三段階ぺしょ


出勤途中の駅のホームで、斜め前にいた小柄でボーイッシュな見た目の女の子がずっと下を見ていた。スラックスタイプの制服を着ている。
ラッシュ時の乗車の妙で、彼女は私の目の前で背を向ける体勢で落ち着き、私は後ろから、彼女の目線の先に携帯電話の画面がチカチカと変わっていくのを見た。
人様の携帯を、不可抗力だと思ってのぞき見する朝、しっかりと最低である。

恐ろしい速さでフリック入力し、SNSに投稿している。

「この時間本数全然なくて最悪」
「ダイヤ考えてるやつ無能なんだな」
「てか前にいるデブ押してきてマジうざい」
「蹴り飛ばすぞ」
「あと3分でSHR始まるんだが」
「まあ成績8割良いの取ってるからいいや」

どんどんネットの海に放流される言葉たちに、
「これが現実か……」
と、視線を彼女の後頭部に移しながら思った。
それほど背の高くない私の、目線にも届かないほど小柄な子が、この暖かく過ごしやすくなってきた朝にすべてが敵かのように吠えまくっている。

彼女の前にいた男性は、私よりも20㎝ほど背が高かった。
しっかりと端に寄り、ドア近くの手すりを掴んでいた。



これが現実なのだ。本当に。
フィクションの導入だったならまだ、彼女と私の間に一枚、しゃらしゃらとした膜があったのになぁ。

リアルだと完全に
お、おま、やあめとけ~~!!!おもんないぞそのイキり~~!!!
恥ずかしくなるぞあとあと~~~!!!恥ずかしいと思う未来を願ってやまないゾ~~~~!!!!
と言いたくなるのだが、このご時世、もしかしたら皆通る道なのかもしれない。

そのまま大人になるやつもたくさんいるしな……



いつどこでどんなふうに見られているかわからない。
「晒される」って、こんなに聞き馴染みある言葉だったっけ。
身の振り方を気をつけなければと思いつつ、こまけェとこまでいちいち気にしてなんかいられないんだけれど、
他人って、もっとどうでもいい存在だったはずなのにと思ってしまう。



以前居酒屋で、大勢で飲み会をしていたサラリーマンが言っていたのを聞いた事がある。

「こういうところの店員はさ、これでもかと丁寧にやるべきだろ。いつ俺らがSNSに書くかわかんないんだぜ?危機感がねーんだよ。動画上げたらすぐ炎上、バイトだろうが終わりだろ。」

酒が入っていたんだとしても、随分な"お客様思考"だこって。

団体予約で会社名が、部署が、名前が、電話番号が、
データ管理のポイントカードなんてあろうものなら住所もあるかもしれない。

店員が、"どうせ終わりなら"と、捨て身の反撃にでたとしたら?
個人の倫理観に救われている場面って、思ってるよりも多い。
撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだって、私は今だからこそめちゃくちゃ身に染みてるけどな。



SNSや、ドラレコなんかもそう。
自分の身を守るためというより、
攻撃の手段として扱われているほうが多いことが、
それらを目の当たりにするのが、
もう、あーし、疲れたンゴ。


まー今までも見えなかっただけでこういうのは確実にあっただろうし、
こんなところに書いている私も同じ穴のなんちゃらって感じか!ハッハー‼



色んな事に対してぺしょぺしょになるくらいなら脳を動かそう
と思ってナンプレを始めたら、中級の問題で3日かかった。

ぺしょぺしょになった。

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