなかなかない。じゃあ、いまホテルにもう一泊するか? そうすりゃあ明日も手ぶらでフラつけるじゃないか。いろいろ錯綜する。そうして見つけたホテルの部屋。「予約する」のボタンを押せば、もう一泊。やめれば明日帰る。押すともう一泊、押さなければ…。あ、つい指が。押しちゃったよ。

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